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大国が「力による支配」に乗り出す時代、理想と現実のバランスをどう考える?日本共産党の田村智子さんに聞く

  • 執筆者の写真: 笑下村塾
    笑下村塾
  • 9 時間前
  • 読了時間: 15分

日本共産党委員長の田村智子さんに、安全保障をテーマに話を聞いた。前回の対談でたかまつななが「安全保障については考え方が違う」と伝えたところ、「だったら、今度は安全保障で1時間やりましょう」と田村さんから提案があり、この対談が実現。イラン攻撃やウクライナ侵攻、憲法改正、日米同盟のあり方、自衛隊の未来像など、立場の異なる両者が正面から対話をしました。

※当記事は、YouTubeチャンネル『たかまつななのSocial Action!』のために2026年4月6日に取材した内容を元に作成しました。



いまの国際情勢に対して日本はどうあるべき?「ダブルスタンダードは危うい」

ーー国際情勢がどんどん変化している中、日本の安全保障環境をどのように見ていますか。

 

田村:ロシアという核大国がウクライナ侵略を行ったことに対して、国連憲章、国際法違反、許されない侵略戦争だということで反対だと私たちは主張していますが、まだ終わっていません。アメリカでは第2次トランプ政権になり「力による支配が当然だ」という立場に立ってしまった。ベネズエラへ侵攻し、イスラエルと一緒にイランを攻撃している。アメリカも核兵器を持つ大国です。世界の大国が世界の法の秩序を壊し、力による支配に乗り出してくる。これがいま、世界が抱えている安全保障の重大問題だと思います。

 

その中で日本の安全保障をどうするかですが、平和の国際秩序を壊すようなことをしてはダメだという立場を取るかどうかが一番問われると思います。武力によって自らの領土あるいは権益を拡大することは国連憲章が禁じているものです。その立場に立つということが、日本が平和の国際秩序で守られるという大前提になってくるんじゃないかと思うんです。

 

これまでの自民党政権の立場は、ウクライナへの侵略については「国連憲章違反だ」「国際法違反だ」とロシアを非難しています。だけどアメリカに対しては批判を一言も言わない。このダブルスタンダードは、日本の安全保障にとっても極めて危うい状況を作ってしまっているんじゃないか。ここがまず最大のポイントだと思います。

 

ーー安全保障の専門家の中には「(アメリカを批判しないことは)仕方ないんじゃないか」「世界は変わってしまったんだ」というようなことをおっしゃる方が多い。アメリカに対して強く言ったら経済的に報復に遭うかもしれないし、日米同盟が揺らいでしまう可能性もある。理想と現実のバランスの取り方はどう考えていますか。

 

田村:ヨーロッパの国々は、最初にアメリカがイラン攻撃をしたときは批判してないんですよ。「イランが核開発をしていたからいけないんだ」という主張に一瞬立ったんですよね。

だけど、戦争の目的もわからない、終わらせ方もわからない、ホルムズ海峡を事実上イランによって閉鎖されるという反撃によって大混乱がもたらされている。極右政権と言われ、トランプ大統領が自らの就任式に呼んだイタリアのメローニ首相でさえも「イラン攻撃は国連憲章、国際法に反している」と言っていますよね。アメリカが孤立し始めていると思う。それなのに日本の中でそういう議論が主流になっていかない。まして政府は一言の批判もいまだに言わない。日本は主権国家なのに、「アメリカあっての日本」という考え方が刷り込まれていると思います。


 

日本とアメリカの関係性はどうあるべきか

ーー日本が防衛力で自立できるぐらいに強化しようという議論なのであれば、アメリカと距離を置くという選択肢もあるかと思いますが、いまの時代に対話の力や外交力だけで大丈夫なのでしょうか。

 

田村:いまは、アメリカと運命共同体みたいになった方が危ないと思います。ホルムズ海峡に自衛隊を送るかどうかで、(政府は)「送らない」とは言わないんですよ、「送れない」はずなのに。確かにイランが核兵器を開発したことは良くないと私も思う。だけど、それは核兵器を持つアメリカによって裁かれる話じゃないんですよね。

 

ーー悪いことをした国を攻めていい、ということにはならないですよね。

 

