高市総理への質問の真意は? 立憲民主党の岡田克也さんに聞いてみた
- 笑下村塾

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台湾有事をめぐる高市早苗総理の国会答弁が引き金となり、日中間の緊張が続いています。その答弁を引き出した立憲民主党の岡田克也さん(元副総理・元外相)にお話を伺いました。あの質問の狙いは、何だったのでしょうか?(取材:たかまつなな/笑下村塾)
※2025年12月2日に収録した内容です。読みやすさを考慮し、編集を加えた部分があります。

「法律に基づいて総合的判断」との答弁求めたが「真逆でびっくりした」
ーー高市総理の答弁が注目されています(注1・2025年11月7日、衆院予算委員会で岡田元外相が、台湾有事について、どういう場合に存立危機事態になると考えているのかと質問したのに対し、高市総理は「戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます」「実際に発生した事態の個別具体的な状況に応じて、政府が全ての情報を総合して判断する。武力攻撃が発生したら、これは存立危機事態にあたる可能性が高い」と答えた)。
存立危機事態の場合は集団的自衛権を行使可能、つまり自衛隊が武力を行使できるということで、非常に重い発言だなと思っていまして。岡田さんがどう思われているのかですとか、台湾有事が起きたら私たちはどうなるのかということをぜひ知りたいと思っております。まず質問の真意といいますか、どういう回答を引き出したかったんですか?
岡田:存立危機事態に関して、10年前に法律ができたんですね(注2・2015年に成立した安全保障関連法。戦後日本の安全保障政策の大転換と言われ、大きな論争になった)。
違憲だという議論も強く、私たちも違憲の疑いが強いと主張しました。法律には、日本が攻撃されていなくても、同盟国ー例えばアメリカーが戦っていたときに日本が武力行使できます、ただし限定的です、と書いてある。限定せずに集団的自衛権の行使をすべきだという議論は、当時も自民党の一部にありました。でも憲法は認めていない、ということになった。つまり日本の存立が脅かされるような事態や、国民の基本的権利が根底から崩される明白なおそれがある場合に限って、日本が攻撃を受けていなくても攻撃できますよということなんです。
ーー明確な危機ということですよね。
岡田:日本が攻撃を受けたのと同じぐらい大変な事態が起こったときだという政府答弁もあるんです。だから、そういう非常に限定した場合に限って集団的自衛権の行使を認めたんですが、一部の政治家が、台湾に関して非常にラフなことを言っていて。安倍さんも総理を辞めた後、台湾有事になったら日本有事になるというふうにも受け取られかねない発言をしたり、麻生さんも台湾有事は存立危機事態になる可能性が極めて高いというふうに言っていて。憲法上の制約で限定されているわけですが、限定がないような言い方をしている有力な政治家がいるので、ここで、なんとか杭を打っていかなきゃいけないというふうに考えたわけです。
高市さんも実は同じようなことを言ってこられたんですが、総理になったんだからそういうことは引っ込めてもらいたいと。他に手段がないとか、必要最小限とか、そういった法律に書かれた原則を踏まえて判断しますという答えだったら良かったわけです。そういうのは無しで、台湾有事はどう考えても存立危機事態になりうるとか、可能性が高いとか、そういうことを総理として初めて国会の場で言われたから、これは問題になっているわけですね。
ーー総合的に判断するというところから、一歩踏み込んで発言された。
岡田:総合的判断って、政府もよく言うんです。高市さんも総合的判断という言い方は途中で、答弁の中で言っておられました。何に基づいて総合的判断をするかということが大事なんですよ。
法律に存立危機事態の定義が書いてある。国の存立が危ぶまれるとか、国民の基本的権利が根底から覆される。そういう場合に限って総合的に判断しますという答弁を求めたんですが、出てきたのは真逆でしたので大変びっくりしましたね。
アメリカですら曖昧戦略を取っている

ーー防衛とか安全保障の中では曖昧戦略ということもよく言われますよね。国がどういうようなことをするかという戦略を見せないようにすることも大事だというふうに言われています。明確な基準を示すと、曖昧じゃなくなるということはないですか?
岡田:それはないです。明確な基準って法律に書いてあることを言っているだけですから。
ーー法律に書いてある原則を高市さんにそのまま述べてもらって、従来と変わらないですよねというのを引き出したかったということ?
