憲法改正は進むのか? 維新・馬場伸幸さんに、山尾志桜里さんとたかまつななが聞く
- 笑下村塾

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米国のイラン攻撃をめぐり、ホルムズ海峡への艦船派遣を求めるトランプ大統領に対し、高市早苗首相は憲法9条の制約があると伝えた、と報じられています。この対応は改憲論議に影響するでしょうか。衆議院選挙の結果を受けて憲法改正の議論が注目されているこの問題について、日本維新の会顧問の馬場伸幸さんに、弁護士で元衆議院議員の山尾志桜里さんと社会起業家のたかまつななが話を聞きました。
※当記事は、YouTubeチャンネル『たかまつななのSocial Action!』のために2026年3月4日に取材した内容を元に作成しました。

憲法は何のためにあるのか
ーー 自民党が衆議院で3分の2以上の議席を得て、憲法改正が進むのではという関心が高まっていると思います。維新が与党としてどのように進めていくのかを伺いたいと思って今回の対談を企画しました。山尾さんが「維新なら馬場さんにお伺いしたらいいのでは」と言ってくださったのですが、それはどういった点からですか?
山尾:馬場さんとは、憲法審査会で議論してきました。馬場さんのご師匠の中山太郎議員(元衆議院議長)は、どうやって超党派で進めていくことができるかという雛形を作った方。その系譜を引き継いで今、憲法の議論の最前線にいるということで、馬場さんにお伺いしたいと思いました。
馬場:今の憲法は昭和22年に施行され、一度も改正されたことがない。中山先生が「人間の体にたとえると日本国憲法は60歳、70歳になっているにも関わらず、まだ2歳、3歳のときの服を着ているんだ」と話していました。
山尾:高市さんが施政方針演説で、憲法というのは国の理想を謳うものだとおっしゃいました(編注:「どのような国を創り上げたいのか、その理想の姿を物語るものが憲法です」と発言)。一方、憲法というのは権力を国民が縛るものなんだという考え方もあり、この二項対立がずっと続いています。
馬場:前文は憲法自体の理念を謳うものであることは当然でしょうし、目指すべき国家像をそこに入れるということも自然なことだと思います。
山尾:私も両面あると思います。理想を謳うものではないという考えだと「前文も変えなきゃ」ということになってしまう。一方、国家権力を縛るというのは肝。与野党問わず、バランスを取りながらいい議論をしてほしい。
「緊急事態条項」の議論の行方は
山尾:今国会、進むと考えられるのは緊急事態条項(編注:大災害やパンデミックなどの非常時に、政府がどのように対応できるかを定めるルール)と考えていいんでしょうか?
馬場:柱が2本あると思う。1本目は「もし国家に何かがあり、国会議員、特に衆議院議員が不在になった場合にどうするか」を決めておくこと。2本目はテロやコロナ、大災害が起こったときに、どう権力を集中させて、それをどう監視、監督するか。この2本柱をきちんと議論して合体させないと、真の緊急事態条項にはならないと思いますね。
山尾:一つ目の柱については「参議院の緊急集会に任せればいいのでは」という意見があります。一方、「国会の議決をもって延長していく例外があった方がいいのでは」という意見もあり、多分ここが最大の論点になっていると思う。
馬場:憲法を読むと、参議院の緊急集会というのはかなり限定的。ずっとやるのは二院制の考え方から外れる。自民党の憲法改正についての最新の考えはたたき台で、改正案じゃない。きちんと党内で議論していただきたいし、その上で与党間で詰めて、協力していただける会派に投げかけていかないと現実のものにはならないなという感じはしますよね。

