「比例区から議員定数を50議席削減する」自維連立政権の狙いを日本維新の会、馬場伸幸顧問が語る
- 笑下村塾
- 1 日前
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10月、日本維新の会が自民党との連立政権の樹立に合意し、「自維連立政権」が誕生しました。維新がその条件として突きつけたのが「衆議院議員の定数1割削減」。その実現の時期や方法について、今も両党の間で激しい議論が交わされています。維新が連立を組んだ本当の狙いとは。どんな政策を進めようとしているのかー。元代表で、現在顧問を務める馬場伸幸さんにYouTube「たかまつななのSocial Action!」で話を聞きました。(取材:たかまつなな/笑下村塾)
※取材は2025年11月13日に実施しました。
連立ではなく二大政党制が究極の目的
ーーまず、日本維新の会が自民党との連立に合意したことに驚きました。馬場さんはどんな心境でしたか?
馬場:維新は大阪で誕生して、2012年に国政選挙でデビューしました。最初は国政のことが全然分かっていない集団でしたが、いろいろな経験を積み重ねて13年経った。国政の仕組みとか人脈とかメディアとの関係とかが成熟してきた中で、次のステップアップをしなければならないときに、ちょうど自民党が衆参で過半数割れで、どこかと組まなければならない状況に追い込まれた。そのパートナーとしてわれわれが選ばれるかどうか、政策が合致するかどうか、という中で、高市さんがやりましょうと。過去の連立を見ると、大臣ポストが欲しいとか、権力に近寄りたいといったムードがありましたが、うちはそうじゃないですよと。連立入りした最大の理由は政策を実現させることです。
ーー馬場さんが代表のときには、維新はまずは野党第一党になって政権交代を目指すロードマップも描いていたと思いますが、政治状況の変化も踏まえて今はどうお考えですか?
馬場:究極の目的は、日本も二大政党になるべきだと思います。今は連立に入っている状況だけれども、この先またいつどうなるか分からない。そのときはまた野党第一党を目指して自民党と対峙していく。できれば政策の競い合い、改革合戦みたいな形で、何年かに一度政権が変わる方が活性化される。そこを究極の目標としながら、そのプロセスで今は連立に入って勉強させてもらっているという感じやね。
ーー自公のような長期の連立を目指すというよりは、自分たちで政権を取ることを目指す理想は変わらないということですね。
馬場:たぶん変わらないと思うね。大臣をやりたい人間はまだ少ないと思う。一番の目標は政策実現で、政治家として足跡を残したいメンバーの方が多いと思います。高市さんからは、大臣ポストに入ってもらって、共にやっていきましょうという熱いお言葉があったらしいけど、いやいや、いきなりそれはだめだと。
「12本の矢」の政策を実現するために
ーー馬場さんがだめだと言ったんですか?
馬場:まだお互いのことをよく知らんのに、いきなり結婚みたいなことはだめだと。前提条件として、衆議院の定数の削減をやりましょうと。これをやらないと政策協議もできませんよと注文をつけているわけですね。自民党は政権運営の経験が豊富で、手の平を返すのが速い。だから慌てて連立入りしたら、大前提の約束である衆議院の定数削減がうやむやにされたまま引きずり込まれていくのは分かっているので。昔、僕も自民党におったからね。いきなり大臣になって抜き差しならぬ仲になるとややこしいので、もっとお互いのことが分かって、約束も果たしてもらって結婚しましょうかとアドバイスして、最終的に閣外でやることになったわけやね。
ーー今回、連立の合意形成の過程で、藤田共同代表がXに自民党との会議に持っていったという資料をアップしたり、情報公開に力を入れていました。それも約束を反故にされないための戦略ですか?
馬場:一つの戦略だろうね。普通なら秘密にされる話やからね。

ーー今回、自民党と政策協議要望の「12本の矢」について合意しました。1週間とか2週間のすごく短い期間にすごいスピードで合意の内容を考えていましたが、どのように党内で合意形成をしたのですか?