岡田:従来と変わらないのかどうか分かりません。だけど、法律に基づいてやっていく、判断する、という答弁を求めたわけです。アメリカですら曖昧戦略を取っていて、台湾有事の際に米軍が武力を使って介入するのかしないのかは言わないという原則なんですね。でも存立危機事態にどう考えてもなりうるとか、可能性が高いというのは、かなり踏み込んでしまっているんですね。どうして日本はそんなに踏み込む必要があるんだということです。
ーー日本が存立危機事態ということは、集団的自衛権ということでアメリカが来る可能性が非常に高いということを言っているようなものですよね。
岡田:アメリカが武力行使しなければ、存立危機事態になりえないと思います。ただアメリカが武力行使したときに、日本が無条件に一緒に武力行使するようなことは避けなきゃいけない。そこに日本の国益判断というのがあって、その国益判断というのは存立危機事態の定義ー日本自身が攻撃を受けたと同じような大変なことが日本に起こっているとき。そうでないと憲法違反だということになっているわけですから。
ーー個別ケースについて言うのは、国益としてはあの場では良くなかったというお考えですか?
岡田:10年前に法律を作ったとき、ペルシャ湾で機雷が敷設されたときや、日本人を乗せた米国の船が攻撃されたときなど、政府が具体例をいくつか挙げて、だからこの法律が必要だと説明していたんです。個別の事例について話をしてこなかったわけではないんです。
私が言っているのは、要するに憲法違反になりかねない話なので、何が憲法上認められているのかということについて、ある程度個別に議論していかないと、全部政府におまかせだということになったら、それは立法府としての責任を果たしていませんねということなんです。
ーー少しは手の内を明かしてでも、「こういうケースの場合はこうしようじゃないか」みたいなことを国会の場でもう少し話した方がいい?
岡田:それは答え方の問題で、別に自衛隊がそのときにどうしてこうするなんてことを聞いているわけではないので。
私は1つの例として、台湾が経済封鎖されたときのことを取り上げました。高市さんは総理になる前に存立危機事態になりうるということを言っておられたからです。
台湾とフィリピンの間のバシー海峡を日本の船もたくさん通っている。それを通れなかったら数日余計にかかるしコストもかかりますが、それが国の存立を脅かす話なのか。武力行使の3要件のひとつに、他に手段がないときというのがあるんです(注3・政府は自衛隊を発動する際に満たすべき3つの要件を決めている)。
避けることができたら他に手段があるわけなので、存立危機事態にあたらないんじゃないかと私は聞いたわけですね。高市さんから返事はありませんでした。
ーー私もそれが存立危機事態にあたるべきなのかどうかというのは正直分からない部分があるんですけども、でも台湾が海上封鎖されて、バシー海峡が通れないという事態は相当な事態だと思うんですね。迂回すれば食料が入るとはいえ、食料自給率も低い国ですし、半導体とかの問題も、台湾の依存率がすごく高いと思います。そういうところで問題というのは出てくると思うんですけども。
岡田:もし迂回して行けない事態になったとしますね。例えば日本の船が攻撃を受けるとか。それは存立危機事態じゃなくて、武力攻撃事態なんですよ。日本自身が攻撃を受けたことになりますから。個別自衛権の発動ができるんですね。
半導体が入ってこないという経済的理由で日本は武力行使するのかという話で、私は決してそうは思わない。例えばウクライナを考えてください。ロシアと戦争をしています。ロシアが侵略して大変な事態が続いている。だから世界の国々はヨーロッパを中心に経済制裁をかけたりしています。それから、避難した女性や子どもたちを何百万人と受け入れています。武器やいろいろな物資を提供しています。国によっては戦車とかそういうものを提供している国もある。だけど絶対にやらないことがあるんですよ。それは兵をウクライナに送ってロシアと戦うという選択です。もしドイツがそういうことをすればドイツとロシアの戦争になっちゃうことが分かっているから、そこに一線を引いているわけです。
台湾の皆さんは非常に親日的だし、大切な友人ですけども、だからといって台湾で何らかの理由で有事になったときに、日本が自衛隊を出して、そして戦うということになるのか。そんなに簡単に言ってもらっちゃ困ると。そんなに簡単に武力行使してもらったら困るというのが私の思いですね。
ーー武力行使はできる限り抑制するというのが当たり前の原則ということですね。
