立憲民主党代表選挙へ立候補している立憲民主党代表、衆議院議員の泉健太さん。次の選挙で政権交代を狙うとし、「自民党を退場させねばならない」としています。泉さんが考える野党連携、政権交代への道筋とは? YouTube「たかまつななのSocial Action!」で話を聞きました。(取材:たかまつなな/笑下村塾)
※取材は2024年9月10日に実施しました。
自民党は総裁選の政策をいますぐやればいい
ーー泉さんは、自民党の総裁選で候補者が掲げる政策が、立憲民主党が掲げてきた内容と酷似していると指摘していますね。
泉:自民党立憲化計画みたいな、すごいものが進行してるなと。防衛増税ゼロ。政策活動費廃止。マイナ保険証は延期。選択的夫婦別姓。立憲民主党の政策を次々と採用いただき、ありがとうございます。
ーー立憲民主党の政策を自民党がやるなら、自公政権のままでいいと思う人もいるかもしれませんが。
泉:皆さんにとって本当にそれでいいのか。だって今でもすぐに彼らはやれるんですよ。総裁にならなくたって。そう言うならやればいいでしょ、って話だけど、やってないじゃないですか。総裁になるための撒き餌ですよ。
ーー政権与党なのだから、むしろなぜ今までやらなかったのかが問われるべきということですね。
泉:そう、むちゃくちゃ問われる。だって、小泉進次郎さんが解散総選挙をすぐにやると言っていますが、国民のために政策を実現したいんだったら、自民党総裁になって総理になったら、1年間解散せずに選択的夫婦別姓をやったり政策活動費を廃止したりすればいいですよね。でも自民党は、総裁になって総選挙をやったら必ず「選挙をやって新しい人たちが上がってきたら、もう一回皆さんに聞いてみます」となるわけですよ。すると議論が一から始まって、いつのまにかその議論が消えていく可能性があるので、そこはだまされないようにしましょうねと。
総理になったらまず安定政権を作る
ーーそもそも立憲民主党が自民党と違うところはどこですか?政権交代したら何が変わりますか?
泉:日本の社会には大きく2つの考え方を持つ政党が必要ということなんですよね。それは資本主義か社会主義かではなくて、国の目線で政治を考える人たちと、国民の目線で政治を考える人たちのグループです。あるいは企業社会でいうと、経営者側で物事を考える人たちと、働く人たち側で物事を考える人たちがいるし、国、中央政府でものを考える人と、地方でものを考える人がいるわけです。そのように自民党と立憲民主党は両方とも必要な存在で、そこが論戦して両方の条件を満たした法律が通ることが健全で、そういう意味で立憲民主党は、自民党との対比でいうと、国民側、働く人の側、地方側で「どうなの」と指摘をする立場ですよね。
ーーもし政権交代して、泉さんが総理大臣になったらまず何を行いますか?
泉:まずは国民のためにとにかく安定政権をつくる。次の選挙でもし政権交代すれば12年ぶりぐらいになるわけですよね。自民党は日々役所と付き合ってきているし、業界とも付き合ってきているけれど、12年ぶりの政権交代となれば、確かにこっちのほうが付き合いが浅いわけですよ。そのときに、10個掲げていた政策をいきなりフルスピードでやりますと言ったら、たぶん政権は崩壊します。
まず大事なのは、1期目。外交、安全保障、エネルギー政策などを安定させ国民生活を守る。立憲民主党でも政権を担えることをしっかり証明しつつ、政治改革を進めていく。政策活動費もなくしていく。文通費も公開する。こういうルールを新しい政権でどんどん作って、教育の無償化、介護や保育の方々の待遇の改善などを一個一個やっていきたいと思います。一回の政権で20も30も政策を実現するという考え方に立たないほうが落ち着いて政権運営ができます。その実績を持って2期目の政権にチャレンジしていくイメージを持っています。
ーーそれは、民主党政権時代の反省からですか?