田村:ならないんですよ。核不拡散条約という国際条約の枠組みにイランも入っている。国連を舞台に、イランに核兵器開発の放棄を迫ることを外交でやらなきゃいけなかった。イランとアメリカが外交交渉をやっている最中にアメリカが一方的に攻撃をしているので、どこから見ても国連憲章違反、国際法違反なんですよ。いまのどの法律を見ても、国際法違反の武力行使に日本は絶対に協力できないはずなのに、政府は自衛隊の派遣をきっぱり拒否しない。もし自衛隊を送ったら、アメリカの戦争に引きずり込まれることにもなりかねない。

 

ヨーロッパの国は、(自国に)置かれているアメリカ軍基地の使用を拒否しています(編注:スペインイタリアが基地使用を拒否、オーストリアは領空通過拒否、ドイツイギリスは基地使用を許可したと報じられている)。だけど日本の場合は、横須賀基地からイージス艦が出ていってトマホークを撃っている海兵隊も沖縄から出ていって、地上戦をやるかどうかという状態になっている。もしイランがすごく長く飛ぶ長射程ミサイルを持っていれば、中東地域の米軍基地が攻撃されたように、日本の米軍基地が攻撃される危険性だってある。米軍基地が攻撃されたら、日本の危機だと言って、日本が参戦していくことになりかねない。だから、アメリカについていくことの方がむしろ危ない現実があるんですよね。


 

トランプ大統領とどう対峙するか

ーー(トランプ大統領に対して)ヨーロッパの国々でも、意外と強く出てない国もある。要求をかなり飲み込んでいるのを見ると、強く言うことは現実的ではないのかな、と考えたりもします。田村さんはどうするのが理想だと思いますか。

 

田村:喧嘩を売る必要はない。だけど、筋を通すことが必要なんですよ。「私たちの国は国連憲章と国際法を遵守する国なんですよ」と。


「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)には、日本からオーストラリアまでを含む地域とアメリカも入っていますが、「自由で開かれた」というのは「法による支配」なんですよね。中国が貿易上や著作権の問題で必ずしも国際法を守ってないじゃないかという意識から「自由で開かれた」とわざわざ言って、まとまりを作ろうとしているんです。法による支配は自分には関係ないという立場は「アメリカの信頼を落としていくことになってしまいますよ」、あるいは「エネルギー危機でアメリカの経済にだって悪影響を与えてきていますよね」と、終わらせる方向に働きかけるとか、いろんなやり方があるはず。

 

ーー日米首脳会談での高市さんの戦略や発言をどう見ているかお伺いしたい。「世界に平和をもたらせるのはドナルドだけ」という言葉をストレートに読むと、「そういう言い方をしていいの?」と思う一方で、「よくできた言葉だ」と見る専門家もいます。攻撃をやめてもらうことがゴールだとしたら、交渉の場ではおだてながらやることが間違っているとは言えない気もします。

 

田村:どちらの意図で言ったのかを高市首相は説明しない。あのセリフを言った後にイランを非難しているんですよ。そうすると、イランという国を体制転換や崩壊させて「世界に平和と繁栄をもたらしてくださいね」というメッセージになりかねない。「力による支配を抑える側に日本はいますよ」ということを世界の国々に示せば、世界の国々との連帯を作ることができると思う。直接的な非難でなくても、もう少しやりようがあるだろうというふうには思いますよね。戦争のときには、会いに行かないという選択肢だってありえたと思う。

 

ーー日米首脳会談の各党の受け止めに関するニュースで、田村さんが「国際法違反だ」と言っていて、それは言いにくい立場の政党もあるから、多様な意見がでていて、日本は多党制で良かったなと思いました。

 

田村:高市総理宛てに「アメリカにもイランにも戦争終結のための外交交渉をやるように働きかけるべきなんじゃないのか」と要請しました。意見が違うのはわかっているから、要請書の中で「国連憲章、国際法違反」とは一切書かなかったんですよ。だけど「戦争を終わらせてくれ」というのは圧倒的な国民世論であり、世界の国々が望んでいることだ、と。


日本はアメリカとは同盟国で、イランからは伝統的友好国と言われています。ある意味、仲介国になり得るんだよっていうメッセージをイランが発している。どっちにも働きかけることができるんだから日本政府は動こうよ、と。トランプさんだって、このまま泥沼化していったらどうなるのか、困ってるでしょう、と。

 

国と国との関係も、意見の違いはあるけど一致できる利益はあるはず。じゃあそこに向けてどうするのか。意見が違ったら、違うということを確認すればいい。だけど話し合いを続ける。これが外交じゃないのかなと思うんですよね。