岡田:武力行使をすれば何が起こるかというのは、CSISというアメリカのシンクタンクがシミュレーションしています(注4)。米兵だけで1万とか、最新の調査だと2万人の死傷者が出る、そういう厳しい事態です。自衛隊もそれに準ずるような死傷者が出るかもしれないと。そのことをちゃんと分かっていて議論しないと。
日本も武力行使してでも中国と戦うべきだって、その結果何が起こるか。自衛隊の皆さんの死傷だけではなくて、当然日本のあちこちに戦火が及ぶ可能性が高いです。ウクライナの首都のキーウだってミサイルがたくさん飛んできますね。そういうことを分かっていて言っているんですかということです。
ーー私、台湾の防衛研究所を取材させてもらったことがあるんです。なぜ中国がそこまで台湾にこだわるのかと聞いたところ、1つの中国に台湾というのが含まれていて、その最後のピースが尖閣なんだというようなお話もお伺いしました。尖閣はもちろん日本の領土だと思うので、尖閣まで来ないようには絶対しなきゃいけないと思うんですけども。その判断ってどこですべきなのか。例えば狙いが尖閣だということは分かっているわけじゃないですか。そのときに例えば海上封鎖という事態が存立危機にあたるのか。
岡田:武力攻撃を受けたのと同じぐらいの影響が出るのなら、ありうると思います。
ーー将来的にでも、尖閣に来るおそれがあるとなったら、早めに抑止しなきゃいけないのかなと思ったりもするんですけども。そういうところはどういうふうに考えればいいですか?
岡田:台湾有事で台湾を巡って中国が武力行使する、米軍も出てくるという事態で、尖閣にどのぐらいの重きを置くかというのは相当疑問ですね。もし日本の領土、領海、領空に武力行使するということになれば、それは先ほど言ったみたいに存立危機事態の問題じゃないんです。在日米軍基地も含めて日本の主権の及んでいるところに攻撃したら、それは日本に対する武力行使ですから。一定の範囲の中で日本としては武力を使って排除をする。それは当然のことですよね。
台湾有事の際、避難民受け入れのオーダーは何百万人になる
ーーウクライナにも取材に行きました。力による現状変更というのを国際社会とか民主主義国家として許すべきではない。だからこそ日本がどこまでやるべきなのかというのは、私も現地に行ってすごく難しい問題だなというふうに感じた。
台湾だと地理的にも近いです。岡田さんは、どこまでやるべきだと思いますか?

岡田:ウクライナに兵を送っている国がありますか? すぐ近くですよ、ドイツとかポーランドとか。自制しているわけでしょう。それは自国の国民を守らなきゃいけないからですよ。
台湾も同じだと思います。日本に直接攻撃が及ぶなら別です。これは武力攻撃事態ですが、そうでない段階でこっちから出ていくというのは、私は国民を守ることにはならないと思います。
ーーいくつか段階があると思うんです。自衛隊を派遣するとか、武器を供与するとか、難民を受け入れるとか、経済的な援助をするとか。どこの範囲までだったら岡田さんは日本はやるべきだと思いますか?
岡田:状況によりますが、朝鮮半島有事もありえますよね。とにかく周辺に有事が起こった場合にまずやらなきゃいけないのは、日本人の保護です。台湾だって2万人ぐらい日本人がいますね。韓国だともっと多い。いかにして安全を確保して日本に連れてくるかということが第1です。
でも国会の質疑でも高市さんに言ったんだけど、もし武力行使を日本がしちゃったら、そういうことも困難になるじゃないですか。だから武力行使をしないで日本人を日本に、ということを最優先にすべきじゃないですか、と私は思っています。もちろん、世界の国々が中国が不当だということで制裁をするとかいうことがあれば、当然日本としてもその議論に参加すべきだし。
それから一番大事なのは朝鮮半島有事にしても台湾有事にしても、そこにいる女性や子どもたち、日本が引き受けないとどこが引き受けるんですか。ウクライナにおけるドイツの役割を日本はしなきゃいけないんです。避難民は何百万人というオーダーになると思いますよ。大変ですけど、そういうこともしっかりする覚悟を求められているというふうに思います。
ーー地理的なところとして日本に求められる役割がそうじゃないかというところですよね。
台湾有事ってもちろん起こさせないことが一番大事だと思うんですけども。そういう意味では、先ほど岡田さんは一部の人が軽々しく台湾有事は日本有事だというのが問題じゃないかとおっしゃっていて。そういう見方もあるかなと思う一方で、日本が来るかもしれないと思わせることで中国に対する抑止にはつながらないんですかね?