政府の暴走を防ぐ「憲法裁判所」
山尾:パンデミックなどが起きたときに内閣がどのようにやるべきことをやり、国会がどうチェックできるかに関しては、多分論点が二つある。一つ目は、内閣に緊急的に法律的な効果を持つ緊急政令(編注:大地震や大災害のため、国会による法律制定を待てないときに、内閣が発出する)を持たせるかどうか。もう一つが裁判所について。緊急事態の際、国家はいろいろやり過ぎてしまったりするし、緊急事態宣言が正しかったのかも問われる。司法の判断がスピーディーに必要になるので、裁判所の機能をアップグレードするというのが、維新のアイデアとして入っています。
馬場:内閣や政府が暴走しないようにお目付け役で憲法裁判所みたいなセクションを作る。事後的でもチェックができるように構えておくということ。外国には憲法裁判所を設置している国も多数あります。
山尾:10年前、安保法制自体が違憲かという議論と、日本の国防のために必要かという議論があって深まらなかった。別の論点として議論するためにも、安保法制自体が日本の憲法に合っているのかどうかは裁判所にやってもらって、憲法改正が必要なのかも含めて中身の議論を国会でやることを可能にするために、憲法裁判所という構想は使えると思う。
ーー 緊急事態のときならいろいろなことをやってくれてもいい気はするけど、「終わるまで任期延長します」と言われると「民主主義としていいのか」と感じます。
馬場:移動の自由や職業選択の自由、そういう基本的人権として認められていることがままならないと、「どういう根拠でそんなことをやっているんですか」ということになる。
山尾:大論点の緊急政令は維新の中でも決めきっていないと思う。党内ではどんな議論で、どんな結論になっているんですか?
馬場:緊急政令は必要だろうという方向。ただ中身については、まだ議論が完全には煮詰まっていない。自民党は受け入れやすい話だと思う。
山尾:元々の自民党案は、緊急政令が結構全面に出ていた。今は随分変わって、内閣の行き過ぎを抑えるところに重点を置いている緊急事態条項が提案されている。一方で緊急政令というのは大論点として残っている状態なんだと思います。昔、自民党が提案していた緊急事態条項は、内閣が緊急事態のときにやれる権限がどんどん大きくなる方向。維新や国民民主党が提起して自民党に投げている新しい緊急事態条項はベクトルが逆で、内閣を国会の歯止めによって制約する法的なルールを憲法にちゃんと作っていこう、と。
馬場:いろいろな判断をすることは一定の権限を与えましょう、ただ歯止めも用意しましょう、と。今の日本は歯止めもエンジンもない。戦争に近い紛争が日本で起こった場合、誰がどういう指揮をして、どうなるんですか。ルールをちゃんと決めましょうと。
山尾:東日本大震災のときに民主党政権で当時大臣なんかをやられていた方が、当時のことを「ルールがないから超法規的措置をやらざるを得なかった場面がある」とおっしゃっている。ルールがあれば、それを守っていたかを後で検証ができる。でもルールがないと、破ったことも分からない。
あと、コロナのときに、国会を閉じていたんですよね(編注:2020年と21年、野党は通常国会の会期の大幅延長を求めたが、政府・与党は応じず閉会した)。今回の緊急事態条項は、緊急事態宣言が出て大変な状態のときは国会は閉じちゃいけないし、閉じていた国会を開けなきゃいけないし、解散はしちゃだめよと。

憲法9条に関する議論は
ーー 9条に関しては? 自民党と維新の間で溝がありそうですね。
馬場:自民党の中でもいろいろな考え方があって。2011年、野党時代の9条の考え方と、最新のものとは微妙に違う。9条2項を残したまま自衛隊を明記するというのが最新の自民党の案になっていますけど、それをやると逆に9条2項と自衛隊明記という部分が矛盾しているのではという議論に広がっていく危険性は非常にあると思う。
ーー 戦力を持たないと書いてあるのに、自衛隊を明記したら結局自衛隊は何なのかという矛盾が残るということですよね。
馬場:維新の最新の案は2項を削除するというもの。セルフディフェンスという英語はないらしいので、国防軍なり、軍隊であるということを明記しようというところまで、かなり突っ込んだ案になっています。
山尾:日本のいわば軍事力に蓋をしておくことがアジアと世界の平和のためだと思われ、日本もそのお金を経済成長に振り向けることができてWin-Winだという時代がありましたが、今や昔になりつつあると思います。日本が「9条を変える」と言うと、中国やアジアがどう反応するんだ、と言っていたのが、逆になってきた。中国は変わらないけど他のアジアの国々は、むしろ日本は9条を変えて国防を強化してくれと。そう考えていくと、緊急事態という状態なり、自衛隊がいるという存在なり、あるものを「ある」と憲法で認めて、それを国民がコントロールする。それをやったらいい時代だろうなと思います。
ーー トランプ大統領を見ていると心配になる。「日本から軍隊を出して」と言われても、憲法を根拠にすることで巻き込まれにくくなるのか?
馬場:それは集団的自衛権の話。同盟を組んでいるから、どんなところにでも要請があったら軍隊を出して、というわけじゃない。最近の考え方で言うと、日本を守ってくれている外国の部隊が攻撃された場合、集団的自衛権が発動できる。全然関係のないところで戦争をやっていて、こっちまで来てくれと言われても無理です、という立て付けになっている。今のところ歯止めはかかっている状況ですね。
山尾:9条の論点として、二つあると思う。一つは9条2項を削除するのかどうか。戦力と自衛隊の矛盾を置いておくのか、解消するのか。自民党は今のところ書くだけにしておこう、維新は矛盾を解消して2項を削除しよう、と。この違いは分かったのですが、今の安保法制の条件を憲法に書いておくか、憲法には書かず法律レベルで、国際情勢が変化したら変えられるようにしておいた方がいいのか、という論点もあると思う。
もう1つ、今の安保法制の条件を憲法に書いておくか、それともそれは憲法には書かず法律レベルで、国際情勢が変化したら変えられるようにしておいた方がいいという、この論点もあると思うんですよね。
ーー私は、入れた方がいいと思います。矛盾しているから変えた方がいいと思うんですけど、維新案だと時の権力者が暴走したら大丈夫かなって。安保法制があるから本当に大丈夫なのかなとか、それってそのときの与党が衆参で3分の2以上を超えていたら、割とそれって国民の歯止めにならないんじゃないかとか、それが選挙のときに争点に例えばなっていなかったりとかしたら、国民の目をかいくぐってなっちゃうのって、結構危ないんじゃないかなと思うので。やっぱり憲法にその要素があって、安全保障環境が変わったらちゃんとみんなで議論して、国民投票するとい
う、そこまで説明するのが政治家の役割じゃないかなって私は思いました。
山尾:という若者の意見に対してどうでしょう?
馬場:両方の考え方がありますよね、これも。両面的なね。
これはどっちがええとはなかなか言いにくい部分も思いますよ。
デマ避けるため、きちんとした議論を
山尾:維新の提言は、日本の安保環境から9条を考えるという野心的で面白いもの。馬場:一緒にこれからの日本の安全保障を考えましょうね、という意味合いも入っているんです。例えば徴兵制も、憲法違反になるからできないというのが今定説だけど、エッセンシャルな分野とかで万が一のときには協力してくださいね、みたいなことも入っている。戦場へ行け、という話ではなしに。
山尾:今まであまり日本の政治の中では自民党も含めて投げてこなかった球が結構入っているなと感じた。この9条議論をどう進めていく?
馬場:自民党の中でどっちなのかをはっきり決めてもらわないといけない。与党間で話をして、折り合うところは折り合わせていく。段階的にやっていくしかない。
ーーインターネット上の問題が国政選挙でも問題になる中、国の大方針を決める国民投票を今の状態でやることには不安があります。重大テーマではなく、まずは与野党やイデオロギーの論争がないところからはじめて、国民投票になれるというところからスタートしてもいいのではないでしょうか。
馬場:結党したときに憲法改正を訴えていたときは、教育の無償化や統治機構の改革、憲法裁判所の設置など、わりと理解していただきやすいだろうということを前面に出して憲法改正をさせてくださいと言っていた。あれから13年たち、世界の情勢がかなり変わってきた。具体的には国民投票をしていただくときには、カテゴリで分けて、教育無償化が一つ、9条が一つとかがいいのでは。議論に入っていただきやすい間口を開けておかなければいけないのだろうな、と。
ーー政権交代が起きたときもそうでしたが、民主党政権に対して失敗のイメージを持っているから「二度と政権交代はだめだ」という感覚の人もいらっしゃる。でも、政治を強くする上では、政権交代が起きたり強い野党があったりすることが必要だと思う。いい改正案が出たとしても、国民の間に分断が起きたり、「もう憲法改正は良くない」とトラウマみたいになるのが一番良くないのではないでしょうか。
馬場:おっしゃる通り。国会でもきちんとした憲法議論がされないから憲法自体に興味がないし、憲法改正した方がいいかを聞かれても、分かりませんとなる。発議するときは、それぞれの政治家、政党が国民運動的なことをやらないと、デマで数が変わってしまったりする。

