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  • 執筆者の写真笑下村塾

スウェーデンの生徒組合って?!日本の生徒会とはまったく違う

※共同通信配信の有料メディア向けコラムから転載(2023年06月26日配信)


 日本では、子どもたちを「管理」し、守ろうと政治家も先生も保護者もしている。子どもたちを自立した人として見ておらず、自己決定する機会を奪っている。それでは、意見を言うことも、話し合うことも、決めることも、経験しないまま大人になってしまう。能動的な人材が育たない。

 子どもたちが学校や先生から独立し、自分たちの権利を守るために行動する。若者の投票率が8割を超え、若者の政治参加が活発なスウェーデンには、そのようなことを支える制度があった。「生徒組合」である。これは、学校組織の一部のような日本の「生徒会」とはまったく在り方が異なる。生徒組合が存在していることが、学校内や社会で民主主義が浸透している一つの理由ではないか。高校と大学の生徒組合・学生組合を取材したので、そのことを書きたい。


高校生が年間予算1000万円以上を管理

 昨年、訪問したストックホルムの高校の生徒組合がすごかった。生徒の権利を守る活動をしている。授業で人種差別的な小説を扱い、差別的な発言をした先生に対し、学校側に抗議をし、教材を変えたそうだ。その後、先生の話し方もかなり変わったという。それ以外にも#MeToo運動や政治のイベントを企画し、差別はいけないというメッセージを伝えたりすることで、学校を居心地の良い場所にしている。

 スウェーデンでは、国政選挙や地方選挙に合わせて、多くの学校で「模擬選挙」が行われている。取材した高校でも実施しているが、生徒組合が模擬選挙の前に、国政政党すべての青年部に声をかけ、政党討論会を主催しているという。政党に直接質問をぶつける機会をつくり、「自分たちの声が聴かれること」を重視し、選挙に行くことを促している。

 毎月、校長先生と生徒組合の長が会議を行う。そこでは時には協力し、時には批判をし、さまざまなことを協議している。

 生徒組合には、生徒が自分の意思で加入する。だから、組合は組合員を増やすための努力も怠らない。首都ストックホルムでは、飲食店を運営メンバーが訪問し、組合員は1割引きにしてもらうという交渉をしていた。お客さんが増えることでお店側にもメリットがあるようにしているのだ。

 私が取材した高校生徒組合の1年間の予算は、年間1300万円ほどになる。グッズを販売したり、「全国生徒組合」から組合員の数に応じてお金をもらっている。

 各学校の組合が自由に参加でき、全国の組合を束ねる「全国生徒組合」は、年間の予算が3億円以上あり、およそ9割は政府からの補助金で賄われている。ここには正規の職員が40名以上おり、高校を卒業して就職する者が多い。平均年齢は22歳と、若者が集まる場となっている。ほとんどが高校の元生徒組合の長で、数年間は事務所で働き、大半が大学に進学するという。

 全国組合のミッションは、生徒の権利強化、不当な成績を生徒が訴える権利の活用、物理的・精神的・社会的に学校環境を改善することが掲げられている。政府と学校が、お金と権限を委譲し、子どもが自立することで民主主義が根付いている。


校長や先生から独立して自治をすることが大事

 ストックホルムのクングスホルメン高校生徒組合の責任者マルコムさんに話を聞いた。

 スウェーデンの若者の投票率が8割を超えるのに対し、日本の若者の投票率は3割ぐらいにとどまる。どうすれば日本の若者が「私たちにも社会を変える力がある」と思えるようになるだろうかと質問した。

 「日本でも(生徒組合のような)自治的な団体を作れたら、自分たちでもできる、自分たちもより大人になったと感じられるでしょう。学校に対して影響を与えられると思うと、選挙に行って国全体に影響を与えられることも素晴らしいと思うようになります。校長や先生から独立して、自分たちで自治をすることが大事だと思います」


教育大臣に奨学金増額を直接交渉

 大学では、ストックホルム大学学生組合を取材した。メンバーは約1万人。同大学の学生の3人に1人が加盟している。会費は1学期でおよそ1600円ほど。学生組合は、ストックホルム大学との交渉、政府や他団体とのやりとり、大学内のカフェやスポーツクラブなどを運営している。

 なんと、ストックホルム大学の方針などを決める理事会に、学生組合の代表者が出席している。スウェーデンには、大学法という法律があり、大学の意思決定には、必ず学生の声を聞くことが義務づけられているからだ。最近の理事会では、物価高騰により、学生生活が逼迫(ひっぱく)していることを指摘した。その結果、教材費を下げるために、大学教授が書いた書籍などをデジタルで無償で提供することが決まった。

 年間の予算規模は2億円以上。半分以上が大学からの補助金、2割ほどが税金、2割が学生からの会費となっている。

 組合の議会に当たる評議員会のメンバーは、さまざまな学生政治団体から立候補した候補者の中から選挙によって選ばれる。予算、組織、重点的に要求するテーマなどを決める。重点テーマでは、キャンパス内の気候変動対策や、若者のメンタルヘルス対策、家賃食料費の高騰を背景にした奨学金の値上げなどを要求している。

 7人の学生役員が、お給料をもらいフルタイムとして働く一方で、17人の大人の正職員が広報、オフィスの運営、会計などバックヤードを支える。若者たちの声を実現するために、専門職の大人たちが継続的に支える持続可能な組織となっているのだ。

 組合は、大学内での活動のみならず、政府に対しても働きかけを行っている。教育大臣に会って、物価高に対して、奨学金の支給額をもっと増やしてほしいと訴えた。スウェーデンは学費が無料なので、生活費のために支給されている奨学金の値上げを要求したのだ。


平等を大切にするスウェーデン

 代表のサイモンさんは、なぜ若者の声を聞く文化があるのか、このように考えている。

 「スウェーデンは労働組合が強く、対立が生じた際には、組合と経営者が対話をすることを重視してきました。1970年代頃からは、学生が大学に影響を与えるべきだという考えが広まりました。そして、平等を大切にするスウェーデンでは、発言権が大人にも子どもにも平等に与えられるべきだという考えが強く、若者や子どもの声を聞く文化がそもそもあります。教育の質が高い大学では、学生の声を聞くなど民主的なガバナンスが整っています」

 生徒組合・学生組合は、大学や高校からは完全に独立しているからこそ、生徒の権利のために活動できる。自分たちにとって、よりよいルールとは何か、どうすれば居心地がよいのか、何を変えればいいのかをじっくり考える子どもたち。そしてそれを支える仕組み。これらがあるからこそ、自分たちの声が反映され、学校が民主的に運営されることを実感できている。だからこそ、自分たちには社会を変える力があると思い、社会参画するのではないか。

 日本の若者の社会参加を進め、社会を変えていくために、スウェーデンの事例から学べることは多いと思う。

 ※スウェーデン全国生徒組合については、両角達平著『若者からはじまる民主主義 スウェーデンの若者政策』を参照した。


 ☆たかまつなな 「笑下村塾」代表、時事YouTuber。1993年、神奈川県横浜市生まれ。大学時代に「お嬢様芸人」としてデビュー。2016年に若者と政治をつなげる会社「笑下村塾」を設立、出張授業「笑える!政治教育ショー」「笑って学ぶSDGs」を全国の学校や企業、自治体に届ける。著書に『政治の絵本』(弘文堂)『お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs』(くもん出版)がある。


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