辺野古事故から考える——事故を繰り返さないために何ができるか
- 笑下村塾

- 1 日前
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修学旅行中に生徒が命を落とした。なぜ事故は防げなかったのか。「教育のプロが、校外では安全管理のプロにはなれない」——現場の教員が語るこの言葉は、再発防止を考える上で重要な視点を示している。若者の政治参加の推進をするたかまつななが、学校リスクを専門とする名古屋大学教授の内田良氏と、岐阜県立高校教諭・西村祐二氏とともに、事故の構造的な原因から再発防止策、平和学習のあり方まで考えた。
※この記事は、YouTubeチャンネル『たかまつななのSocial Action!』のために2026年4月28日に収録した内容を元に作成しました。

なぜ事故は起きたのか
内田氏は、今回の事故の根本的な問題として、旅行代理店を介さなかったことを挙げる。旅行代理店は事業者の安全マニュアルや保険の整備状況をチェックした上でリストを持つ、安全管理のプロだ。しかし今回、海上活動の部分だけ代理店が関与しておらず、事故後の調査で、活動を行った団体が事業登録をしていなかったことが判明した。
「旅行代理店を介してしまっては『やれなかった活動』なのかなと思うわけですね。少なくとも旅行代理店を介さなかったことによって、非常にずさんな形でリスクの高い教育活動をやってしまったと言えるかなと。これが根本的な問題だと思います」と内田氏は語る。
現場教員の西村氏は、このような事故は異例だと述べる。「公立に勤める範囲内では起きないんじゃないかなと。計画段階で教育委員会に報告をしたりだとか、教育委員会を交えてっていうところでは、起こらない事故なんじゃないかなと感じてはいます」
一方で内田氏は、同様のケースが他にも存在する可能性を指摘する。「全国的にみんながやってるとは私も思えないです。でも一方で、ある一部の学校がそういう風に独自に、教員とその現地の団体との独自の繋がりのなかで何かこう、安全を軽視した活動をやってしまっている可能性というのはあるので、そこをしっかりとこれからどう変えていくのかという議論に繋がっていく話題なのかなと感じています」

教育活動の前に、安全管理の仕組み化を
内田氏は、教育活動の目標が先行し、リスク管理の議論が後回しになってきた構造的な問題を指摘する。この問題は修学旅行に限らないと内田氏は言い、「巨大組体操」を例に挙げる。「みんなが感動するし、こんなにいいものはないよねという中で、何人か骨折してしまっている。その『いいものだよね』という考え方はとても大事なんですけれども、それはやっぱり安全を土台にした上で初めてそういうものに至るべきかなって。安全を軽視したまま『割とうまく行ったからいい活動だよね』というのでは、それはいつどこで事故が起きるか分からない」
教育活動の価値や理念を否定するのではなく、安全の確保を前提とした上で校外学習を考えるべきだという立場だ。「教育活動の目標はすごく崇高なもの、理念もとても大事なものだとして、それは安全を土台にした上で成り立っているかどうかという、そういう風な考え方が必要かなと思いますね。」
この点は現場の教員も同様に感じている。西村氏はこう述べる。「我々、教室において授業をするその授業のプロ、もしくは学校の中の教育のプロではあるという自負はあるんですけど。じゃあ生徒30人引き連れて、修学旅行を3泊4日とかで遂行する、そのプロだとは思っていないところがあって。やはりそのあたりは旅行代理店の方が言うことが一番だし、そこに従う形でやっていくっていう、今はそういうスタンスなんじゃないですかね」
具体的な再発防止策として内田氏が挙げるのは、旅行代理店を介した活動の徹底、開始時間の見直しによる子どもと教員の負荷軽減、そして看護師など健康管理の専門家の同行だ。
修学旅行はそもそも何を目的にしているのか
西村氏は、修学旅行の目的について高校の学習指導要領の記載を引く。そこには、『平素と異なる生活環境にあって、見聞を広め、自然や文化などに親しむとともに、より良い人間関係を築くなどの集団生活のあり方や、より良い人間関係を築く集団生活のあり方、それから公衆道徳などについて体験を積むことができるようにすること』と記されており、西村氏はこう述べる。「250人でちょっといつも過ごしている場所ではないところに行って、みんなで何泊か宿泊しましたというだけで、実は生徒にとってはかけがえのない学びだし、かけがえのない思い出になるかもしれないし。それ以上、危険を伴ってまで何か新しいことをやろうとしなくてもいいんじゃないかなと思います」
内田氏もこの意見に賛同し、現状の修学旅行が抱える問題を指摘する。「修学旅行って今、学校の側も『せっかく行くなら』と言って、いろんなもの詰め込むんですよ。そういう中で、すごく負荷が高い活動ですよ。(中略)いろんなことをやらせたいっていう結果、子供の負荷、そして教員の側の負荷もそうです。みんながこう、負荷が高まっていっている状態で、その中の何人かが病気になったり犠牲になったりするわけですよね。『みんな元気に帰ってくる』ということこそが最優先で、まさに安全をベースにした修学旅行の計画ということになるんだろうなと思います」

政治論争より、まず再発防止を
今回の事故はSNSを中心に大きな議論を呼んだが、その多くが平和学習の政治的な是非をめぐる争いになっている。内田氏は、自分がやりたいのは子供の命を守ることだと述べた上で、こう語る。「ただ一点、『事故を繰り返さない』。そのために自分が何ができるかといったら、どう防げたか、何が問題だったか、その根本的な原因は何だったのか、そこをただただ一点をずっと言っていくということなのかなという風に思います。そういった意味で、今の世論の在り方、SNSの議論が、本当にもう一回、事故を防ぐということに立ち返って考えてほしいなって思います」
平和学習のあり方については、地歴科の教員である西村氏が現場の視点から述べた。修学旅行と平和学習を強く結びつける必要はなく、まず日々の授業の中で向き合うべきだという。「修学旅行で改めて平和学習に取り組もうではなく、日々やっぱり平和学習。それは戦争を繰り返さないだけでなく、単に命の尊さについてみんなでちゃんと考えられているかと。プラスアルファ、修学旅行で平和学習を重ねてもいいんですけど、修学旅行で平和学習以外もっといろんなことを学んだらいいですよねっていう風に思いますね。」
最後に西村氏はこう述べた。「まず大事なのは生徒の命、教員の命。命を失ってまで、命を危険にさらしてまで教育するものなんて何もないんですよね。教育とは、命の大切さということを学ぶ営みだからだと思います」
文・玉城
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