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  • 執筆者の写真笑下村塾

“本能で生きたい!” 藤原史織さんに聞く、「ブルゾンちえみ」卒業の真意


ブルゾンちえみという芸名で一世を風靡した藤原史織さん。「本能で、生きてる?」「新しいガム、食べたくない?」など上から目線のキャリアウーマンのキャラクターが印象的で、「35億」というフレーズは2017年の流行語大賞トップ10にまでノミネートされました。そんな彼女はレギュラー番組もあったなか、2020年3月に所属事務所のワタナベエンターテインメントを円満退社し、 ブルゾンちえみを卒業し、本名の藤原史織として活動していくことを発表。卒業の理由に関して様々な憶測が飛び交いましたが、“お金のために「ブルゾンちえみ」で在り続けることに疑問を抱いた”ことがきっかけだったそうです。

イタリア留学を目指すも、現在は新型コロナウイルスの影響で渡航ができず自宅で勉強や読書をしていると伺い、今回はたかまつななが卒業の背景や真意についてお伺いしました。


「ブルゾンちえみ」を超える名前がないので、本名「藤原史織」に。




―本日のゲストは藤原史織さんです。

藤原史織です。どうも。誰?って感じですよね。(笑) 私自身もちょっと慣れてないもですが、ブルゾンちえみの名前に超える名前が見つからないのでとりあえず仮で本名の藤原史織です。


―今日はなんでブルゾンちえみを“卒業”されたのかとか、今後の生き方というか、なぜこんな人気絶頂の中そういう選択を取られたのかなということをお伺いしたいなと思っています。


やりたいことが見つからず大学を中退、無気力状態で体調を崩したことも


―そもそもどうして芸人になったんですか?


元々子どものころからお笑いは好きだったんですよ。岡山にいるときも劇場に見に行ったりしてたんですが、実際自分がやるとは思ってなったです。大学のときは本当にやりたいことが見つからなくてもがいた時期もありました。 ―受験勉を強頑張った後、目標を失っちゃったみたいな?


そうですね。教育学部に行ったんですけど、周りのみんなは自分の夢に向かって活き活きしていて、私も在学中にそういう一生懸命になれるものが欲しいなと思っていて探し始めたんです。 でもなかなか見つからず、次第に気分も滅入ってっちゃって、鬱っぽくなったんですよね。それから大学を3年生の夏で辞めて、岡山に戻ったんです。でも何かをやりたくて大学を辞めたわけじゃなかったので、無気力状態になってしまい...それを脱するために、1ミリでもやりたいっていう気持ちが起きたものに関してはやってみることにしました。


―すごいですね。


やりたいことはなんでも挑戦!演技や歌・踊りを経験




目標がないっていうことが自分にとってはかなり精神的にまいることだっていうのが分かって、なんでもいいから目標を探したんです。そこでまず、岡山の劇団に入りました。劇団に入ってみて楽しかったんですけど、これを生業にしていくぞっていうまでのモチベーションにまではなれなくて。次は歌とダンスを始めることになり、大阪のスクールに行きました。そこで仲良くなった子といっしょに、急遽私もオーディションを受けに行ったんです。その時、スクールの人に、「あなたは歌手じゃなくて、タレントとか、バラエティのほうじゃない??」と言われました。

―バラエティ向いているって、見抜く力ありますね。

そこから養成所のタレントコースに行き、たまたま「お笑いライブの手伝いとかしてみないか」と誘われたんです。実際に行ってみると、私の思ってた芸人さんイメージと、リアルな芸人さんが違ったんですね。


“勝ち筋が明白”な芸人の道へ


―どんなふうに違ったんですか?


ネタ合わせだったり、反省会をしていたりだとか、こんな裏で努力してるんだと驚いたし、かっこいいなと思いました。それにお笑いって、結果がすごく分かりやすい。“ウケたウケない”、“良かった良くなかった”がステージに立てばお客さんの反応から伝わります。性格的にコツコツネタを作る方が得意だったし、“このショーレースに勝てばいい”みたいな売れるための道筋が明白だから、自分に合っていると思ったのが芸人になったきっかけですね。 それに、かっこいいと思った芸人さんと同等に仲間になりたいと思ったんですよね。だから、ネタを作って事務所ライブとか出られるようになったときが一番幸せだったかもしれません。


「ブルゾンちえみ」は私の“好き”の集合体




―ブルゾンちえみというあのキャラクターはどうやってできたんですか?