泉:大いなる反省。僕は内閣府の政務官でしたけど、あのとき他の役所でたまたま大臣に会ったら、決済業務が多すぎてへとへとになっていました。政治主導でやることになり、全部大臣、副大臣、政務官で決済していたんですけど、膨大な資料が上がってくるので、とても追いつかない。それに加えて当時の民主党が抱えていたビッグプロジェクトがあったので役所もパンクしかけていた。だから無理をさせて政策を一時期に大量に仕上げることはできない前提で、現実主義に立って一個一個政策をクリアしていくイメージでいきたいですね。
政権交代が現実味を帯びてきた
ーー8月のNHKの世論調査では、立憲民主党の支持率は5.2%でした。ここから政権交代までどう道筋を付けますか。
泉:いつまで政党支持率でものを見るんだろうなと。たぶん世の中はそこで見ていない。政党支持率に関係なく投票して、選挙結果が出るということがもうずっと続いているんですよ。だから、マスコミが今セットでやっている「次の選挙、どこに投票しますか」あるいは「次の政権、どんな政権を望みますか」という調査を見ていただいたほうが、実際の投票行動に近いんじゃないかと思います。そうすると、自民党を中心とした現与党と、立憲民主党を中心とした野党による新しい政権というのが、実は同じぐらいの数字になっていますね。
ーーそうですね。政権交代を望むという声が多いですね。江田さんへの取材では、泉さんが維新の馬場さんと3時間食事をし、馬場さんが自民、立憲ともに等距離のスタンスを崩さなかったと伺いました。改めて、野党共闘について、政策協定をどの党まで結ぶかなど、どうお考えでしょうか。
泉:こちらが二人三脚で足のひもを結びましょうと言っても、相手が足を近づけてこない限りひもは結べないので、やっぱり相手次第ということです。私たちとしては、自民党の政権を変え、野党で共通できる政策を実現する新しい政権を作ることは必要だと思っています。立憲民主党として、この選挙で勝ち、議席を増やして、野党第一党として政権の軸になりたい。そして、候補者が揃えば単独政権も取りたいです。その際、例えば教育の無償化などは維新とも一緒にやれるのではないかと考えています。
しかし、維新さんには維新さんの経営計画があり、今は政権を取るタイミングではないという考えなんですよ。「今がやらなければならない時期ではないか」と私たちが話をしても、「いや、今はまだ。自分たちは当選回数も浅く、政権を担う力が十分ではない」と動かないんです。「やろうよ」と言っても「動かない」では仕方ない。そこで、私たちは自分たちで前に進むことにしました。
そして、あとは選挙の結果次第で、維新さんも一定の議席を取るでしょうから、自民党が過半数を割った時に、維新が自民党をサポートするのか、それとも、自民党が過半数を割ったという世論を背景に、新しい政権作りに協力するのか、それが問われるのではないかと思います。
ーー有権者にとっては維新がどう動くのか、選挙のときに分かりにくいですね。
泉:維新はそもそも政権論に与するつもりがないという感じですよね。自分たちの政策を実現してくれるなら、どっちでも考えられるぞと。
維新、国民民主、共産党との関係は?
ーー泉さんは以前、共通の政策の下で各党が集結するミッション型内閣というアイデアを述べていましたが、今まさにそれが大事になってきますね。維新とはどれくらい一致できそうですか?
泉:教育の無償化は一緒だと思いますね。あと維新さんは防衛増税反対と言っていますね。それは自民党の茂木さんも言っているから、茂木さんも自民党を離党して「防衛増税反対」ってやってもらいたいぐらいですけどね。そういうことが自民党に問われるんですよ。
あとは政治改革ですね。維新さんだって、ある意味自民党に騙されたわけですよ。はしごを外されて悔しい思いをしていて「文通費は今国会中に必ずやる」と言って、何回も先送りされているし、政策活動費だって結局いい加減な決着の仕方になってしまって、維新さんまで逆に批判を受ける状況になったので、そういうところは立憲民主党とすっきりやりましょうよと。あくまで合意できる範囲ではあるけれども、合意できるものは必ずあると思うので、それをやっていきたいですね。
ーー憲法改正はいかがですか。
泉:合意できないんじゃないですか。できないと思います。しょうがないよね。
ーー合意できない問題は、ミッション型内閣ではやらず、立憲で過半数が取れたらやるということですか。
泉:そうですね。維新さんも連立に入るのか、それとも入らないで政策でやるのか。その辺は閣外協力とか、政策ごとのパーシャル連合とか、いろんな言い方があるんですけど、まだどうなるかは分かりませんね。でも、立憲民主党としては、政権を担えるだけの議席をできるだけ取りに行かなきゃいけないという思いです。
ーー維新がそういう立場だとすると、立憲民主党と国民民主党で過半数の候補者を狙うんですか?