岡田:行かないって言わなきゃいいんですよ。私、国会の中でも、絶対ないとは言わないって高市さんに申し上げているんですよ。
ーーそこがポイントだと。
岡田:そうです。前のめりになって行きますよ、みたいな。本当に国民に対してそれを言えますか? 自衛隊員だけで何千人という方が命を落とすかもしれないんですよ。あちこちにミサイルが飛んできて、いろいろな重要施設だって、イージス艦がありますけど、とてもカバーできないでしょう。そういう悲惨な状況が想定されるのに簡単に言うべきでないと思います。
ーー言わなくて曖昧にすることも十分抑止につながるから、わざわざ政治家が言う必要がない。
岡田:アメリカより突き進んで言う必要は全くないと思いますね。もちろん今懸念されているトランプ大統領が経済的なディールを優先して、台湾の問題にあんまり関心を持っていないとかいう話がありますね。それは日米の首脳会談の中でしっかりとトランプさんに分かってもらう必要がありますよね。
ーー私たちが台湾有事についてどういうことを考えておけばいいと思いますか? 存立危機事態とか。
岡田:そうならないことがまず大事ですね。あとは日本自身攻撃を受けたと同じような事態になったときに、法律上その可能性が出てくるということですね。これは台湾有事だけじゃなくて、基本的に朝鮮半島有事も含む有事があったときの話ですね。
ーー存立危機事態というものを岡田さんが必ずしも否定されているわけではないと思うんですが、どういう場面だったら使ってもいいってお考えなんですか?
岡田:例えばエネルギーとか食糧が止まって日本に餓死者が出かねない、あるいは凍死者が出かねない、そういうぎりぎりの状況が生まれたときには、日本自身が攻撃を受けたと同じというふうに解釈できる余地が出てくると思います。
法律をつくったときの10年前の議論を忘れている方が多いと思う。政治家がそんなに気楽に言ってどうするんですか、ということです。有事に備えて先島諸島の皆さん12万人ぐらいを九州や山口県に避難させるという計画を政府でやります(注5)。だけど、もし日本の本土も含めて攻撃があったら、とてもそれじゃ済まない。もちろん沖縄が最前線になってしまうので。そこをしっかりとそうならないようにしなきゃいけないんですが。それは、いまラジオを聞いておられるみなさんの話でもあるんですよ、ということです。
有事にならないための努力も必要

ーー有事を起こさないことが大事ですけども、起きる可能性はあるんですか?
岡田:それは分かりません。ただ米兵も中国の軍隊も含めてお互い攻撃し合えば、アメリカは遠いですから、日本に集中的に来るのかもしれませんが、中国に対しても攻撃が加われば、いろいろなインフラが破壊されてしまうわけですね。だからお互いそんなに簡単には武力攻撃にならないと思います。ただ、台湾が独立するとかいうことになれば、これは習近平さんの言動を見ていると、そのときは武力で出てくる可能性はかなりあるんじゃないかと思っていますけど。
ーー台湾の方々の感情としても、現状維持が大事だってお考えの方も多い。
岡田:多いと思います。独立って声高に叫んでいる人は、一部の人たちで。
ーーそれをしたらどうなるかは皆さん分かっている。
岡田:そういうことが分かっていない日本で、ある意味お気楽に日本の一部の政治家が言っているという、そこが問題なんですよ。
ーーそういう意味では、岡田さんがおっしゃっていることがとても腑に落ちました。台湾に行ったときに、ちょっとでも台湾が強気に出たときに中国がどう出るかということを皆さん本当によく分かっていらっしゃるからこそ、本当に慎重にされているかなと。
岡田:台湾の皆さんも本当に大変だと思いますよ。そういうリスクの中で言っておられるわけですから。将来、中国が民主化して台湾といい関係ができるとか期待された時期もありますが、今は中国はそういう方向じゃありませんので。当分の間、現状維持でお互い波風立たないようにしてやっていくしか、残念だけど道はないと思いますね。
ーー岡田さんが質問したことに対して結構、ネットでいろいろな声が挙がっていますけど。
岡田:いろいろ言いたい人は一定数いますので、それは私はほとんど気にしていません。どうぞ言いたいことを言ってくださいと。それが名誉毀損とか、そういう法に触れる話でなければ私は何も言うつもりはないです。ただし、2人に1人が高市発言を是認しているということは、私は日本の危機だと思います。
先ほど申し上げたお話を聞いた上で、それでも台湾有事のときに日本が率先して自衛隊を出すべきだというふうにもし2人に1人が考えているとしたら、それは現実を見ていないし、非常に危険なことだと思います。だから私はこの話は下がりませんよ。何回でも言います。