だんだん寄り添っていったというか、好きなものがだんだん集結していったんです。メイクはプライベートでしてるメイクと同じだし、音楽も海外の男をはべらせながらやっているミュージックビデオとかが好きで。 ネタは、“上から目線で言ってる人って鬱陶しくて笑っちゃうよな”と思っていて、そういうネタが多かったんです。女医さんとか、天才なんたらみたいな感じ。そういうキャラが集まってたどり着いたのが「ブルゾンちえみ」です。ブルゾンちえみとしてあのネタが評価されたときは、私の好きなことを無理せずやっていただけなので、嬉しいなと思いました。


―最初見たとき時代は変わったと思いました。女芸人といえばブサイクで売る、森三中さんとかが築いてくださった女芸人の像から、渡辺直美さんとかありのままの自分を受け入れるっていう女性像に発展。そこからさらに、男二人連れているっていう、力強い女性像にまでなりました。女性の社会進出もありますが、こういう芸人を世間が面白いと思うって、時代がすごく変わったなと思います。


時代が味方してくれた感じはありますね。それから、あの言葉に本当に励まされたっていう言葉もあったので、驚きましたし、嬉しかったです。


“著名人の名言集め”が生かされた、ブルゾンちえみの名言集




―「35億」「探さない、待つの」など“ブルゾンちえみの名言”がすごく印象的だったのですが、あればどうやって生まれたんですか?


名言を集めるのがとにかく好きだったんですよ。ココ・シャネルさん、矢沢永吉さんとか、桃井かおりさんとか、かっこいい人たちが言ったことなどを。


―芸人の脳とはやっぱり違いますね。


かっこいい名言って、そう来たか!みたいなことって多いじゃないですか。それが面白いし、みんなに分かってもらいたくてネタをやっていました。藤原史織の本心とは違いますが、演じていてスカッとしていましたね。


TVのトークでは、あえてキャラ作りはしない




―あのキャラクターで売れてから、テレビ出るってどういう感じだったんですか?


私は早々に素のほうにしました。テレビは通常トークで笑いをとるのが大事ですが、上から目線のキャラを演じ続けるのには限界があると思いました。キャラクターのまま通常トークをするのも得意じゃなかったし、そもそも望んでもいませんでした。上から目線の女っていうふうに思われ続けるのもちょっとしんどいなって思いましたし。


―それ自分で決めたんですか?すごいですね。


自分で決めたっていうか多分、そうするしかなかったですね。


―でも芸人はみんな悩むじゃないですか。最初にブレイクしたキャラクターでテレビ出続けなければいけない。“衣装いつ脱ぐのか”が課題だと先輩芸人さんからも聞いてたので。


“ブルゾンちえみ”で在り続ける「しんどさ」


たしかに“ブルゾンちえみ”をやらないのもしんどかったですね。芸人のくせに面白いことを言わねーのかよっていう空気を感じたり、MCさんにも申し訳ないと思ってた。本当に私のトークのスキル不足を感じました。ただ、だからと言って面白いコメントを言うためのスキルを上げるために頑張りたいとも思えないという自分の気持ちに気付いたんです。さらに、自分ってテレビに向いてないっていうか、気持ちがそこまでないのかもしれないって思っちゃいました。テレビの仕事は色々なことが経験してとても楽しかったですが、自分は何のためにテレビを頑張っているのか分からなくなり、大学のときのフラッシュバックじゃないですけど、“頑張りたい気持ちがないのは危ういぞ”と感じたんです。


―それで辞める人多いですよね。すでにすごい芸人さんはいっぱいいて自分のポジションないし、キャラ作りのために嘘をつくってどうなんだろうなって悩んだり。


単独ライブで気づいた「お金のための仕事」の限界




でもあるときサンドウィッチマンの伊達さんの勧めで単独ライブやったら、本当に確かに楽しかったんです。またテレビで面白くないこと言うたぞとか、自己否定していただったので、自分のやりたいことをやって、お客さんに笑ってもらえるとめちゃめちゃ自分に自信が持てたし、自分を肯定できたんですね。 この時間ってめっちゃ大切だと思って、もっと頑張りたいと思ったんです。だからお金を稼ぐためだけにテレビに出ること、極端な言い方すると、魂売ってじゃないですけど、本当に思ってもないことを言ってお金をもらうことをやめようって思ったんですよね。もっとお金を効率よく稼いで、自分が好きだと思えることにたくさんの時間を使おうって思ったんですよね。


「大人=妥協する生き物」になりたくない。「好きなことで生きていく挑戦」のための卒業


でもテレビを一旦卒業するって思ったときに、相談した人に、もっとうまいやり方があるから、大人になりなよって言われたんです。そのとき思ったんです。大人ってなんですか? 大人は、妥協できるっていうことですか。大人=妥協する生き物っていうことですか?って。そんな大人になるのは楽しくないし、子供たちが大人になるの楽しみっていうような大人になるべきじゃない?と思いました。大人は我慢しなきゃいけないなんて違う。もちろん我慢は必要ですし、秩序を守るとか必要なことですけど、何のために働くの?と思って。だから楽しいことをやって、お金を稼いで生きていく挑戦です。私が成功すればみんな楽しいことをやるという選択をする勇気が出るかもしれない。


