“社会保険料6万円減”は実現するのか?維新の藤田文武×梅村聡が語る社会保障改革の現在地
- 笑下村塾

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「現役世代の負担を減らすにはどうすればいいのか」。医療・年金・介護を支える仕組みが揺らぐなか、日本維新の会は勤務医の待遇改善やOTC類似薬の保険外し、資産把握の強化など、制度の“つくり直し”に踏み込んでいる。制度改革で何を目指し、どこまで実現可能なのか。社会保障政策の中心にいる藤田文武共同代表と梅村聡・社会保障調査会長に、YouTube「たかまつななのSocial Action!」でその狙いと課題を聞きました。(取材:たかまつなな/笑下村塾)
※取材は2025年11月19日に実施しました。
勤務医の待遇改善、OTC類似薬の保険外しが政治課題に
ーー私は厚生労働省の審議会「年金部会」の委員を務めていて、現役世代の負担軽減は不可欠だと感じていますが、実際には非常に難しい問題だと感じました。本当に支援が必要な人をどう把握するかという課題もあります。今日はお二人が、社会保障改革をどのように具体的に進めているのか伺いたいです。
藤田:梅村さんは現在、自民党との協議体の維新側の座長ですね。
梅村:社会保障調査会長、税制調査会長、社会保障協議体の会長の3つを担当しています。

ーー今回、勤務医の待遇改善が注目されるようになったことは大きな変化だと感じました。なぜ今まで話題にならなかったのでしょうか?
梅村:私は元勤務医です。予算委員会では、大学病院の医師の給与表を高市総理に示しました。例えば、50代の外科教授の基本給は49万5千円、各種手当を含めても60万円ちょっと。手取りは33万円ほどです。診療だけでなく、教育・研究も同時に担っています。国の前提は「大学に巨額の運営費、交付金を出しているから、その中でやりくりしているはずだ」ということでしたが、実際には設備投資などに優先的に回され、人への投資が後回しになってきました。維新としては、この実態に光を当てて、明らかにすることが第一歩でした。
ーーこれまで自民党は医師会(主に開業医)の支援が強かったので、結果として勤務医の待遇は優先度が低かったということでしょうか。
藤田:それは確かにあると思います。僕らが重視しているのは「現役世代の負担を増やさない構造」に転換することです。そのためには医療のサービス提供側のリソース配分も適正化して持続可能にしなければならない。DXによる効率化や、無駄の削減も含めて総合的に見直しています。そして公的保険と民間保険の両方を活用して、医療や介護を産業として育てていこうと考えています。
ーー困っている人を切り捨てるということではないということですね。
藤田:当然そうですね。
ーーOTC類似薬についても、私は節約の意味で賛成ですが、慢性疾患などで必要な人への配慮はどう考えているのでしょう?

藤田:「明日から全部保険外にして1.3兆円削減」といった雑な議論はしていません。どこなら合意できるか、どこは配慮が必要か、どこは時間をかけるべきか、精査しています。
梅村:保険給付から外れても、病気の方によっては使わざるを得ない方がいる。薬剤費の給付も法律を変えればできるので、その給付によって穴埋めをして、慢性疾患など特に命に関わる場合には過度に負担がかからないようにする。そういった検討に時間をかけていることをご理解いただきたいと思います。
「社会保険料を6万円下げます」は誇大広告か?
ーー余裕のある高齢の方には一定の負担を求めることは必要だと思います。ただ、資産の把握が難しいという課題もあると思いますが、どうお考えですか?
梅村:例えば、現在は確定申告した所得で保険料が決まっています。でも、特に高齢の方に多いんですけど、証券会社の特定口座に株式を持っている。すると、そこで配当を受け取っても売却益に対する課税は20%だけです。所得と合算すれば総所得はもっと高いはずなので、もっと高い収入の認定をしなければならない。こうした金融所得を把握していこうとしています。あとは証券会社からマイナンバーを記入したものが税務当局にきちんと届け出をされるのか。今年中に各省庁から聞き取りをして早急にまとめていきたいと思います。

