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  • 執筆者の写真笑下村塾

「日本のテレビは視聴者をバカにしている」。津田大介が考える、ネット時代のテレビの可能性

対談1回目では国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」をめぐる騒動の背景、2回目では「Twitterの功罪」について津田大介さんに話をお聞きしました。3回目は、「テレビの限界と未来」について笑下村塾のたかまつなながインタビューしました。



テレビは「数字が取れない」という思考停止に陥っている




ーー津田さんは、テレビに感じる限界や、未来についてはどうお考えですか?


テレビは、日本の場合はまだまだ影響力が強いメディアですが、今の大学生は観なくなっています。


テレビというのは、社会問題なども単純化して分かりやすく伝えるメディア。ところが、たいていの社会問題というのは答えが出ないような複雑なもの。その複雑なものを、複雑なままで分かりやすく伝えようと真剣にやられているのが池上彰さんだと思います。これは、僕もやりたいことでもあります。


また、今本当に面白いのはドキュメンタリー。ひとつのテーマをじっくり掘り下げて文脈を伝えることができているのって、『NHK クローズアップ現代+』とか『NHKスペシャル』くらい。


ーードキュメンタリーの枠自体、民放は少ないですからね。数字も取れませんし。


その“数字が取れない”と言われているドキュメンタリーが、Netflixでガンガンつくられて、人気コンテンツとなっている。僕は、「数字が取れないから」という思考停止に陥っているんじゃないかと思うんですよね。


ーー数字を取りに行けばいいというのは絶対違います。一方で、NetflixやYouTubeのドキュメンタリーで数字が取れている動画って過激だったりして、それはそれで怖いなと思いますね。


YouTubeなんかはそういう傾向はありますよね。ユーチューバーやインフルエンサーになるために、フォロワーにどう思われるのか、どうすればフォロワーが喜ぶのかということに支配されて、本当に自分が伝えたいことからどんどんズレていっちゃうというようなことが。


最近、まさにそのこと自体をテーマにした『アメリカン・ミーム』というドキュメンタリーがNetflixでやっていて、すごく面白かったんです。こういうものは日本では全然見かけないので、つくってほしいですね。




視聴者はどんどん賢くなっている




僕は、日本のテレビの一番の問題点は、視聴者を馬鹿にしすぎていることだと思います。


ーー本当にそう思います。


「これぐらいで満足するんでしょ」などと思ってつくっている節があるけれど、視聴者は賢いですよ。ネットでどんどん賢くなっているんです。Netflixと比較して「今のテレビって本当に面白いと思いますか?」、そこを考えないといけない。テレビ局のなかでメリハリをつけていかなければ、そりゃ飽きられますよ。


でもやっぱり、テレビにしかできないことはまだたくさんあるし、もっと冒険してもらいたい。あとはネット配信などではテレビでできないこともやっていけばいいと思います。


ところが、この「テレビでできないこと」について、セクハラ、いじめ、パワハラまがいのことを、「今はコードがうるさいからできなくなって」とか言いながらネット番組にしたりする最悪な状況にもなっている。そんなことは別にみんな求めていないんですよ。きちんと作り手が本当に面白いと思うものをつくってほしいと言いたいんです。


ーーAbema TVを見ると、興味深いんですよね。“テレビではできないこと”と称して、「エロ」をやっているケースもあれば、めちゃくちゃ「社会派」なことをやっているケースもあって。


そういうものを全部否定はしないですけど、結局はPVを伸ばそうということしか考えていないと感じるんです。そうではなくて、もっと自由なフォーマットでやりたいことができるのがネットのいいところなんだから、そこに立ち返ってもらいたいと感じます。


ーー私が出張授業に行くと、今の若い子はテレビを観ていないことを実感します。勉強をするときに、はじめにYouTubeを検索するのが習慣になりつつあるようですが、「パワハラ」「セクハラ」などと検索すると「これ、観てもいいのかな…」というものばかり検索上位に表示される状況も疑問ですね。


だからこそ、丁寧に、きちんとコンテンツをつくっている人たちにも光が当たるような時代がきてほしいなと思いますし、結局はそちらが勝つんじゃないかな。


ネットというのは、そういう人たちがゲリラで勝負できるチャンスを与えてくれる場でもあるから、逆にテレビで”面白い”ことができないのなら、どんどんYouTubeに行けばいい。




YouTubeにもサブスクリプションを導入してほしい




ーー今後、YouTubeはどうなると思いますか?


YouTubeも結局はプラットフォームなんだよね。YouTubeは面白いとは思うけど、じゃあ何か定期的に観ているチャンネルがあるかというと、別にあんまり観ていない。


ーープラットフォームはどうなっていくべきだとい思いますか?


YouTubeも有料の配信システム、サブスクリプションを充実させてほしいです。今は広告モデルになってしまっていますから。動画を含めたさまざまなコンテンツをデジタル販売するなど教育にも使えるようなきちんとしたプラットフォームになってほしいと思います。


ーー場を提供するだけではなくて、コンテンツも?


コンテンツをつくれる人が、きちんとそれをマネタイズできるような環境、それを支援するような仕組みをつくってほしいということです。


ーーそれはずっと言われていることですけど、なかなか日本だと難しいような気もします。


やりたい人がやっていくしかないし、そういう人たちの試行錯誤の中から新しいジャーナリズムをサステナブルにする仕組みが出てくると思います。




4月から新しいチャレンジをしたい




ーー今後はどんな活動をする予定ですか?


大学で教えるのも3月で終わるし、4月からほとんどプー太郎のような状況になります。だからこそ、何か新しいチャレンジをしたいと思っているんです。少し喧騒から離れて仕事をする中で、何をするかは具体的に考えていきたいです。


ーーゆっくりしてほしいです……。


「あいちトリエンナーレ」が終わって3カ月ほど、いろいろな人と会って話をしたら元気になってきました。自分自身の問題に対しての反省点も多くあるんですけれど、あんなに面白い芸術祭は僕自身見たことがなかったし、実際に足を運んでいただいた方にも満足してもらえた、いい意味でも悪い意味でも伝説の芸術祭ができたと思います。


ちゃんと反省点と学びを活かして、次のステップに繋げたい。


ーーよろしければ最後に、私や笑下村塾にアドバイスをいただければと思います。


たかまつさんみたいな人がどんどん増えていったら面白いと思うし、たかまつさんには女性の新しいロールモデルになってもらいたい。お堅い会社に勤めながらこういうこともやって、発言もしていくということ。これはやっぱりなかなかできることではない。そういう人と違うことをやる人が多くの人をエンパワーできると思う。


今、日本ってヤバいじゃないですか。面白い表現というのは、こういう時に出てくるのが歴史の常。そういう意味では、僕らみたいな個人で活動する人間が活躍しやすい時代になっていると思います。だから、自分の信じた道を信じて、頑張って、天下取っちゃってください。


ーーありがとうございます。電凸があったら相談に乗ってください。(笑)


電凸は具体的なノウハウがたくさんあります。(笑)


ーー津田大介さんでした。ありがとうございました。


どうもありがとうございました。



最後に


視聴者がテレビよりもネット上の動画を選ぶ割合が大きくなってきていると言われていますが、テレビは絶滅へ向かっているのではなく、転換期を迎えているのかもしれません。

津田さんのお話から、個人がメディアとしての役割を果たせるようになっている時代だからこそ、コンテンツの質や内容といったコンテンツ力が、これからも重要になってくると感じました。




第一回対談

第二回対談

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