自分自身が「本能で生きていない」




ブルゾンちえみは「みんなー、本能で生きてるー?」って聞くので、「生きてるー」と返しが来るんですけど、じゃあ自分は? 本当に本能で生きてるの? っていう、もう一人のあのブルゾンちえみのキャリアウーマンが、私に藤原史織にも、じゃああんた本能で生きてんの?と聞いてくるいうもう一人の自分がいて。


バランスよく全てをこなすことはできない


―かっこいいです、本当に。インスタグラムのフォロワーだって200万人以上いて、テレビも素で出ることに成功していて、レギュラー番組もあるほど成功していて...。そんななかで事務所をやめて独立するのは、ものすごい勇気だなと。


なんでしょうね、それは本当に私がうまくできない不器用さもあるんです。昔から何かをちょっとずつ程よく、60%ぐらいでなんとなくできるっていうタイプじゃなくて、これをやるってなったら本当に他を捨てなきゃできないタイプだったんです。


―お金の収入だってほぼゼロになるわけじゃないですか。事務所と離れて一人でやるって、怖くないんですか?


もちろんお金の心配もあります。蓄えだって多分皆さんが想像しているほどないです。


留学先にイタリアを選んだ理由はフワッとしてます




―次にやりたいことが明確にあったんですか?


昔から海外には住んでみたいっていう夢があったし、旅をして世界のいろんなところに行って経験してるって人がめちゃくちゃうらやましかったんです。私もそういうことがしたいって思ってたんで、ずイタリアに留学してみようと思ったんですよね。


―イタリアを選んだ理由はなんですか?


2年前ぐらいにプライベートで一人旅でイタリアに旅行行ってみたんです。そのときに、もう私はここに住む。観光じゃなくて住みたいって強く思った。一目惚れに近いです。


―結構フワッとしてるんですね。


はい、実は私結構フワッとしてるの。


「女優がやりたくて事務所と揉めた」は大間違い


―藤原さんの報道で見たんですけど、“女優をやりたいのに事務所と意見が合わなかったのが辞める理由”、というのは事実なんですか?


ネットは本当に適当なこと書きますね。信じている人もたくさんいるんだろうな。


―絶対違うだろうなとは思いました。


何々がやりたかったのにできなくてけんか別れしましたってことじゃなくて、本当に自分の中ではここまでやってくださった事務所には本当に感謝してますし、他にもいろんなスタッフさんとかと二人三脚で走ってきて、私の中でゴールテープを切ったっていう感覚です。何かができなくて不満があったから辞めてやりましたっていうことじゃ全くないです。キャラクターとしてそういうふうに見られる面もあったりするのかなとも思ったりもするんですけど、分かってくれる人に分かってもらえればいいやと思いながら。


「干されるリスク」よりも、「自由になりたい」を優先




―大手事務所と円満に退社されるっていうのはこのご時世においてはすごいと思います。”干される”という可能性だってあったと思います。時代も味方してくれたのかもしれないですね、事務所が干すみたいなことに対して世間も社会も法律も変わってきたり。


世間が厳しい目で見てますからね。


―とは言いつつ、それの心配はなかったんですか? 私も以前所属していたサンミュージックを辞めるときに、とても円満に辞められたんですけど、それでもメディア側からの忖度はすごいあって、使っちゃいけないんじゃないかとか、一回サンミュージックにお伺いを立てましょうみたいなのとか、使っていいか不明だからと何年も出られなかった局とかもあったりして......。それが心配で辞められない人いっぱいいると思うんですよね。


そういうリスクがあるかもしれないけれども、その心配にも勝って自由になりたいっていうことのほうが大きかったんですよね。行きたいところに思った瞬間に行けるとか、やりたいと思った瞬間にやれるとか、一旦身の回りをコンパクトにしたかったんですよね。


―本能で生きてますね。


本能で生きたいんですよね。心の思ってることとやってることっていうのがちぐはぐになったとき、人間ってすごい苦しいっていうか、できるだけそこを合わせていきたいなと思う。


一つの肩書きにとらわれない生き方




―最近はそういうやりたいことをやる先輩芸人さんも増えてきて、かっこいいなと思います。ピースさんは綾部さんがNYに留学に行き、又吉さんは本を出版。ウーマンラッシュアワーの村本さんとかもNYでスタンドアップコメディやられたりとか、キングコングの西野さんも常に新しいことやっていて、すごいあの世代の人たちかっこいいですよね。


私は新しいことをやるっていうことに対して賛成派。もちろん一つのことをやり続ける美学っていうのももちろんあるけれども、転職をすることとか、複数のことを掛け持ちするスタイルって、私はいいと思います。これからの時代はもっとグローバルにもなるだろうし、何をやっている人ですかって肩書を聞く時代とかがなくなっていくんじゃないかなと・私自身はあんまり肩書を1つに決められるのが苦手で...。1つの肩書きを言っちゃうとそれしかやらないような感じがしちゃって。


―芸人のくせにとか、ジャーナリストのくせにとか、肩書きで判断されるのはいやですよね。


はい、もっとそういうフレキシブルな時代になっていくと思うし、なってほしいなと思いますね。


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