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  • 執筆者の写真笑下村塾

若者の投票率が8割を超えるスウェーデン 小学校の驚くべき授業とは?

※共同通信配信の有料メディア向けコラムから転載(2023年08月07日配信)


小学生が政党のイデオロギーを語る

 「一番左派の政党はどこでしょう?イデオロギーが真ん中の政党は?」

 昨年9月に取材したスウェーデンの小学6年生の授業風景。政党の名前がばんばん飛び交っている。日本では、あまり見慣れない光景だ。

 「イデオロギーとは何だと思いますか?」先生が投げかけると、「いい社会についての考え方です」と答える生徒。イデオロギーとは、社会がどうあるべきなのかという思想の集まりであり、そして、政党綱領というものがあって、そもそもの価値観やスウェーデン社会に何を望むのか、どう活動するのかが書かれている。それを元に党員が集まる会合や党大会でどの問題に対して取り組むかを決めていると学びが進んでいく。

 財源の話まで授業では考えさせていた。目指す社会のために資金調達をどうするか国会議員は議論していると話す先生。「お金を何に、いくら使うか話していると思います」という生徒に対し、「お金をどこから得るか」も重要だと先生は言う。

 「国会議員は『医療を無償化してほしい』とか、『では、資金源はどうしますか?』といったことを話します。それから『税金を上げましょう』『他国への援助をやめましょう』、あるいは『教育費を自己負担にして、医療に回しましょう』といった話になるかもしれません。政策を実現するためには、どのように支払うか、お金をどのように得るかという問題が重要なのです」

 「ここにスウェーデンが使えるお金のつぼがあるとします。何かのためにお金を使うためには、他の何かからお金を持ってくると決めなければなりません」

 このように政党のイデオロギーやお金の使い道の違いがどのようにあるのか生徒たちは考える。教科書には、それぞれの政党がマッピングされていた。これには、GAL/TAN軸という従来の政治の「右左」に代わる軸が使われている。GALは、Green、Alternative、Libertarianの頭文字で個人の自由や多様性、環境、TANはTraditional、Authoritarian、Nationalistの頭文字で伝統的な価値観や国家主義をそれぞれ重視している。

 この日は、選挙についても取り上げていた。選挙権を持つ人の条件を確認したり、実際の投票方法を伝えたり。さらに最近の開票結果も示した。参政権の具体的なイメージを持たせることで、小学生にも「自分のこと」として実感させるのが狙いだ。


日本でも「できること」はあるはず!

 ちなみに日本では、総務省と文科省が主権者教育の副教材として『私たちが拓く 日本の未来』を出している。例えば、選挙前に政党比較表を自分たちで調べて作成するという課題が設定されている。だが、そこから先は現場任せ。そもそもの政党の記述があるわけではなく、選挙前に公約を読んで調べるという作りになっている。新聞の政策比較表などはあるが、それをこどもたち自身が作るのは相当難しい作業になる。すべての政党について大量の公約を読み込み、争点ごとに該当箇所を探してまとめあげるのは、大人でも難しくかなりの時間がかかるだろう。

 選挙の際に国が政党の政策比較表を学校やこどもたち向けに出せないか総務省の方に聞いたことがある。「どの政党が一番上に来るかなどで、先生方(国会議員)でもめるだろうし、多分できない」との答えだった。

 実際、日本では同じ政党でも考え方に幅があることが多いため、右か左かなどのマッピングが簡単にできないかもしれない。学校で使いやすい教材を超党派でつくって教科書に記載する。メディアが学校での利用を想定して作るのも一案だ。私たちの会社、笑下村塾も政党の違いや、政党を解説する動画をYouTubeで作成しているのでご覧いただきたい。

 スウェーデンと比較して、教育現場での政治的中立性が厳しく求められている日本でも、工夫できることはたくさんあるはずだ。


学校内民主主義が育てる政治意識

 選挙に行く大切さをどのように伝えているか先生に聞いた。

 「私たちは、小さい頃からすでに始めています。この学校にはクラス委員会や生徒会があり、そこで投票できます。中学校にあがると、通常、学校選挙(skolval)があり、生徒たちが政党に投票したり、討論したりします。そのような活動を通じて民主主義は重要だと常に感じるようになるのです。教室で何をするか、どのように行うかといった決定に参加できるよう、私たちは常に取り組んでいます」

 学校内民主主義が浸透しており、自分たちが選んだ代表者を通じて学校のことを決めるという経験を重ねていく。例えば、スウェーデンでは、校庭に遊具を設置する場合、実際に使う子どもたちに予算を示し、どんな遊具が良いかを聞いて決めることがよく行われている。その他、学校給食についてのルールを決める仕組みもある。

 日本の若者の投票率は3割程度。スウェーデンは8割を超える。だが、そんな中でも課題があると先生は言う。

 「政治への興味がますますなくなってきています。彼らは他に関心を持つものがあり、政党の活動は二の次三の次なのです。政治的な意識は高くても、政党には参画しません」

 政治について自分の意見を持ったり議論をしたりしても、それを実現するために、どこかの政党の党員になることが少ないことを問題視しているようだ。日本の若者の政治参加とは話している次元が違いすぎて驚いてしまった。


☆たかまつなな 「笑下村塾」代表、時事YouTuber。1993年、神奈川県横浜市生まれ。大学時代に「お嬢様芸人」としてデビュー。2016年に若者と政治をつなげる会社「笑下村塾」を設立、出張授業「笑える!政治教育ショー」「笑って学ぶSDGs」を全国の学校や企業、自治体に届ける。著書に『政治の絵本』(弘文堂)『お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs』(くもん出版)がある。

 ※記事に出てくる名前・年齢・肩書は、取材当時2022年9月時点のものです。



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