 

ASEANから学んだ「したたかさ」と外交努力

ーーアメリカとの関係については、ある程度関係を維持しながらやっていくのが良いとお考えですか。

 

田村:日本と極東地域の平和と安定のために在日米軍基地があるというのが条約上の規定で、関係ないところで基地が使われるときには事前に協議が必要なのに、今回のイランへの攻撃に対しては何もない。ベトナム戦争でもイラク戦争でも事前協議は一切なかったのですが、それを不問に伏しているんです。主権国家として、もっとアメリカに言えることはあるでしょう。「無謀な戦争には協力はできません」「米軍基地を使うことは承認できません」と言うことはできるんじゃないですか。そうでなければ属国になってしまいます。


「日本の厳しい安全保障環境」と言われていることに関しても、具体的に何がどう日本にとって危ういのか、危ういことをなくしていくためにはどうするのか、現実に即した議論が必要だと思います。 「危ういから在日米軍が必要。 これまでの自衛隊とは変わります。軍事費も防衛予算ももっと増やします」と進んでいくことはとても危険だと思う。 


防衛予算、軍事費を増やしますよっていう時、おそらく皆さんの念頭にあるのは中国や北朝鮮。 この二つの国は、よからぬことをいろいろやっていますが、現実には戦争を起こしていなくて、ここ何年もの間で戦争を起こしてきているのはロシアであり、アメリカなんですよね。 これを批判できなかったら、中国が力による現状変更をやった時に批判できるのかという話になってしまう。 それは、日本に対する世界の信頼をおとしめますよね。

 

ーー安全保障に関して、この数年で考えが変わった部分はありますか。

 

田村:2023年12月にASEANに行って外交の醍醐味を目の当たりにしました。いまASEANは、東南アジア10カ国に東ティモールが入って11カ国になっているんですけれども、1970年代にはベトナム戦争を巡ってアメリカに協力した国もあれば、北ベトナムと一緒に戦った国もあります。ベトナムとカンボジアは国境紛争が絶えないような地域だったのが、いまは平和な地域になっています。ASEANのもとには「東南アジア友好協力条約(TAC)」がありますが、憲法9条と同じで「互いに戦争しない、武力で脅さない、紛争を武力によって解決しない」と決めています。

 

決めただけじゃなくて、そのための外交努力をやり続けるんです。インドネシアのジャカルタにある本部には、各国の外交官がものすごい数働いています。経済だったり文化だったり、紛争を抱えているミャンマーの問題をどうするか、年がら年中会議をやっています。

 

この塊はしたたかで、中国が経済的に入り込んでいる国がいっぱいあるんですが、じゃあ中国につくのかというと、つかない。アメリカもASEAN と仲良くなりたいわけですよ。じゃあアメリカの側につくかというと、つかない。域内で起きている問題は「ASEAN が解決する」と言って、大国の介入を許さない。そういう会議をやり続けているんです。「これをもっと学んだらどうか」とASEANに行ってみて思いましたよね。



共産党の安全保障政策、他党や国民との一致点は

ーー共産党の安全保障政策が批判されるときに用いられるのが、「自衛隊を将来的になくす」という点です。実際は「すぐになくす」とは言っていないと思いますが、極端なところをとって「共産党はダメだ」という感じになるのはもったいないと思いますが、何か変化はありますか。

 

田村:例えば日米安保条約も、私たちとしては廃棄を掲げるけれど、国民多数の合意がなければできません。だから党としては廃棄を求めていくけれど、例えば市民と野党の共闘をやったときに、「日米安保条約の廃棄が一致点だ」ということは絶対持ち込まないわけですよ。そこに一致点がないのがわかっているから。だけど、「もっとアメリカにものを言う」ということは、おそらく一致できるところがある。そういう一致点を作っていきます。

 

自衛隊も同じで、国民多数が「事実上の軍隊によって日本を守る必要はなくなった」と言えるぐらいのところまでいかない限り、自衛隊をなくすなんてことはできないですから、あくまでも国民の合意ができるほどの平和と安定を「地球的規模の地域にもたらすことができたとき」ということになるんじゃないですかね。2000年代に入ってからそういう道筋をかなり明確に打ち出したというのはありますね。


私たちは、日本国憲法が掲げている戦争の放棄であり、武力に頼らない国際紛争の解決を実現したいんです。その実現を突き詰めていけば、かなり長期のスパンになるけれども、自衛隊の解消まで進むことが憲法の完全なる実現になるでしょう。そこまでのスタンスで政策を出しているんです。

