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  • 執筆者の写真笑下村塾

生徒も参加して何でも決めるドイツの「学校会議」とは?

※共同通信配信の有料メディア向けコラムから転載(2023年11月13日配信)


ドイツでは多くの学校が、学校会議という制度を設けている。州によって違いはあるが、学校運営全般、授業、校内外行事、あるいは登下校、就学援助、トラブル防止に至るまで幅広いテーマが議題となる。最も目を引くのは大人だけではなく、生徒も対等な立場で参加するというところだ。私が取材したベルリン州では、最高意思決定機関という位置付けで、校長の選任まで担っているというから驚きだ。子どもたちも自分たちの学校のトップを選ぶ決定権を委ねられているのだ。ベルリン州当局の学校会議担当者で、自身も親代表として参加した経験があるマティッヒ・クローネ氏に話を聞いた。

校長も自分たちで選ぶ

 学校会議は、ベルリン州法の「学校法」によって設置が義務付けられている。メンバーは校長1人、教職員4人、親4人、生徒4人に外部講師1人で、計14人の構成だ。生徒代表は生徒が、親代表は親がそれぞれ選ぶ仕組みになっている。そして外部講師は誰でも推薦でき、多数決によって決める。生徒代表は、各クラス代表が2人選ばれ、その中からさらに選挙によって学校会議参加者を決めている。

 学校会議では、校長が決めたことにも反対できる。校長の決定に対する拒否権に加えて、そもそも校長の選任も学校会議で行われる。多くの場合は教師の中で立候補する人が出て、もし2人以上の候補者がいたら、3分の2以上の賛成により1人が選ばれる。

 協議事項の軽重によって3分の2以上、過半数による決定と具体的に定められているが、いずれの場合も参加者の1票はすべて平等である。


小学2年生による募金活動の実現

 学校会議の開催頻度は、学校法により少なくとも年に4回と定められているが、状況によっては6~7回に増えることもあるという。学校法は2004年に施行されたが、それ以前にも校内のことは自分たちで決めたいという動きがあった。学校会議のような形式がすでに存在している事例があり、それが注目されて、法律化されたのだ。

 学校内での自治が根付いているため、生徒の代表の選任も抜かりない。日本では、生徒会メンバーは先生の意図をくみ取るイメージだが、ドイツでは先生に批判的な生徒を選ぶ傾向にあるという。自分たちの意見が反映されることを第一に考えるため、代表決めは形骸化されない。

 生徒たちから、会議に議題を持ち込むことも少なくないという。

 「中学校以上で一番よく議題に上がるのは、携帯電話を学校に持ってきていいかということ。学習室の設置などもしばしばテーマになります。小学校だったら、遊び場グラウンドをこうしてほしいとか。印象に残っているのは、小2が提案した津波の被害者への募金活動です。手作りしたものを売って、売り上げを寄付しようという話になりました。他のクラスや学年にも広がり、最終的に学校全体として募金活動することが学校会議で決まりました」

 生徒たちが提起した校則の変更は、数年かかる場合もあるという。携帯の持ち込みは、学校会議で3年間も議論を重ねて実現した。生徒たちが主体となり学校に関する物事を考え、最終的には大人がそれを信頼している様子がうかがえる。


子どもたちを信頼する

 2022年8月から、小1の児童も学校会議の投票に参加できるようになった。より低年齢の児童生徒にも民主的な参加機会が保障されることになる。幼い子どもたちをどうすれば、大人たちは信じられるようになるのだろうか。

 「上から答えを与えるのではなく、自分たちで考えられる能力を養うのが学校の目的です。なので、その力を養うための自由な時間と場所を用意することを重視しています。法律においても最低月に1回は生徒によって主催される会議を行わなければならないと定められています」

 しかし学校の民主化はポピュリズムという弊害も伴うのではないだろうか。

 「そういう例はあるけれど、響きがいいことを言っても何も変わらず、言葉だけだったことがはっきりするので、ポピュリズムについて学ぶ良い機会になります。問題を防ぐには一番有効な方法ではないでしょうか。子どもはそういうのが割とすぐに分かりますよ。クラスの人気者が選ばれるけど、何をやったのか、何がダメなのかはっきりするので、次の選挙のときには別の人が選ばれるというのを見てきました。自分たちでちゃんと考えているので信頼しています」

 日本では、子どもは「何かあった時のために備えて守るべきもの」とされる傾向が強い。自分で決めたり、話したりする機会を大人たちが奪い、強制的に管理しようとしている例が多いと思う。そうではなく、失敗も成長の糧に必要だと見守る大人たちの姿、信頼関係によって民主主義を子どもたちが学ぶ場が必要なのだと実感した。

 今回の取材を通して、ドイツの大人たちが圧倒的に子どもを信頼しており、子どもたち自身で決めることを大人が尊重している様子に感動した。子どもたちは信頼されることで行動を起こせる。そしてその行動が社会を変えた時、自分にも社会が変えられたという絶対的な実感を持てるのではないだろうか。

 

☆たかまつなな 「笑下村塾」代表、時事YouTuber。1993年、神奈川県横浜市生まれ。大学時代に「お嬢様芸人」としてデビュー。2016年に若者と政治をつなげる会社「笑下村塾」を設立、出張授業「笑える!政治教育ショー」「笑って学ぶSDGs」を全国の学校や企業、自治体に届ける。著書に『政治の絵本』(弘文堂)『お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs』(くもん出版)がある。


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