自民党総裁選挙への立候補の意向を表明している衆議院議員、野田聖子さん。総理大臣になったら?解散総選挙は?政治とカネの問題への対応は?YouTube「たかまつななのSocial Action!」で話を聞きました。(取材:たかまつなな/笑下村塾)
※取材は2024年9月6日に実施しました。
「人口急減」を直視する総理大臣に
ーー総裁選への立候補の意向を表明されました。まずはその理由についてお聞かせください。
野田:私、(立候補が)4回目なんですね。政策を訴えていくことの一つの大きな道が総裁選への取り組みかなと思っているので、自分たち、仲間たちが伝えたいことを伝える役割を果たしていこうと思って頑張ってます。今回はたくさん手を挙げているので、推薦人の分配が大変そうですね。
ーー20人の推薦人の確保まであと少しという感じでしょうか?
野田:いつもあと少しなんですよ。20の壁は何回か経験したんですけど、そのときの風の流れみたいなのもあって、みんなが苦労してたどり着く絶妙な数字だなと思っています。
ーー野田さんが総理大臣になったら何を実現したいですか。
野田:まずは、不都合な真実。日本に住むみんなが徐々に不安を増している原因をしっかりと伝えます。それは「人口減少」です。むしろ「人口急減」です。毎年100万人ぐらいの、これからの担い手が産まれてこない。そこが全ての問題の元だと分かち合いたい。
政治はこれまで有権者に好かれたいというので、嫌なことは極力言わないで隠してきたんですね。実際のところ、いろんなことをやろうとしても人材がいない、数がない、質が足りない。そんな時代を迎えていることから、この国を見つめ直そうと。
私は少子化対策を一生懸命やってきて20年、30年になるんですけど、若い頃は少子化を止めて増やそうと思っていたけど、あまりの無関心で政策が行き届かなくて、もう人口減少を止めることもできない。少子化対策もできない。「さて、何をするか」という政治をやっていきたいです。
働く女性が正当なポジションにいない
ーー例えば小泉進次郎さんは、人口が減っていくことを受け入れることが必要だと主張していましたが、野田さんはどうお考えですか?
野田:(人口が減ることを)受け入れることは大前提で、今までこうすれば良くなるんじゃないかと積み重ねてきたものをいったん否定すること。例えば、最近話題になっている移住婚。ミスリードもあるんですけど、東京の女性が地方で結婚すると60万円もらえると。そういう取って付けたような地方創生とか過疎対策をやり過ぎていて、本質は、(人口が)減るからこれをやめよう、これは残そうという決断をする時代が来ているということを促していかなければいけない。
例えば、ふるさと納税はとてもいいんですよ。でも、本来は国から税金をもらっていない大都市の人たちが、育てられた地方に恩返しで寄付をするという制度だったのが、今や国からの補助なしで生きていけない地方同士の食い合いになっている。減らすところは減らしていかなきゃいけない。
結婚の在り方も、今までは結婚してから子どもを産むという国じゃないですか。そんなことをしてたら子どもは産まれなくて、実際に単身の世帯が増える中、1人でも親になれるとか、今の常識を乗り越えられる考え方を認めていかなきゃいけないと思います。
ーー人口減少は複合的な問題だと思いますが、特に柱となりそうな解決策はありますか。
野田:ないです。ただ、人口減少、IT、AIがあるじゃないか、外国人がいるじゃないかという発想で止まっていたら、何もできなくなる。例えば女性を戦力として使えるかどうかの決断なんですね。これまで女性活躍とか女性を輝かせたいとか、男性的視点からの発言があったけど、女性がきちんと社会の一員として役に立つことを数字で出していただきたいと。
例えば、子どもを妊娠する特性があることに対して働き方を変えること。今は妊娠しない、出産しない、授乳しない人が基準になっているから、どうしてもこの特性はマイナスになってしまって、全ての賃金の格差につながっています。だからそれをなくすとか、本当の意味で戦力になる働き方を作っていくとかしなきゃいけないと思います。目の前にこれだけの女性が働くようになっているけれども、正当なポジションにいないことは大きな問題なので意識改革をしなければならないです。
岸田政権の功罪とは?
ーー岸田政権については、どう評価していますか?課題があったとすればどんなことでしょうか。
野田:岸田政権でかなり進んだのは「防衛」。安倍さんはすごく熱心だったけど、岸田さんは安倍さんが超えられなかったハードル、増税をした。嫌がられても国防をしっかりしていくというのはすさまじいことだったと思うし、あと、子ども支援金、今まで子どもの政策は「こういうことをやったらいいよね」というお花畑のディスカッションばかりだったけど、どこからお金を出していくかという、ある意味えぐい現実を、支持率を落としながらも見せつけてくれたという胆力は感じます。日韓の問題にしても、そっぽを向きあっていた数年前に比べて、シャトル外交ができるようになったことは評価しなきゃいけない。
ーー逆に、課題に感じるところはどこですか?