本当に必要な場合ならともかくとして、日本自身が攻撃を受けていないのにそこまで突っ込んで、結果どうなりますか。それはウクライナを見ていれば分かるじゃないですか。多くの人が命を落として家族を亡くしていますよ。自ら望んでそういう道を取るんですか、ということです。
ーー台湾の方がそうならないように守りたいと思って賛成されている方もいらっしゃると思うんですけども、それにしても日本が払う代償が大き過ぎるということですよね。
岡田:日本じゃないところで戦いがあるときに日本が兵を出す。ウクライナではそんなことは、どこもしていません。もっとリアルに考えないと。
台湾の皆さん、本当に大事な友人ですよ。だからもし有事ということになれば、避難民をしっかり受け入れるとか、いろいろなことは必要になってくるでしょう。有事にならないための努力も必要ですよ。あんまりやすやすと言ってほしくないなと。
中国とのパイプ、命がけで作っていかなければ
ーー台湾有事を起こさせないために政治家の方ができることは?
岡田:中国ともしっかり話せる関係を作ることですね。中国だって、好んでそんなことをするとは思えないので、何らかの誤解とか言い間違いの中でそんなことが起こりうるわけですから。
今、政治家のパイプがほとんどないとか言われています。それは命がけで作っていかないと。好き嫌いの問題じゃないんです。軍事的にも経済的にも、隣りにある大きな国なんです。そことしっかりと関係を作っていくのが政治家の役割。だから私は中国に行くし、5年前であれば習近平さんの周りにいるチャイナ・セブンの中に少なくとも2人、私はしっかり話せる人間がいました。李克強首相と汪洋副首相。ところが2人とも亡くなったり外れてしまって、知っている人がいないんですよ。政治委員にもほとんどいないので、必死で関係を作っていこうということを今やっているということです。ところがそれをやろうとすると、媚中派だとか、中国に頭を下げているとか。自民党の中でも一部の中国関係に熱心な議員に対して、あいつは媚中派だから外務大臣にしちゃいかんとか、そういうことを言う人はいるわけですよ。
ーー台湾有事とかそういうことを起こさないために外交の力でやっているわけですもんね。
岡田:中国と腹を割って話ができない、それは不幸な事態です。政治家も一定の役割を果たさなきゃいけないので。そこは命がけでやっていきますよ、何を言われても。
ーー中国が高市総理の発言に対してものすごく反応している。中国もメンツがあると思うので、首脳会談したのに顔に泥を塗られたみたいな思いがあるのかもしれないですけど、でもこんなに強く出て、どんどんエスカレートしていかないかということが本当に心配ですね。
岡田:これは分かりません。ただ大阪府総領事のとんでもない発言がありましたよね(注6・中国の薛剣・在大阪総領事が高市総理の国会答弁翌日、自身のXアカウントに「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」などと投稿した)。
あれは今もう見られない状況になっていますね。取り下げたわけですね、中国政府として。だから攻撃一本槍ではないんですよ、中国も。
周りにもっと人をバランス良く置くべき
ーーあの発言は中国の総意というよりは、一人の人が踏み外しちゃったみたいな発言?どう捉えればいいんですかね?
岡田:そうでなければ今も残っていますよ、中国の政府見解だったら。これはまずいという判断があったと思いますよ。それからいろいろなことが始まったのは、7日に私とのやりとりがあって、それから3日後に大串さん(立憲民主党の大串博志氏)が、国会の発言だから国会で取り下げませんかと言ったけど、高市さんは拒否したわけですね。拒否されて、数日していろいろなことが始まっているわけです。トップに上がったということですね。
だから、これは簡単に収まらないかもしれません。高市さんも完全に撤回するというのは、彼女を支えている人たちがいますから、簡単ではないと。だから知恵を出していくしかないですよ。その知恵を出すのは高市さんご自身、あるいは官邸としてやっていかないと。今は全面拒否みたいな言い方になっていますよね。周りにもっと人を置いて、外交についてバランスの取れた考え方を持った人の意見を聞きながら、そしてもちろん外務当局の意見も聞いて組み立てていかないと。
尖閣の漁船の追突事件がありましたね(注7・2010年9月7日、尖閣列島近海の日本の領海で海上保安庁の巡視船に中国漁船が近付き衝突した)。あのときには民間会社の社員が確か3人か4人理由もなく拘束されたり、レアアースが止まったりということがありました。まだそういうことは起こっていないので、早くしっかりと対応する。
ーーそういうことが起こりうる可能性もある?
