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若者、どこに投票すれば? 国民、生理の貧困やヤングケアラーで成果

衆議院議員選挙を控え、主要6政党の若者政策を進める国会議員にインタビューするシリーズ。話を聞いたのは、国民民主党、参議院議員の伊藤孝恵(いとう・たかえ)さんです。元ジャーナリストの取材力を生かして、生理の貧困やヤングケアラーへの対策、国家公務員の働き方改革などを推し進めてきました。2児の母でもある伊藤さんは、国民民主党でどのように若者政策を進めようとしているのでしょうか。YouTubeたかまつななチャンネルで聞きました。



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必要とされる政策に手を貸すほうが合理的

――伊藤さんは生理の貧困やヤングケアラーなどの問題を熱心に進めてきたと私の周りで評価が高かったです。生理の貧困は政府の骨太の方針に初めて明記されましたし、ヤングケアラーも国による初の実態調査が実現しました。野党の立場でありながら政策実現をするというのはなかなか難しいことだと思いますが、どうしてできたのでしょうか。 与党じゃないと政策実現できないとよく言われますが、それには異議申し立てをしたいですね。ちょっと先の未来に必要な政策を持ってきてズキュンと撃ち込むのは、むしろ私たち野党のほうができるんじゃないかと。 台湾のIT担当相、オードリー・タンさんのインタビュー記事を見ていたら、今までの政治は、政治家が私の政策にこの指とまれで意見を募ってきたけれど、今は必要とされている政策に政治家が手を貸す形で進めたほうが極めて合理的で生活にマッチした政策が生まれると書いてあって。 そんなとき、ある政治コミュニティサイトから電話があって「生理の政策はリクエストが多いのに誰もやってくれない。興味ありませんか」と言われて、いっちょやってみるかと。声を集めることと報道してもらうことの両輪で取り組んで、それがうまくはまったというか。 だから、たくさんの人たちの声が塊になったからこそできた政策で、発火点がたまたま野党だったということです。 ――実現するまでの国会議員の動きは外からはわかりにくいのですが、伊藤さんは具体的にどんなことをされたんですか? 委員会で質問をして、興味を持ってくれた人たちがいたら勉強会の講師を紹介するといったことをしました。 あと、なぜ世界中の生理政策が進んだか、なぜこの国では進まないのかを調べたんですね。政府主導だったか野党主導だったか。その政策を主体的に進めた女性議員は誰だったか。こうしたものを全部調べて、その人たちにアクセスして、分かったことをレポートしてそれを別の党に持っていくということもしました。 ――他の政党では自分たちの政策として囲い込むようなこともあると思います。そうではなく、党を超えて取り組むことが実現につながったんですか? 国民民主党はたった20人の政党ですから、うちがやると言っても限度があります。大切なバトンを受け取ってくれる人がいるなら、喜んでそれを持って回りました。 こういうときに一番邪魔なのが「私がやった」という政治家の縄張り意識です。政策が進めばいいので、本当にそんな気持ちはありません。私は超党派ママパパ議員連盟というのをやっているんですが、今回の生理政策については、ママ・パパで思いをともにする議員たちが協力してくれました。本当にたくさんの人がいろいろな場で一生懸命やった結果です。


伊藤孝恵さんにインタビューするたかまつななさん


まずは官僚が早く帰宅することから

――国家公務員の働き方改革にも、ものすごく力を入れたと聞きました。 政治家はよく「世の中を良くします」「皆さんを幸せにします」と言うけれど、一番身近な霞が関や永田町では、子どもと毎日一緒に夕飯を食べるといった些細なことすら許されないほど滅私奉公が当たり前ですよね。 与党は官僚を家来のように思っているし野党は官僚と敵対している。これは全然本質ではなくて、仕事をするにはいいチームを作ったら勝ちなんですよ。チームを作る上で、自分たちが幸せじゃないと、人の幸せって願えないと思いませんか。 ――もちろんそう思います。現状では国家公務員になりたいとは思えないですもん。 官僚の生の声を聞きながら、超党派ママパパ議員連盟で何ができるかを考えたら、4つあったんです。 ひとつは通告時間を守ること。官僚から議員へのレクなどオンラインでできることはオンラインを推進すること。質問通告をFAXで受け取ってパソコンに打ち直す作業をやめてオンライン化すること。通行証をやめて身分証明証があれば国会や議員会館を行き来できるようにすること。 全党の責任者のところに説明に回りました。ひとつひとつは些細なことかもしれないけど、この無駄な時間の積み重ねをやめて早く家に帰ってほしい。国家公務員の働き方改革は優先順位高く取り組まないと、この国の政策機能が崩壊します。

若者政策他党との違いは?

