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  • 執筆者の写真笑下村塾

子どもを信頼して社会を変えよう 「こども基本法」施行、どうすべきか(続編)

※共同通信配信の有料メディア向けコラムから転載(2023年4月17日配信)


「こども基本法」がこの4月に施行された。子ども政策を決める際に、子どもの声を聞くことが各自治体に義務付けられた。この法律を生かして社会をよい方向に変えていきたい。私たちはどうすればよいのか。前回に続いて考えたい。


 子どもには、意見表明する権利がある。これは、日本が1994年に批准した「子どもの権利条約」で決められている。そしてこの条約に対応する国内法として「こども基本法」がようやくできた。子どもの声をどうやって聞いて、政策に反映するかは現在、「こども家庭庁」を中心に検討されている。

 子どもの声を聞くとは一体どういうことなのか、海外と比較しながら考えたい。私は、社会にどう参画するかを教える「主権者教育」を専門にしており、全国の子どもたちに出張授業をしている。昨年、欧州に主権者教育の取材に行った。

 多くの国で子どもや若者に意見を聞くことが日常的に行われており、その声に基づいて実際に学校や社会が変わっていくところに驚いた。

 スウェーデンの中学校で取材した時に子どもたちから聞いた話だ。「小さい頃から意見を聞いてもらえたから、自分の意見は大事だと思える。だから(選挙権のある年齢になったら)選挙に行って意見を表明しようと思う」「給食の食品ロスを減らしてほしいと学校側に訴えて、改善されたんです。自分の意見を伝え、変化した経験があるから、社会を変えられると思います」

 給食のルールやトイレの使い方を子どもたちで話し、改善したいことがあったら、それを校長と交渉している。その結果、実際にルールが変わることがある。小さな成功体験を積み重ねているのだ。だから、子どもから大人まで社会参画も盛んなのだと思う。


生徒組織に権限委譲

 日本では、主権者教育は高校の「公共」という科目で扱うが、高校からでは遅いことに気がついた。

 スウェーデンに住む日本人に聞くと、子育てで大きな戸惑いがあったと話してくれた。最初スウェーデンの保育園で、自分の子どもが先生に「誰と遊びたいの?何をしたいの?」と聞かれて、答えられなくて困った。日本では「みんなで仲良く遊びましょう」と教わるから、このままではダメだと子育ての方針を大きく変え、家庭でも子どもに常に意見を聞くようにしたという。

 スウェーデンでは、生徒会とは別の組織の、完全に学校から独立し、生徒主体で運営する「生徒組合」がある。私が取材した高校では、年間2千万円ほどの運営予算があり、学校側に教材の変更を交渉したり、教師の差別的発言に対して問題提起したりするなどしていた。

 日本に比べヨーロッパの学校では、子どもたちに学校の運営やお金の使い道の決定権などさまざまな権利を委譲しているが、そこには「信頼」が大きくあるのだと気づいた。どの国でも、圧倒的に子どもを信頼していることに驚いた。小さい頃から、自分たちで決めることを大人が尊重している様子に感動した。


忖度ではない生徒会を

 子どもに任せると失敗する可能性も高いかもしれない。しかし、それをどう受け止めるか、日本とは考え方がかなり違うようだった。

 スウェーデンの小学校に行くと、校庭には、転んだら危ないなと思うようなでこぼこな岩があったりしたが、それはわざとそうしているという。けがをしたり、遊んでみて危ないと思ったりして、はじめて自分の身を守ることができるという考えだそうだ。

 日本では、子どもは、危険なことを避けて「守るべきもの」とされ、自分で決めたり、話したりする機会を大人たちが奪い、強制的に管理しようとしていると思う。

 そうではなく、海外には失敗も成長の糧に必要と見守る大人たちの姿がある。信頼関係によって民主主義を子どもたちが学ぶ場があるのだと知った。

 日本にも、生徒会や自治体が主催する若者議会などさまざまな形で、子どもが意見表明したり、自分達で意思決定できたりする場がある。ところが、そのほとんどは大人がオーガナイズしており、子どもたちの主体性を奪っている例も多いのではないか。

 「生徒会は先生の意向を忖度(そんたく)する子がなる」と子どもに言われた時には驚いてしまった。忖度なんてものではなく、自分達自身でより過ごしやすい場所を作るために、考えて決めていくという実践の場が必要だ。子どもの意見表明をどのような形で担保するのか日本社会で議論し、子どもを信頼して社会を変えていきたい。(たかまつなな、隔週月曜更新)


 ☆たかまつなな 「笑下村塾」代表、時事YouTuber。1993年、神奈川県横浜市生まれ。大学時代に「お嬢様芸人」としてデビュー。2016年に若者と政治をつなげる会社「笑下村塾」を設立、出張授業「笑える!政治教育ショー」「笑って学ぶSDGs」を全国の学校や企業、自治体に届ける。著書に『政治の絵本』(弘文堂)『お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs』(くもん出版)がある。


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