岡田:それは私が判断する話じゃないんですが、そういうことのリスクも考えておかなきゃいけない。
ーーそういうリスクも考えて発言を取り下げた方がいいと思われたということですか? 発言を取り下げるということの意味は?
岡田:中国が厳しい対応をするだろうということが1つと、もう1つは限定しないような発言を国会の場でされたので、それを取り消さないと場合によっては単なる法律違反だけじゃなくて憲法違反にもなりえますよと。
ーー高市さんは政府の従来の条文通りにして、なおかつケーススタディの場合はこうですよという意味で言ったわけではないんですかね?
岡田:存立危機事態の定義ー国の存立を脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険ーそういうことを言っていないんですよ。政府としてあらゆる情報を集めて総合的に判断しますと。その判断の前提になるのが法律に定める基準でしょ。そのことに触れていないんですよね。
ーーそこがまずいということ?
岡田:政府が勝手に判断できるみたい。そうじゃなく、法律で縛ってあるんですから。そのことを含めてきちんと説明されれば僕はOKだったんですよ。
ーー岡田さんとしては危機感がある?
岡田:国会で10年前、散々議論した。法律を組み立てて、これなら憲法に反しませんと政府が説明してできあがっているものを踏み越えて、無限定に集団的自衛権の行使をしかねないような話だから、それはだめですと言っているわけです。高市さんは存立危機事態の認定をする責任者ですから。高市さんの政権が認定して、高市さんが自衛隊に命令を下したら、自衛隊は行かなきゃいけないですよ、武力行使に。それがあまりにも理不尽だと私は思います。
ーー今回の国会答弁だけじゃなくて、今までの高市さんのお人柄とかを見られて、指揮官としての責務というのをしっかりと果たせられると思いますか?
岡田:僕は高市さんを個人的にはあんまり知らないんですけど、最高指揮官が今言ったような認識だと、本当にどこか大事なところで間違ってしまうんじゃないかという心配はありますね。今回の国会答弁がポロッと出てきたところを見てもね。周りにもっと人をバランス良く置くべきだと思います。同じような考え方の人間ばっかり周りに置いていたら必ずおかしくなります。
ーー自民党が過半数割れして、立憲民主党に入れようか悩まれている方というのもいらっしゃると思う。次の選挙はいつになるか分からないですけども、政権交代選挙ということが注目されるかもしれない。今回高市さんのお考えはちょっと見えたとして、立憲民主党が政権を担った場合、そういう問題は起きないですか? 防衛とか安全保障に対して不安だという方はいらっしゃると思うんですけど、今の立憲民主党はどういう感じですか?
岡田:存立危機事態について私たちが選挙で訴えてきたのは、違憲部分は無効ですと。野田さんは、どこが違憲部分かについては政権についた上でしっかりと検証して判断すると言われました。個人的には次の選挙で政権交代できる可能性はかなりあると思いますので、それではちょっと十分じゃないんじゃないかと。
私たちは存立危機事態を違憲とは言い切ってはいないんですね。違憲部分があれば無効ですと言っている。違憲かどうかという議論というのは水掛け論になってしまう。10年前も随分やって法律ができて、10年たっているわけなので。私がより気になるのは、違憲かどうかよりも、運用が違憲かどうか。せっかく定義で縛っていても、それ通り運用されなかったら何の意味もないので、そこをどうやって縛っていくかということを、きちんと党としては考えをまとめなきゃいけないと思います。
ーーそれは今まとめている最中なんですか? もうまとまっているんですか?
岡田:これから議論を始めます。次の選挙までには方向性を出さないといけないというふうに思っています。
ーーどこが違憲かというところは、それもこれから議論される?