――どの政党も若者や子どもを大事にすると言っていると思うんですけど、私たちから見ると政策の違いが分かりづらいです。若者政策で国民民主党が他党と違うところはどこですか。 私たちが政策として掲げることはもちろんですけど、どういうふうに取り組みを進め、問題提起をし、実現してきたか、そこを見てほしいです。 例えば、孤独・孤立対策が実現したのも、これまで孤独と言えば高齢者の孤独死というイメージでしたが、それは全然違うんです。ヤングケアラーの孤独や、シングルファザーの家庭で育つ子がナプキンを買ってと言えない生理の貧困の孤独、ひきこもりの孤独もあります。だから、子どもたち、女性、若者に焦点を当てた国の施策が必要だということで実現してもらいました。



小さな所帯、連携がカギ

――国民民主党が若者政策をする上で課題となっていることは何ですか。 私たちが恵まれているのは、政策トップが玉木雄一郎代表だということです。彼自身の眼差しが若者減税、教育国債といった若者政策に向いているので。だから党内のボトルネックはないです。 あるとしたら、私たちは20人の政党という小さな所帯なので、インパクトがないというところですね。今度の衆院選でも劇的に数が増えることは難しいかもしれませんが、一人でも二人でも仲間を増やしてじわじわ変えるしかないと思います。 ――人数が少ないと確かに難しいですよね。ちなみに他の野党との連携が少ないという声もありましたがいかがですか。 政策を生み出す上で、他の野党に、与党も含めてですけど、協力してほしいというのは頼みまくっていて、連携はすごくあると思います。まさにいま、国民民主党単体で孤独対策推進法を出したのですが、他の野党の方々からたくさん電話がありました。 国民民主党ひとつで出しても実現しないから超党派議連をちゃんと作ろうと言っていただいて、準備をしているところです。参議院は衆議院よりも連携が進んでいるという部分もぜひ知ってもらいたいです。


必ず選挙に行くわけではない人をターゲットに

――若者政策が進まないことが問題としてある中で、今の選挙に行く高齢者世代よりも、若い世代に重点を置くにはどうしたらいいと思いますか? 世の中はだいたい3種類に分けられます。必ず選挙に行く人たち、行ったり行かなかったりする人たち、絶対に行かない人たち。 みんな必ず行く人たちに向かって政治をするからワンパターンになってくる。ウケがいいものが分かっている。でも私たちは、そうではないところにチャレンジすることを党として決めました。 まさに「つくろう、新しい答え。」というのを党是としているので、右や左にわかりやすく旗色をはっきりさせることはしません。でもそれだと埋没すると国会の中で笑われているのは知っていますが、そこには抗いたくて。 ――必ず選挙に行く人たち以外のほうがブルーオーシャン(競争相手のいない未開拓の市場)だと思うんですよね。投票所に行ってもらうまでが大変ですが、他の党が訴えかけていないということは、そこに訴えかければ潜在顧客はめちゃくちゃいると思います。どのように若い人たちに投票に行ってもらいますか? 若い世代にとって、コロナ禍ほど政治が自分の暮らしに影響があると感じたことはなかったと思うんです。だから政治が自分に届いた、染みたと感じてもらうには何が必要なのかを考えています。 例えば、意見を寄せてもらった方には必ず「ありがとうございました。必ず政策にいかします」というメールするようにしています。さらにそれを質問の中で言ったりします。玉木さんは代表質問の内容ですら声を募集して質問したりする。それを続けるうちに点と点が線になり、政治とつながったと思ってくれる人を一人一人増やすしかないと思います。

政治と暮らしがつながった瞬間

――政治と暮らしがつながったと感じてもらえた経験はありますか? シングルマザーの方から「子どもの入学式だけど、ランドセルを買ってあげられない」という陳情をいただきました。私は「就学援助費というのがあるのでランドセルを買えます。これで買ってください」と返したんです。すると「あなたは何も見えていない」と言われました。 調べると、学校教育法では、4月1日に入学した子どものことを児童といい、3月31日までの子どものことを幼児といいます。就学援助費は児童にしか支給できないことになっているから、4月1日に入学してから申請をしてお金が来るのが7月。だから入学式にお友達がピカピカのランドセルで登校する中、自分の子どもはリュックサックだと…。 こんなくだらない言葉遊びのせいで必要な人に必要なものが届かないとびっくりしてしまって。だから変えてもらったんですよ。たった一文だけ、就学予定者にも支給することができると要綱に加えただけで、入学式の前にランドセル代を支給することができるようになったんです。 国のスタンスが変わったら次は自治体、ということで、まず愛知県の54市町村、4年かけて全部コンプリートしました。 そのシングルマザーが教えてくれなければ、私はおそらく生涯気付かなかったし、教えてくれたことで入学式に寂しい思いをする子がいなくなるんだと思うと、本当に政治と暮らしがつながっていると感じます。 ――お話を伺っていると、国民民主党の場合は、若者の声を聞くという仕組みが個人の議員さん頼りになってしまっていて、地方議会の議員さんたちを通して地方から情報共有するような仕組みがないように感じます。伊藤さんや玉木さんがたまたま陳情を受けたから変えられるだけであって、全部の陳情を聞くというのは難しそうですが、そこは課題ですか? おっしゃる通りです。他の党で素晴らしいと思うのは、国会の質疑と全国の地方自治体の議員とで瞬時に情報共有がされて、同じワンワードでしゃべっているのを見たときです。本当に強いなと思います。 国民民主党はいま日本で50%の人にしか知られていない政党です。地方に根をはることも含めて国民に理解してもらう必要があります。課題は山積みです。


