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  • 執筆者の写真笑下村塾

高校生が知事の相談役に?! 全国初のリバースメンタープロジェクトとは?!

※共同通信配信の有料メディア向けコラムから転載(2023年9月18日配信)


群馬県で先進的なプロジェクトが始動した。県内の高校生10人が知事の「リバースメンター」(注)に就任。相談役となって提案やアドバイスをすることで、新鮮な考えや感性を政策に反映させていく。同様の制度を取り入れた自治体はいくつかあるが、高校生が県政のトップに助言するのは全国で始めてだ。「子どもの声」をどのように聞くかが注目される中、8月22日には群馬県庁で山本一太知事も出席し、委嘱式と意見交換会が行われた。これは、私たちの会社、笑下村塾が運営を担っている。高校生の熱い声、リバースメンターを始めた意図を書きたい。

 (注)リバースメンター 1990年代後半に米国のゼネラル・エレクトリック(GE)社が始めた人事研修制度。若手社員が先輩社員に対し、逆(リバース)に相談役(メンター)として指導にあたる。若い世代の情報、アイデアを経営に取り入れる狙いがある。若手の活躍の場を広げることや離職防止にもつながる。日本企業でも採用事例が増えているほか、各種組織にも広がっている。


なぜリバースメンターが必要なのか

 日本の若者の26%しか「自分の力で社会を変えられる」と思っておらず、これは先進国の中でも非常に低い数字だ(日本財団「18歳意識調査」2022年)。若者の声が政治の場に届きにくい現状があり、諦めの気持ちがまん延しているように見える。今年4月「こども基本法」が施行され、すべての自治体に対して、こどもの声を聞くことが義務づけられた。「こどもの意見表明権」を重視する考えから笑下村塾と群馬県がタッグを組み、知事のリバースメンターとして、高校生の声を政治に反映させる未来に向けた取り組みを開始した。

 本事業は、高校生自らが政策提言を通じて社会を変える実感を持つことによって、群馬県が目指している「始動人(しどうじん)」(自分の頭で考え、他人が目指さない領域で動き出し、生き抜く力を持つ人)の育成につなげることを目的としている。10代ならではの感覚や価値観を持った意見を県政に取り入れ、新たな展開を生み出すことも期待される。


首長行脚、群馬で思い通じる

 これまで私は、若者の政治参画を促すため、全国の首長を行脚し、若者の声を取り入れる「若者議会」を始めないかという提案をしてきた。昨年1年間、若者の政治参加の最先端を知るためドイツ・イギリス・スウェーデン・フランスなど海外に取材し、100人以上の方にインタビューした。ユースカウンシルで選挙年齢の引き下げの活動を行う高校生や、生徒会で給食のルールを変えたりLGBTQプラスの子のためのトイレを設置したりする高校生。自分たちで課題を解決しようとする子どもたちを取材で見てきたので、日本でもいろいろな声を出してもらって大人が受け止める仕組みを作りたかった。首長の反応が芳しくない中、ちょうどリバースメンター制度に関心を持っていた山本一太知事が話を聞いてくれた。

 高校生と初対面の場で山本知事は、「リバースメンターを前々からやりたいと私は言っていて、たくさんの立派な経歴を持った大人が名乗り出て会ってきたが、しっくりこなかった。高校生から新しい発想、アイデアをぜひ教えてもらいたい」と語った。

 「高校生のリバースメンターに予算を必ずつけます。今、500万円ほど予算をつけようと動いています。皆さんの意見を事業化までし、県でできないことは私の人脈をフルに使って大臣へ一緒に提言しに行きましょう!」と力強く話した。


高校生が訴えたいこと

 集まったメンバーの声は多様だ。これまで全国の高校2500校の校則を集めたので、それを基に学校内で民主主義を作る条例を提言したい。誰もが使いやすいジェンダーレストイレの普及を訴えたい。他にも、eスポーツで世代を超えたコミュニティー作りをしたい、サイクルツーリズムで観光活性化したい、子宮頸(けい)がんワクチンの接種を普及させたい、外国人の人が医療を受けやすくするため医療通訳を広めたい、生徒会改革や連携をしたい、群馬県の環境保全のため認知・駆除・教育の観点から特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」を撲滅したい、学ぶことを楽しめる教育を普及させ、勉強が嫌いな子供を減らしたい。

 高校生のアイデアを聞いた知事が「すぐに担当課の職員と話してほしい」と具体的な指示を出し、高校生からは「知事が出演するYouTube番組の再生回数が少なすぎる」と率直な指摘が出る場面もあった。終了後には、より気楽に連絡ができるように、知事と高校生がLINE(ライン)を交換した。

今後につながる成功体験

 「今まで学校の中では限界を感じていたが、リバースメンターでは知事に直接話せるから、もっと活動を広げられると思った」とある高校生は目を輝かせながら感想を話してくれた。校則を変えられない、学校の先生に話しても無駄だ。日々、無力感を覚えているからこそ、こうして行政と連携し、知事と公的につながることで、社会を変える成功体験をしてほしい。達成感が自信となり、社会を変える行動に今後つながるだろう。さらに、それを見た他の子どもたちが、「私もできるかもしれない」と感じて実践の輪が広がることを期待している。

 リバースメンターはまず、今年11月に知事に提言し、来年3月まで活動を続けてもらう予定だ。全体での政策提言ブラッシュアップ会に加え、専門家や県の担当職員の方と意見を交換する機会を設ける。本年度いっぱいの活動をぜひ楽しみにしていてもらいたい。この連載で書いてきた、海外の若者が政治参加しやすい仕組みや社会を変える姿。その光景は感動的だった。日本で挑戦できることをうれしく思う。こどもが声を上げ、人々が耳を傾ける世の中に変えていきたい。

 当日の模様は、YouTubeたかまつななチャンネルからご覧いただけます。



 

☆たかまつなな 「笑下村塾」代表、時事YouTuber。1993年、神奈川県横浜市生まれ。大学時代に「お嬢様芸人」としてデビュー。2016年に若者と政治をつなげる会社「笑下村塾」を設立、出張授業「笑える!政治教育ショー」「笑って学ぶSDGs」を全国の学校や企業、自治体に届ける。著書に『政治の絵本』(弘文堂)『お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs』(くもん出版)がある。


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