「大阪都」関西への影響は?
山尾:どの政権も「地方分権」と言い続けているけど、できていない。維新の統治機構改革、もっと前面に出して議論してほしい。
馬場:副首都法というのを作ろうということで、与党間でかなり煮詰まってきている。その最終到着点は道州制。根本的に日本の統治機構を変える。明治維新のときに廃藩置県があったけど、逆転の発想で今度は廃県置藩をやると。地方創生って言うけど、地方自治体の消滅というデータも出ている。地域のことをよく知っている皆さんがある程度の予算を持たされて、地域に合うことができるような仕組みを(つくる)。ーー今の維新の議論の仕方だと、大阪の利益誘導に見えてしまう。大阪のために副首都をやりたいんでしょ、それで統治機構改革って言われても……と。
馬場:吉村カラーが強すぎてね。法案が出てくると、大阪のことだけではないということは理解してもらえると思う。
山尾:大阪都構想、道州制の話をつなげて語ってほしい。目指す道州制があって、その第一歩が都構想なり何なりであるという。まだそれは届いていないんじゃないかという気はします。
馬場:大阪都になれば周辺の自治体がどう変わるのか、関西はどういう影響を受けるのかとか、そういうことをもっと打ち出していかないと。大阪府と大阪市を一緒にするだけやろでは、なかなかインパクトも弱いという感じがしますね。
ーー最後にメッセージを。
山尾:維新の9条案ってすごく面白いと思うし、戦後80年の宿題にどう私たち国民が向き合うかということの一つの大きな投げかけだと思うので、ぜひ皆さんも維新の9条論には注目してほしいし、他の党と比較もしてほしい。そのきっかけになったらいいなと思います。
馬場:とにかく一度、日本国憲法というものについて考えていただく。世界やアジア、国内の情勢を見て、今の時代に合うように変えていかないと、いつまでも昔のものを守っていてもいいことは起こらないと思う。新しい日本を作るためには憲法改正をやるということが必要だと思いますね。
ーー国民投票で決めるときに、そのときの雰囲気に飲み込まれないためにも、しっかりと日々考えることが大事だと思う。皆さんと一緒に考えていけたら嬉しいです。
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