藤田:資産を把握されることに対する拒否感が大きいのは課題ですが、金融資産がしっかり把握される方がフェアだと思います。また、相続税そのものを見直す議論もできると思います。相続税は税収2兆円弱で、節税のインセンティブが高く、コスパが悪い。資産を把握できるインフラを作り、給付と負担をしっかりやる。相続や贈与については、諸外国ではなくなっているところもあります。それは、社会保障の全体のコスト低減にも効いてくると思います。
ーー専門家の方々から、維新の提案を実行しても高齢化や医療高度化を考えれば、社会保険料率を維持するのが精一杯で、負担を下げるのは難しい」とよく聞きます。社会保険料を「6万円下げる」というのは誇大広告ではないかとも思ってしまいますがどうお考えですか?
梅村:自然増(医療費などが何もしなくても膨らむ分)をしっかりコントロールしていくこと、抑えていくことも必要です。そして後期高齢者医療制度の、公費が5、現役世代からの支援金が4、高齢者の方の保険料が1という割合を変えないままではいつまでも実感してもらえないから、現役世代の後期高齢者への支援金をなくすという構造改革をいま提言しているところです。「自然増の抑制」と「構造改革」の両方が必要で、そのバランスを取っていると思っています。
資産を把握し「負担能力に応じた社会保障」へ
ーー皆さんが描く理想像は、負担できる人が負担していく。金融資産も含めて把握した上で、適正に負担する社会保険制度ということですね。
藤田:その通りだと思います。税率は可能な限り下げつつ、経済成長で税収を確保する。社会保険料を取りやすいところ、現役世代からばかり取る構造を変えて、広く負担を適正化していかないと、現役世代は耐えられなくなると思います。
ーー現役世代は、かなり高額の社会保険料を納めているにも関わらず、将来への不安が大きすぎて、自分の人生経験を豊かにすることや子どもを産むことにお金を使えない。これが最も大きな問題だと思います。
梅村:一般論では、社会保険料は中間層の方の逆進性がすごく強い制度です。だから、現役世代が増えている時代には、保険料を中心とした制度にする。現役世代が落ちていくときには、逆進性が生まれないように、持っている人の、払える人の公費で埋めていく。この切り替えが必要で、今はちょうど減り始める入口なわけだから、構造改革が必要だということですね。
藤田:2040年に医療費80兆円という試算がありますが、そうなれば社会保険料は2倍ですね。
梅村:そうなります。それだけ名目GDPが伸びていくということは、給料も増えるし、それに見合った社会保険料も増えていく。見合いがつくかどうかは別にして、社会保険料も追いついていくというのが、一応、公式見解ではあります。でも、名目GDPの伸びと社会保障の費用がパラレルになっていく保証が、今のところどこにもないわけですね。

藤田:どこにもないですし、国家財政における比率は年々増えている。かなりディストピアですよね。僕も政治家になって思っていることは、みんな漠然とした不安を感じているので、その不安を取り除いて上向きな国民心理を作りたい。それが一番です。中でも、社会保障はとても大きなファクターです。
梅村:もう一つ、大きな話になりますが、社会保険制度、社会保障制度が充実すればするほど、経済的に言えば子どもを持つメリットが減っていくんですね。例えば、年金制度ができたら仕送りする必要がない。医療保険を使えば親の医療費をそんなに用意しなくてもいい。介護保険ができたら子どもがいなくても介護が受けられる。つまり、社会保障制度は、作れば作るほど社会化していくということだから、経済的に言えば子どもを持つメリットが減ってくる。そこに手当てをしないと、少子化になっていく。そこにどう手当てするかが、維新の会の一つのテーマです。それが大阪で始まった「教育費の無償化」などにつながってくる。子どもは経済的なメリットだけで持つわけではないことは分かっていますが、人は経済で動く面もあるので。
ーー今後の議論にも注目したいと思います。最後にメッセージをお願いします。
梅村:年末にかけて自民党との社会保障制度の協議を続けます。もう一つは税制改革、これも年末にかけての政治の風物詩です。ぜひ新聞やメディアでご覧いただければと思います。
藤田:将来に対しての不安が渦巻く若い世代の気持ちを上向きに変えることが僕らの使命だと思いますので、頑張っていきたいと思います。
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