岡田:その中には違憲な部分があるという意見もありますから、議論したいと思います。
ただ、より重要なのは、どこが違憲かという、おそらく答えが合意できない議論に永遠にエネルギーを注ぐよりは、今の条文を前提にして、それがきちんと果たされるような担保を、場合によっては法改正によって、あるいは運用によって担保するということの方が急がれると思います。
ーー存立危機事態や安全保障が大きく転換し過ぎると不安だって方もいらっしゃると思う。もし政権交代したときに大きく考えが違うのか、かなり似ているのか?
岡田:今、党の中で10年後の世界はどうなるだろうかという議論を始めているんですね。そこから逆算して、日本の外交はどうあるべきか、安全保障政策はどうあるべきかということを1年ぐらいかけてまとめていこうと思っています。政府も3文書を作りますから、それに合わせる形で議論をしてまとめる(注8・日本の外交・安保政策に関わる「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」を合わせた「安保3文書」)。非現実的なことを言うつもりはないんです。継続性も大事だし。だけど、憲法を踏み越えるようなことはだめだということですね。
政策論を国会でできなければ、どこで議論するのか
ーーそれはそうですよね。権力者を縛るための憲法であるわけなので。
岡田:国会での議論がけしからんとか、そういう声も一部のメディアも含めてあるんですが、国会で議論できなかったらどこで議論するんですか。もちろん個人の誹謗中傷とかは論外ですが、政策論を国会でできなければ一体どこで議論するんですか。特に安全保障。
ーー国会で批判するな、という批判があるということですか?
岡田:そういうふうに言っている大手のメディアもあるし、質問した岡田が悪いみたいな。私は鋭い良い質問をしたって自分では思っていますけど。そういう政策論を封じるようになったら、国会の役割ってどうなるんですか、ということも私はしっかりと申し上げたいと思いますね。
ーー民主主義国家として、野党の議員として質問する権利というのはあるわけですもんね、国民の知る権利もそうですし。
岡田:それにどう答えるかというのは、それは政府の方で考えればいいことで。おかしければもちろん二の矢、三の矢やりますけども。でもここだけは言っちゃいけないというのはあれば、それは言わない。それは外交や安全保障で言えないことがあるのはこちらもよく分かっていますから。だけど議論を封じるような話って、私はそこもすごく危機感を感じています。
ーー公明党の西田幹事長にこの間お話を伺う機会があったので質問したら、西田さんは「知る権利というのは当然あるわけだから岡田さんが質問するのは別に悪いことではないし、高市さんの一歩踏み越える発言というのはどうかと。明確な危機という言葉を入れたことも相当な理由があるし、そういう言葉一つ一つに重みがあるんじゃないか」とおっしゃっていた。ただ、具体的な議論というのは国会でしにくい部分もあるから、曖昧にしなきゃいけない部分はたくさんあるから、そういうところにも期待していますというようなご回答でしたね。
岡田:憲法に触れるかどうかというのは、国会で議論しなかったらどこでするかということだと思いますよ。軽々しく言うなって議論しているのに、軽々しく踏み越えて言っちゃったわけですから。そういう意味では確信犯なのかもしれませんね。それはとても危ないことだと思います。
ーーどうして高市さんがそういうふうにおっしゃったのか想像できる?
岡田:確信犯かもしれませんね。前からそう言おうと思っていたと。
ーーでも、内心すごい焦っていらっしゃるんじゃないですか? こんなに大事になると思わなかったと。
岡田:それは分かりません。私が勝手に想像する話じゃないと思いますので。
でも大串さんに対しては、個別なことに触れたことに反省していますみたいなことを言っていましたが、野田さんとの党首討論でそんなこと何も言っていませんよね。予算委員会を止められるかもしれないと思ったとか、とんでもないことを言っていましたよね。何回も聞かれたから誠実に答えたと。こっちがこれだけは言わないでもらいたいと、こういうふうに言ってもらいたいと思った真逆のことを彼女は言ったので。私から見ると誠実でもなんでもないですよね。もしあれを誠実だと考えているならとんでもないことだと思います。
危ないと思っている人、自民党の中にもいるはず
ーー明確な基準を、と何回もおっしゃっていましたもんね。これから国会ではどういう議論を展開していけばいいと思いますか? より高市さんが踏み外してしまう可能性もあるわけですよね。
岡田:彼女の発言はまだ議事録に残ったままですね。ということは同じことをまた発言するかもしれない。高市さんご自身も政府も含めて、全然否定的な話がそこにないわけですから。もう少し落ち着いたところで、法律の規定に基づいて認定するという答弁を取れるようにしっかりやっていきたいと思います。
ーーそういうのは水面下で、「実はこういう答弁が欲しかったんです」「それは必要だからやりましょう」とかはないんですか?