野田:子どもについてのコミットメントは出てきたんだけど、少子化というのは子育てじゃないんです。国の力がなくなることです。そこに抜本的に大胆に踏み込めなかったと思います。もう少し結婚とか、若い男女の性教育の問題とか、そういう連なりをえぐってほしかったと思います。でもそれは私たちがやればいいことです。
ーーぜひ、やっていただきたいです。外交とか防衛ももちろん大事ですが、教育とか子育てをしっかりできないと、内側から国がつぶれていってしまうので。性教育についても自民党の議員さんから話題に上がることがほとんどないので野田さんに期待しています。
野田:女性の側からすると性被害ということになるけれども、男性がしっかり学んでないと犯罪者になってしまう。そういう意味で男性をも守る。ジェンダーというと対立になっちゃうけど、そうではなくて、お互いを守り合う大事な教育であると。
すぐに解散総選挙を 公認の条件とは?
ーー自民党の信頼回復について伺いたいです。8月のNHKの世論調査だと、自民党の支持率は29.9%、内閣不支持率は55%という結果です。国民からの信頼をどう回復していきますか。
野田:自民党は私の知る限り、政治とカネの問題で30年揺れ動いてきて、野党になることもあったし、また立ち直ってここのところ与党も長かったので、少し甘えが来ているのかなと。今回は不記載の問題で、うそが常態化していたということなので、当事者はしっかりと反省してもらい、どこかでジャッジしてもらわなきゃいけないと思います。解散総選挙、私も含めてすぐにやるべきだと思っているんですが、私の場合は、そういう調査対象の人、不記載をした人は、しっかりと国民がリーチできる政治倫理審査会に出席することが公認の絶対条件。要は、一筆書いてもらって、政治倫理審査会に出ますと。逆に言うとそれができないんだったら公認はできないと思います。それで、しっかりと自分の選挙区で戦ってもらう。小選挙区は自分の選挙区だから、そこの有権者の皆さんの信任を得たら、また職場に戻って頑張ってもらいたい。原則、重複立候補はなしという気持ちでいます。
私、候補者十何人いる中で、党から処分を受けた過去がある一人なんです。とても厳しかったです。でも、厳しくても立ち向かって、党は関係ない、推薦団体は関係ない中、地元の有権者と一対一での選挙をやらせてもらった結果、バイアスのかからない政治ができるようになってきた。特に弱いと言われる人たちとの出会いが私の政治活動を支えてきたので、追い込まれている人たちの力を取り戻すことが日本の最善の策だと思っていて、自分の経験を踏まえてしっかりと審判を受ける。おまけなしの選挙だと思います。
ーーちなみに、政倫審に出席しない人は公認から外されるということですが、もしその人が自力で選挙に勝ったら、その次の次の選挙では公認を出すということですか。
野田:自民党より大事なのは国民の声ですから。自民党の総裁選挙ってたった110万党員ですよ。国民は1億2000万いて、半分ぐらい有権者でしょ。自民党を支持していない人からも「野田聖子」と言われたら、それは党としても国民が認めたということで、敬意を払わないといけないと思います。
小選挙区から新中選挙区へ
ーー今の自民党に足りないものは何でしょうか。それをどう変えていこうとお考えですか?
野田:小選挙区になったことで、どうしても党の公認、派閥の調整、ポストの調整とかが生まれるので、党にも頼らない、派閥の力にも頼らない、国民の国会議員だという自立を学ぶチャンスが少なかったのかなと。私たちの場合は中選挙区だったから、「俺は自民党が嫌いだ、どうのこうの」って言っても、「野田聖子好きだ」っていう、本当に後援会という信頼関係が成り立った、党派を超えた人たちの応援があったので、ある意味バランスが取れたと思っています。今は自民党ということに限定されちゃうので、多様な意見が聞きづらいかなと心配しています。
ーーそれは、選挙制度改革をしなきゃいけないということですか。
野田:したいです。新中選挙区で、できれば連記制で2人名前を書くという形で多様な投票にしてもらうと、女性とか様々な人たちを選択できるんじゃないかと。かつて戦後は連記制だったんです。そのときに女性がたくさん議席を取れたのは、最初、男を書くけど、もう1票書けるなら、じゃあそれ以外という選択肢が生まれるので、結果的に構成員にバリエーションが出てくる。
ーー有権者が2人書けるということですか。
野田:そう。加えて、中選挙区で、この党はこれだけみたいに狭めない。党の中でも自由競争、切磋琢磨があっていいと思う。
ーー以前、石破茂さんに取材したとき、同じような問題意識を持っていました。しかし、中選挙区だと政治と金の問題がひどくて、そこはましになったんじゃないかと言っていました。そこはどうですか?
