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  • 執筆者の写真笑下村塾

スウェーデンの若者だけの政党「ユース党」の実態とは?=後編インタビュー

※共同通信配信の有料メディア向けコラムから転載(2023年07月24日配信)


 スウェーデンには、若者しか入れない「ユース党」がある。彼女、彼らの活動が母体となる政党に影響を及ぼし、新たな法律が生まれている。社会経験が少ない一方で世代特有の悩みを持つ人々の声が、政治に反映されやすい仕組みが機能しているのだ。なんと、環境党のユース党の党首は23歳(取材時)。なぜ政治に身を投じ、どんな思いで活動しているのか。昨年の9月スウェーデンの総選挙期間中に現地取材した。前編に続き、「かなり驚かされ、かつ学びたくなる事実」について紹介したい。


次世代の育成機関

 環境党ユース党のレベッカ党首の両親は政治にはあまり関心がない。本格的に「まつりごと」に携わる活動をしているのは、家族で初めてのことだ。なぜ関心を持ったのか。

 「私が政治に関わり始めたのは、15歳の時で、2014年の選挙が終わった後です。気候変動は深刻な問題であり、自分の行動が環境を破壊していると知りました。また男女平等が比較的進むスウェーデンでも、まだ問題が多いことに気づきました。そして人種差別的だと感じた政党が、選挙でこれまでの2倍の票を獲得し、この国を変えなければと思い、環境党のユース党に入りました」

 中央党ユース党のレカ・トルネイ党首は、24歳。入党したのは、17歳の時だ。

 「私の地元は、犯罪率や貧困率が高かったので、現状に不満がありました。誰もが平等に機会を持てる社会にしたいと思い、全ユース党に連絡し、解決策を質問しました。中央党が最も良い答えを持っていたので入りました。半年後にはミーティングに参加し、より積極的に活動し、4年後には党首になりました」

 本格的に動き始めたのはいずれも10代。原動力は社会を変えるためという純粋な動機だ。

 穏健党国際部のユース党員に「ユース党がなくなったら何が困るか?」と質問してみた。

 「デモクラシーは全世代の意見を必要とする。そのため若者の意見を集約する組織が必要。それと次の世代を育てる機能が失われる」

 10代から政治のキャリアを積む場となり、どうすれば社会が変わるかという働きかけを経験できるかけがえのない存在。もしなくなれば、政治家の育成に大きなマイナスとなり、やがては母体の政党に悪影響が及ぶだろう。


楽しいコミュニティー

 社会民主労働党ユース党の事務局長はこう指摘する。

 「若者の政治への参加意識は高いが、SNSでそれらしい発言をすることにとどまり、政党の活動には興味が薄いのがスウェーデンの若者の課題だ」

 「社会問題に対応するにはどうすればいいのか若者に教育し、できることを伝えるのが私たちの役割だ。スウェーデンの政治は変わらないといけない。そのために次の世代が参加する必要がある。だから、魅力を感じるように楽しく発信したり、活動したりすることを重視している」

 堅苦しくなく、数百人が集まって盛り上がるようなイベントも企画する。「レイシズムに反対するためのフットボール大会」を開催すれば、そこで同じ関心を持つ仲間ができる利点もあるという。

 「政治はシリアスな話題を扱うけど肩の力を抜いて活動することを考えている。主催するアクティビティやそこでの友人関係もユース党の良さだ」

 社会に影響を与えることだけではなく、その過程で友達と肩を組んで活動できることを伝えることも重要視している。

 若者の投票率が8割を超えるスウェーデン。「投票率の高さは、ユース党の存在が大きいのではないか」と中央党ユース党の党首はいう。ユース党は、勧誘や選挙の際、公開討論会を企画し実施するため学校を訪問している。

 「学校でも活動するので、知名度に大きく貢献している。学生たちが重視していることに共感してくれる政治家がいるのが分かると、政治を身近に感じると思う。どの政党もTikTokやInstagramなどSNS上の選挙活動に力を入れている。多様な選択肢があるんだよ、君たちの一票も大事なんだよと伝えたい」

 たとえ年下でも、大人たちと対等に話す機会が保障され、時には対立も辞さないで自分たちの政策を推進するユース党。スウェーデンの若者の政治参加を支えている、優れた仕組みだと現地で実感した。

 「若者の声」をどうやって社会で実現させるのか。わたしたちの周辺では、若者のアクティビストが精神的に疲弊して、活動を続けられない、SNSをやめるということが度々ある。象徴的な人頼りの「属人的」な日本に対して、スウェーデンでは「仕組み」があることが素晴らしいと素直に思う。若者の声を聞くだけではなく、政策にまで反映させる。だから、実権を持つ政治家や政党に大きな働きかけをする。会議で若者の席を確保するという取り決めが、当方にもあっていいはずだ。日本の政党の青年局や学生部も、スウェーデンのやり方をぜひ取り入れてほしい。

 「YouTubeたかまつななチャンネル」にインタビュー動画をアップしています。みなさん個性と魅力にあふれた若々しい話しぶりです。ぜひご覧ください。


①環境党



②社民党



③中央党



④穏健党



 ☆たかまつなな 「笑下村塾」代表、時事YouTuber。1993年、神奈川県横浜市生まれ。大学時代に「お嬢様芸人」としてデビュー。2016年に若者と政治をつなげる会社「笑下村塾」を設立、出張授業「笑える!政治教育ショー」「笑って学ぶSDGs」を全国の学校や企業、自治体に届ける。著書に『政治の絵本』(弘文堂)『お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs』(くもん出版)がある。

 ※取材に出てくる名前・年齢・肩書は、取材当時2022年9月時点のものです。


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