馬場:ベースになっているのは、結党のときに作った維新八策という政策集。ここから特に今必要と思われるものをピックアップして整理したので、一から作ったわけではなくて、基本的には所属議員さんは全員が基本的に認めている内容です。だから準備の時間は、あまりかからなかった。どれだけ自民党さんがそれをのんでくれるかに多くの時間を費やしていると思うので。
ーー実現に向けての感触はいかがですか。
馬場:一番難しいのは消費税を減税することだよね。われわれは2年間限定で、食料品については消費税0%にすると。それを実行すると国の収入は5兆円減ることになるのよね。すると、代わりの財源はどこにあるのかと言われる。われわれの研究では、国は5兆円減収になるけれど、そのお金は国民の皆さん方の手元に残るわけやね。そのお金のうち、大体6割、約3兆円がまた消費に回されると言われているので、それで経済が成長していくと自ずと税収に跳ね返ると思います。財源は必要やけども、経済効果との兼ね合いも考えていかなあかんと思う。国の税収が減ることは財務省も拒否感が強いので、ハードルはかなり高いと思いますね。
議員定数削減はスピード重視で比例区から
ーー申し上げにくいですが、私は議員定数の削減には反対です。それで削れるお金はわずかだと思いますし、削減することによって少数政党の方の声が届かなくなるのは非常にもったいないと思いますがどうお考えですか?
馬場:われわれの実行してきたことから申し上げると、大阪府議会は大阪維新の会ができた最初の統一地方選挙で、定数2割、報酬3割カットしますということを一丁目一番地の公約として掲げて、過半数の議席を与えていただきました。109あった議席を21削減して88にしているのね。報酬は3割カット。今もやっています。大阪はそのとき財政状況がひどくて、それを変えるためには、大胆な身を切る改革をやることが必要だった。それで借金を返しながら、残った財源で将来への投資をするということで、教育の無償化、現役世代を助けるということをやり続けてきている。そういう経験の中で、大阪府民から「議員さんえらい減って、私の声届けへんなってますやん」という声は一回も聞いたことないね。政治は少数意見をすごく大事にしていかなあかんけど、ある程度チームを組まないと実現可能性は高まらないので。
ーーだから今回、自民党とも組んだわけですよね。
馬場:少数政党を無視するとか、少数意見を抑え込むとか、そういう考えじゃなくて、そこは政治家が頑張って、同じ志を持つ者を集めていくということも非常に大事で。結局、民主主義なので、最後は多数決をせざるを得ないわけやからね。逆に、多数決にも勝ち抜く戦略をみんな持ってもらわないと。俺の言うこと通らへんがなって1人でなんぼ言われても、それなら仲間を集めてやということになるわね。
ーー比例区だけでなく小選挙区も削減すればいいのではという声もあります。
馬場:おっしゃることも一理あります。ただ、小選挙区をいじるのは一からなので、かなりの年数、時間がかかるわけね。それをやりましょうねと言っていると、1年、2年、3年とたってしまうので、われわれ政治家全体の覚悟を見せる意味で、比例の議席178のうち、50をバンと切る。
すぐにできる比例をまずやろうじゃないですかと訴えているということですね。われわれも小選挙区じゃなくて、昔の中選挙区との間、中小選挙区みたいな、2人区の選挙区でやれば二大政党制により近づくんじゃないのと言っているので選挙区の改革をすることはもちろん視野には入っています。

社会保険料の削減は実現できるのか
ーー維新が連立に入ることで、今まで自民党ではできなかった改革への期待感が高まっています。例えば自民党は開業医の人が多い医師会の声をよく聞くので、勤務医の人たちの声が吸い上げられない課題があります。今後、勤務医の待遇の改善は進みますか?
馬場:この前、緊急医療をやっているドクターの人と話す機会があって、その人のお兄さんは開業医なんだけど年収が倍ぐらい違うと言うわけね。そんなに違うのかと。私は車を買うお金もないので、開業医のお兄さんの奥さんの車をお下がりで乗っていますと・・・。そこの是正は、実現してほしいと言っていたね。その医療と密接に絡んでいるこの社会保険料も、国民負担率が50%になっていて現役世代の可処分所得を減らす大きな要因になっているので、お金をもらって半分は全然使えないというのは、働いていても夢や希望もない。社会保険料を減らしていくことは、時間はかかるけど中長期的にやっていかなければならない大きな課題やと思いますね。
ーー選挙の時に社会保険で年間6万円減らすことを公約に掲げていました。現役世代にとっては減らした方がいいとは思いますが、もっと抜本的な改革が必要ではないでしょうか?