泉:過半数の候補者は立てられると思います。この2つの政党で政権を担うことはあり得るでしょうね。
ーーそれは、国民民主党代表の玉木さんも合意しているんですか。
泉:明確に合意があるとか、何かを結んでいるわけじゃないですけど、認識はそれなりに一致してると思います。
ーーそこには共産党は入らないということですか。
泉:政権には入らないですね。
ーー共産党との選挙区の調整は?
泉:前回の総選挙のことも含めて、各政党それぞれ自民党政権がおかしいとか、裏金議員はおかしいと思って普段行動しているので、わざわざ立憲民主党の、もう少しで小選挙区で勝てるようなところに候補者を立てないと判断をしてくれている可能性があります。各政党、全部一個一個の選挙区で「ここはこの議員さんが頑張っているから対立候補を立てる必要はないんじゃない?」という話し合いをされていると思うんですよね。そういう意味では、全く選挙区調整がないわけではなくていろんな政党がいろんなことを考えて、それぞれの政党で高度な判断をして、政権を変えられるように頑張っている最中だと思っていますね。
若い世代が意思決定の場に参加できる仕組みを
ーー民主党の代表選の争点にしたいことはありますか。
泉:現代表か否かというのはもちろん一つの争点ですよね。あとは世代交代ということもそうだし。訴えている政策は、みんな同じ政党ですから多少の違いはあれ基本路線は変わらないのは当たり前なので、ここまでやってきたことの可能性を選んでいただくか、今まで政権を担ったことのある方々に委ねるのかで決まるんじゃないですかね。
ーー笑下村塾は、主権者教育をやっている会社です。泉さんはこどもの権利について理解があり、とても期待しています。今後、具体的にどんなことをやりたいとお考えですか。
泉:被選挙権年齢の引き下げは当然ですよね。学校の主権者教育ももっと普及させていく。さらに、どうしたら若い世代が当たり前に意思決定に参加できる仕組みを作っていくか。僕は立憲民主党の中に「未来世代委員会」というものを作ったんです。これは北欧で進んでいる一つの在り方で、今、泉健太は代表選では最年少でも、もう50歳だし40年後のことは責任が持てないですが、40年後のことを決めたりもする。2050年のカーボンニュートラルの議論で、それを目指す、目指さないの議論をしているわけですから。
一方でそこには、2050年のときにど真ん中の現役の人たちの意思が入っていないじゃないかということで、去年の6月から、立憲民主党の中に大学生や高校生たちによる未来世代委員会を発足させて、皆さんに議論をしてもらった結果を代表や政調会長などみんながいる場で提言してもらって政策に生かしていく取り組みです。各政党がそういう場を備えることが重要じゃないかと思います。
ーー最後にメッセージをお願いします。
泉:国のことを考えているのは自民党だけではありません。みんな国を良くしたいという富士山の頂上に向かって登り口が違うだけです。立憲民主党も建設的に前向きに政策を作って議論をして、日本の将来を豊かにしようと考えています。決して賛成、反対という二元論ではなくて、僕らもこの国を担う責任を持って活動しています。民主主義国家で政権交代のない国は日本ぐらいだと言われてますから、当たり前に政権交代が起きるような国にしていくために、僕はあえて自民党じゃないところで活動しているので、応援してもらえたらありがたいです。
取材の様子はYouTubeでもご覧頂けます。
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