育児・介護と仕事の両立はますます問題に

――今後、伊藤さんが若者政策で取り組みたいテーマはありますか? これまでも力も入れてきましたがヤングケアラーの問題です。この問題を放置すると、そのままビジネスケアラーの問題になるんです。 ビジネスケアラーはいま20代、30代が一番多いですが、会社に入ってさっそく介護で休暇を取りますとは言えないじゃないですか。会社にケアラーを支えるシステムがあったとしても使われていないという現状があるんです。 すると、経営者も労働組合も含めて利用者がいなければその問題はないことになってしまう。だけど、これからの日本は育児・介護と仕事の両立、ダブルケアを含めてものすごく大きな問題になっていくと思います。 どういう制度があってどこに相談すればいいか、若い世代にはしっかり習得してもらって、自分の人生と両立できるようにしなければならない。これからの日本に必要な政策だと思っています。 ――公約で掲げていた教育の無償化や教育国債は実現が難しそうですか? 教育国債は、受益と負担が一致する珍しい政策だと思うんです。まさに全員が主体者になれる。与党の人たちに教育に投資してほしいと再三言うんですけど、本当に伝わらないというか、聞き流されてしまうんですよ。これを腹の底から理解してくれる仲間を増やさなきゃいけない。 政策推進主体者、意思決定者の実力者の人たちがいますよね。その人たちに直当たりしましょうかね。また、永田町の中の党派を超えた意見交換の場は増えてきた印象があります。私たち国民民主党が実のある提案を積み重ねれば官僚や他党の政治家に聞いてもらえるようになると思います。だからいいチームを作る、これに尽きますね。 ――最後にお伺いしますが、若い人は国民民主党に入れたほうがいいですか? 若い人の声が聞ける政党は国民民主党ですね。政治家の中には、若者が陳情に来た内容をそのまま受け入れるのはプライドが許さないという人たちもいるんです。でも国民民主党にそういう人はゼロですからね。 議員全員LINEがあるんですけど、それで「ここは政策にできないか」「これ忘れてない?」って日々やっていますから。私たちは当事者の声、一次情報にしか価値がないと思っているので、国民民主党に入れるべきだと思います。



「対決より解決」風通しの良さ――取材を終えて

国民民主党は、風通しも良く、議員が公開で生討論している姿もよく見る。「私たちは対決より解決を選ぶ」という標語を掲げているが、まさに政策提案が早い。だからこそ、当選回数1回目の伊藤さんでも、代表戦に立候補したり、触れにくいと思われがちな生理について話せたりしたのではないか。データや科学的根拠に基づいて主張しているのも好印象だ。 しかし、国会議員が少なく、認知度が低い。政策を自分たちで実現していくのは難しいだろう。また、良くも悪くも、「自分たちがやった」ということにとらわれていないので、孤独対策など成果をだしたところもあるが、党としての成果を示しきれていない。 国民民主党は、政党としての力が非常に弱い。代表の玉木さんや、伊藤さん、山尾さんなど政策通の人が多い一方で、選挙に弱い議員にとっては、心細い。政権の批判票なども、共産党や立憲民主党に流れてしまうため集まらない。 個人の力で選挙を勝てる自信のある人や、選挙で負けてもいいという覚悟がある人しか残らない。その上、地方議員が多いわけでもなく、各地域に根ざした政党組織があるわけでもないので、議員個人の力量にますます左右されがちだ。 具体例の多い伊藤さんの話は、一歩ずつできることをする、野党でもできることはたくさんある、こんな政治家がいるんだと明るい気持ちになった。現実的な提案ができる、政権交代を任せられる野党が必要だと考えている私としては、国民民主党を推したくなる。 しかし、一気に人数が増えたら、資質を疑われるような人がたくさん当選してしまうのではないかという危惧もある。自民党や共産党の組織力との違いは認めざるを得ない。地方議員の声をしっかりと吸い上げる仕組みもある。朝令暮改も当たり前という玉木代表の柔軟性を評価しつつ、強い個性に頼るだけで組織が成長していくのかという懸念がある。 もっと知名度が上がれば、今の政治に辟易とする中道層に響くのではないかと思う。

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