馬場:地元でいろいろなご家庭を回ると、湿布をいっぱい積んでいるおばあちゃんとかがいて、不安なんやろね。でも、無駄なお薬が出ているんじゃないかということもあるし、適正化していく。もう一つは応能負担ね。資産があってお金持ちの方は、高齢者になっても現役世代と同じだけご負担いただけないでしょうかと。ただし経済的に余裕のない方は2割とか、1割とか、そういうことでやっていくと。病院のベッドの維持費もいろいろな形で補助金が出ているので、今、病院のベッドも余ってきているから、ベッド自体を減らすとかね。いろいろなことを積み重ねて、医療費自体を削減して社会保険料を下げることをずっと積み重ねていくしかないね。
ーー年金部会の委員をやっていたときに専門家の方とも意見交換をしたんですけど、維新が選挙の公約に掲げていた1人あたり年間6万円社会保険料を下げるという数字はなかなか難しいんじゃないかと。例えば高齢者の方を3割負担にしたとしても、財源としてそこまで出ないのではないかという話も聞きました。
馬場:学者の方に聞くと、だいたい理屈で考えるから無理ですという話になることが多いね。そこを知恵を使ってどうにかするのが政治の仕事なので、いろいろな努力が必要だし、国民の皆さんにもご理解いただかないといけない。今の日本の制度は戦後どんどん人口が増えて経済成長することをベースに考えられているものばかりで前提条件が崩れているので、年金も、医療の問題も、いったんリセットして新しいシステムを考えないと、普通に考えたら絶対無理やわね。

ーー維新の政策は今までの制度をガラッと転換するようなものが多いですね。自民党とは対照的です。
馬場:自民党はやらない。できない。しがらみもある。いろいろな団体がバックについていたり、選挙のときに応援してもらったり、政治資金を提供してもらったり。その人らが嫌がることはなかなかできへんもんね。だからどうしても改革がぬるい。応急処置の改革をやってきたから、あらゆる分野が歪んでいるので、大改革をやらないといかんよね。
企業団体献金や副首都構想の行方は?
ーー公明党は企業団体献金をきっかけに離脱しました。維新は、そこが難しいから諦めて議員定数の削減に切り替えたのではという声もあります。まずはどういう落とし所を探りますか?
馬場:まずは受け手の規制とか。上限規制を入れるとか。企業や労働組合の寄付している金額を見ると何千万とか何億とか、とても恐ろしい金額なので。1000円、2000円でも気を使うのに、5000万とか頂いたら到底断りにくいよね。それで政治が歪んでいるとは思いたくないけど、そういう疑わしいことはできるだけやめていく。これは協議書にも書いてあって、高市さんの自民党総裁任期、2年後までに方向性を決めるということなので、その方向性がどこまで詰まるか。期待する国民の声も大きいと思うので、一歩ずつ前へ進めていくということでしょうね。
ーー維新の会は統治機構改革として副首都構想にも力を入れています。なぜ副首都が大事なのでしょうか?
馬場:今は国、都道府県、市町村があるという仕組みですが、今の時代には合っていない。東京に人、物、お金が集中し過ぎているわけね。これを解消するために道州制をやらないといけない。地域ごとの特性があるので、自分たちで考えて自分たちで行動していく。みんなが考えて自立してやることで地域の活性化は必ず生まれてくる。道州を設置してその中心になるのが副首都という考え方で、北海道とか、関東、関西、九州とか、副首都は全国で何個か置いたらいいと思う。副首都から日本の統治機構全体を改革していくということやね。
ーー最後に、若い方々にメッセージをお願いします。
馬場:若い皆さん方が夢や希望を持って生きていける、働いていける土俵を作るのがわれわれの仕事です。政治にどんどん参加していただいて、思っていることを伝えていただければ、全部が全部、すぐにとは言いませんけど、皆さん方の思っている方向に政治が動いていく。そのためには、選挙に行って投票していただく。そこから日本を大きく変えていけることは間違いないです。ワクワクドキドキする社会を作るために、ぜひ一緒に参加してください。

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