岡田:自民党の中でやってもらいたいですよね。自民党の中で危ういと思っている人はたくさんいるはずですから。
ーーそういう声も聞こえ漏れますか?
岡田:当然でしょうそれは。
ーー民間に期待することってありますか? メディアの取材もたくさん受けられたと思いますし、この間のメディアの報道の仕方とかもいろいろ見られていると思うんですけども。
岡田:私の意見を言ういろいろな機会を頂くことはありがたいと思います。先ほども言いましたが、これは大変な危機だと思っているので、私は繰り返し述べていきたいというふうに思います。
ーー若い人が安全保障を考える上で、こういう視点を持ってほしいとか、こういう勉強をしてほしいということはありますか?
岡田:今回も中国がいろいろなことを仕掛けてきますから、それに対する反感って当然ありますよね。それから高市さんは人気が高いから、高市さんが好きだというのは分かりますけど、その次元でこの問題を判断しないでくださいと。もっとリアルに、何が起こってしまうのか。
ーー私たちの命がかかっている問題ですもんね。
岡田:はい。ということを考えた上で判断してくださいと。今回、ネットの世界もかなり盛り上がっているみたいですけども、安全保障の問題をリアルに考えるいいきっかけになるかもしれないと期待しています。ふわふわした議論じゃなくて、しっかりとした議論。
ーーネットには嘘の情報もたくさん溢れているじゃないですか。中国とかロシアの情報工作とかもある中で、何を信じてどう調べていけばいいかってことを……。
岡田:それは自分で考えることです。ネットだけに頼っていたらだめだと思いますが、ニュースとか新聞とか、本とか、自分で考えて答えを見つけてもらいたいと思います。それが日本の将来を決めると私は思います。
ーー岡田さんはどうやってそういう価値観とか勉強してこられたんですか?

岡田:勉強しかないじゃないですか。それから現場を見るとかね。台湾にも2回ですけど行きました。最初に行ったとき、石破さんも一緒だったと思うんだけど、李登輝さん(注9・元台湾総統。「台湾民主化の父」と呼ばれた)に会った。まだ選挙で選ばれる前だったんです。でも人物に、それから考え方に非常に共鳴するところが多かったし。
中国はもっと多くの回数行っていますが、北京だけじゃなくて地方をなるべく見ることにしている。そこに中国の人たちの現実というのが見えてきて。いろいろな意見はあると思いますが、日々を真面目に働いて生活している人たち、それから結構親日的な人も増えていますよね。日本が好きで何回も来られる方もいる。そういうことも感じることも大事だと思います。政治指導者だけじゃなくてね。
ーー民間交流をしっかりしていくということも大事ですよね。
岡田:だから若い皆さんにも中国でも台湾でも実際行って、普通の人と話してもらいたいと思います。韓国とかASEANも一緒ですよ。
ーー台湾有事について、台湾の方たちに連帯したいという思いと、その一方で最悪の場合、日本がどこまでしていいのかということはしっかりと区別して議論しなきゃいけないなということが、本日お話を聞いてとてもよく分かりました。岡田さん、お忙しい中本当にありがとうございました。
※ 参照したサイトのURLはこちらです
注1)
衆議院議事録(2026年1月16日午前10時11分閲覧)
注2)
朝日新聞デジタル(2026年1月16日午前10時21分閲覧)
産経新聞
注3)
MAMOR(2026年1月16日11時19分閲覧)
https://mamor-web.jp/_tags/%E6%AD%A6%E5%8A%9B%E3%81%AE%E8%A1%8C%E4%BD%BF%E3%81%AE3%E8%A6%81%E4%BB%B6
注4)
CISIレポート(2026年1月16日11時20分閲覧)
注5)
内閣官房国民保護ポータルサイト(2026年1月16日11時10分閲覧)
注6)
読売新聞オンライン(2026年1月16日11時16分閲覧)
注7)
NHKアーカイブス(2026年1月16日9時12分閲覧)
注8)
日本経済新聞オンライン(2026年1月16日9時10分閲覧)
注9)日経ビジネス(2026年1月16日午前10時4分閲覧)