 

ーー9条の議論はいつも、変えないか、自衛隊を加憲(自衛隊の存在を明記する条項を追加)するか、(戦力不保持を定めた)2項を削除するか、というものになっている。そこに新しいものが必要だと私は思っていて、自衛隊が何なのかをはっきり書くけど、自衛隊ができないこともしっかり書くとか。憲法改正についても、よりリベラルな人権保障をしたような憲法も見てみたいなと思ったりもします。

 

田村:ホルムズ海峡に自衛隊を送れないのは、憲法9条の縛りがあるから。明確な縛りになっているものがほどけてしまうので、いま改憲に対して反対だという運動を、自民党に対しては立ち向かっていかないといけないなというふうには思います。


それと、アメリカ言いなりから抜け出さないと、何をどう(憲法に)書こうとも危険ですよ。戦後のアメリカがやってきていることを見ると、ベトナム戦争にしても、中南米への軍事的な介入にしても、イラク戦争にしても、無法です。自衛隊、憲法も変えることになれば、アメリカとともに戦う国になりかねない。アメリカ言いなりから抜け出すことが、日本の安全保障にとっての最優先課題ではないのかと思います。


アメリカやロシアが起こしている戦争は何なのか、 そこと一緒に戦うことになるというのがどういうことなのかというのをもっとリアリズムで考えると、私たちの言ってることは決して能天気なお花畑というものとは違うということが伝わるのかな、と思っているのですが。


ーーウクライナで取材した時、すごく言うのはためらったのですが、市民の方に「1 日も早く戦争を終わらせるためには、ウクライナに武器供与したらダメなのでは」という議論も日本にはあるとお伝えしたら、「市民を守るために必要なんだ。」とおっしゃっていた。共産党は防弾チョッキを輸出することにも反対されていたけど、本当に困っている市民を守るような政策を打ち出してほしい。 


田村:実際に戦争が起きちゃった時は本当に難しい。 ロシアが一方的に侵略を行ったことは絶対許されないし、ウクライナがそれと戦うことは自衛ですよ。 自衛の戦いは国連憲章でも認めているので、当然のことだと思う。


ただ、第二次世界大戦の時に加害の歴史を持ち、もう戦争をしないという立場に立った日本としての支援の仕方がある。ヨーロッパやアメリカがウクライナに対して武器提供することには反対しません。防弾チョッキというのも、普通の防弾チョッキではなくて、戦うために軍隊が使う防衛装備は軍事の部類に入る。ひとつ突破すると、そこからどんどん広がって殺傷武器まで輸出するってところに急展開している。 歯止めをかけるということは、いまの憲法がある以上、必要なことだと思う。 


ウクライナの人たちが自衛のために戦うことは否定できないし、ロシア側に撤退せよと求める以外にない。 ただ、そこに至る過程はまさに外交の大失敗の積み重ね。外交上の解決ができずに来ちゃったということについて、いま一度検証されるべきなのでは。それが、戦争を起こさないための一番の安全保障の力じゃないのか。


ーー私は主権者教育をやっているのですが、最近平和教育の相談もいただくことがあります。いろんな国の戦争博物館などに行くようにしていて、 ベトナムでは、政治犯とされた人が入れられた刑務所が博物館になっていました。でも、日本には戦時中に「戦争反対」と声を上げた人たちがどうなったのか、といった展示はあまりない。共産党はたくさん資料をお持ちだと思うので、そういうものを作ってくださってもいいのでは。 


田村:日本共産党本部の1階ロビーに展示されている像は、共産党が弾圧されていた頃の芸術家の方が作ったもので、弾圧に対する抗議を示したブロンズ像なんです。なぜ無謀な戦争に反対できなかったのか、どういう政治が行われていたのかを検証することは必要ですよね。 


被害がどれだけだったのか、国民の暮らしがどうなったのかを伝えるものはそれなりにあるけど、そこに至らしめた政治の責任は何なのかというのが全くないと思っています。そもそも、その検証を政府がやっていないから、空襲被害を受けた人たちが国家賠償を求めて裁判を起こした時も「担当する省庁がありません」という扱いになっちゃう。戦争に対する責任がプツンと切れちゃっている。 二度と戦争を起こさないためにも、なぜ戦争に突き進んでしまったのかの政治の検証をやりたいですね。



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