野田:中選挙区から小選挙区に変えるにあたって、私には2つの思いがあります。中選挙区はとてつもなくお金がかかるんですよ。お葬式なら花を出せ、あれをしろ、これをしろ、とサービス合戦で、当時は政治に対するお金の規制が甘かったから、お金を持っている人のほうがたくさんお花や弔電を出せたりして有利だったからそれは良くない、やめたい。
もう1つは、私は女性だったので、中選挙区だとやっぱり女性は脇役。男性、男性、男性、女性で自民党で選ばれても、地域に関する仕事は男性たちが取ってしまって、女性の出る幕があまりないという不平等な扱いを受けるわけです。だから、小選挙区だと男女関係なく一国一城の主になるんで、きちんと政治の仕事に関われる。それは正しい。ただ、最初の一歩で、女性の候補者がほとんどいなかった。だから、男の人がずっと勝ち続けてきて、代替わりも基本男の人が続いているというのが自民党の弱みだと思います。
マイノリティーをマジョリティーに
ーー自民党総裁選、他の候補者と違うところや、争点にしたい部分はどんなところですか?
野田:私は26歳で政治の世界に入ってずっと仕事をやっていて、結婚も遅くて、子どもを産んだのも50歳で、いまは60を超えているけど子どもは中学2年生ということで、たぶん自民党の普通、男が働いて女性は内助の功みたいなのと全く違う、異質な多様性の極にいるのかなと思っています。そういう私たちがど真ん中に来れるような日本にしていく、マイノリティーをマジョリティーにするのが私の仕事だと思っています。
ーー有権者からの期待も大きいと思います。女性、子育て、若者などに関して野田さんが考えている政策があればお願いします。
野田:私が総理になったら閣僚の半分を女性にする。まず、それだけやります。皆さんの思い込み、閣僚は男性の仕事というのを変えたい。女性だってみんなできます。私もやってきたし。女性の自己肯定につながるような仕事をしたいです。
ーー自民党にそれだけ女性の人材はいますか?
野田:民間登用、他党からの応援もありだと思います。
ーーいいですね。それは大きく変わりそうですね。
野田:外にもたくさん優秀な女性がいるし、今、私たちが抱えている困難は自民党だけで解決できないから、広くいろんな女性を仲間に入れたいですね。経済界にも大学卒業してバリバリ活躍している女性、たくさんいますよ。まだ主役にさせてもらっていないだけで。女性活躍担当大臣をやっていると、貴重なリストが手元にあるんです。だから閣僚を半分にするなんて簡単にできます。
18歳に被選挙権を与えたい
ーー私たち、笑下村塾という会社で普段やっているのが「若者の政治参加」なんですけど、日本はこの分野もすごく遅れています。例えばスウェーデンでは、社会に向けて活動している若者の団体には、年間で40億円ほど資金援助があったりします。あとは学校内で自分たちのことを自分たちで決める学校内民主主義、つまり給食や制服のルールを自分たちで決められる。だから社会は変えられるという気持ちを持つことができて、それが地域社会、政治を変えていくことにつながっていると思うんですけど、野田さんはこの分野でやりたいことはありますか?
野田:立候補の年齢を18歳にすることです。それしかないです。特に人口減少って、もう10年、20年先のことだから、そこで生きていく人たちが発言をしないと。自分の人生を背景にやるわけですから。今を生きる人たちに、1日でも早く国会に代議士なり参議院議員として入ってもらうことです。
ーー18歳選挙権が導入された2016年から、各政党の公約に、被選挙権年齢の引き下げを検討するとか、そういう文言が入っているんですけど、なかなか実現できないですよね。
野田:政策って面白くて、賛否がきつくないと進まないんです。消費税とか、子育て支援金の話みたいに議論が生まれないものは、そのまま棚ざらしになっていて・・・。18歳の被選挙権はみんな「いいよね」と言っている程度なので、もっとけんか腰でやらないと。来年には18歳でやるんだと言えばぶうぶう言ってくる人が出てくるだろうから。
ーーぜひプライオリティーを上げていただければと思います。学校内民主主義の法制化もご検討いただきたいです。
野田:こども家庭庁をつくった人なんで。
ーー最後に、視聴者の方にメッセージをお願いします。
野田:誰もが分かる政治、うそのない政治、そして苦労はあっても笑顔になれる政治、それを私は30年ずっとやってきたつもりです。時にはばかにされることがあっても、結果的には、例えば選択的夫婦別姓も大きく進みました。そして「子どもが真ん中」も20年前から言ってたけど、やっと現実になりました。今度は不都合な真実である「人口急減」を若い人たちに正直に申し上げて、今まで積み上げてきたことはほとんど役に立たないよと。そのために18歳の人たちが国会に出てくる。今言うと「うそだろう」と思うけど、私が言っていることはほとんど現実になってるから、1日も早く、若い人たちが国会にいるという状態をつくっていきたい。
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