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  • 執筆者の写真笑下村塾

18歳投票率が8%上昇。高校生が知事に直接意見して行政が動く。群馬県✖️笑下村塾の取り組み






少子高齢化で特に若者世代の人口が減少している群馬県。山本一太知事の「今の群馬を変えるための人材育成が必要」という課題意識のもと、自ら考え動き出す“始動人”の育成に取り組んでいます。そんな群馬県と、日本で唯一の主権者教育を専門とした会社である笑下村塾が連携し、2022年度より出張授業や、高校生による山本知事への提言会、意見交換の場づくりを行なってきました。

若者が主役となり、自らアクションを起こして地域を変えていくには、どうすればいいのか? 自治体と民間企業がタッグを組み、若者たちに「地域を変えるための一歩」を促した取り組みについて紹介します。(笑下村塾・たかまつなな/編集協力:塚田智恵美)



群馬県内の全高校を対象に、芸人さんが出張授業。直後の参院選で投票率UP


人口減少が進む群馬県は、新たな時代を切り拓く人材として、自ら考え、動き出す力を持つ「始動人」の育成を目指している。

そんな中、私がYouTubeチャンネルで「どうすれば若者の政治参加を促せるのか」と話していたのをご覧になった山本一太知事から「主権者教育に力を入れていきたいので、力を貸してほしい」というお話をいただいた。

昨年ヨーロッパに取材に行ったが、主権者教育が盛んな国では、国や社会の問題を自分の問題として捉える意識を育成することの重要性に理解があり、主権者教育にきちんと税金が使われている。日本では行政と民間の大規模な連携の実例も、いまだ少ない。群馬県と私たちの連携プロジェクトを通じて、まずは群馬県の若者の政治参加を日本一にしたい。さらに主権者教育の成功モデルを生み出して、全国に広げることを目指したいと考えた。


まず実施したのが、お笑い芸人さんが先生となる「笑える!政治教育ショーin群馬」だ。2022年4月から7月10日の参院選までの期間に、群馬県内の全高校を対象にした出張授業を行った。

「若い世代のために」と、総勢48組のお笑い芸人さんをはじめとするタレントの方たちが協力してくださった。政治の敷居を下げることも授業の目的の一つで、政治の知識がない生徒たちも参加しやすいコンテンツを用意している。

たとえば「人狼ゲーム」の仕組みを使った「悪い政治家を見抜く人狼ゲーム」。悪い政治家を見抜くために、政策を判断材料にすることもできるし、人柄を見て直感的に選ぶこともできる。そのため知識がなくても気軽に参加できるのが特徴だ。

さらに授業では生徒たちが「社会を変える宣言」をする。「自分には社会を変える力がある」と生徒たちに意識してもらうことで、自分から地域に参加したり、何かアクションを起こしたりすることにつながっていくと考えている。

こうして参院選が始まるまでに合計49校、約9800人の群馬県内の高校生に対して出張授業を提供することができた。その結果、県の発表によれば、2022年7月の参院選における群馬県内の18歳の投票率は8%も上昇したという。全国平均と比べても18歳、19歳はそれぞれ4%以上増加となった。







知事への提言会で生まれた「声を上げれば実際に変わる」実感


こうして出張授業を重ねていくうちに、多くの生徒たちが実は社会や地域に対する問題意識を抱えていることがわかった。「ツーブロックの禁止など、なぜ制限されているのかわからない校則が多いので、署名を集めて意思表示をしたい」など、それぞれに考えていることはあるのだけれど、そうした声がなかなかあがってこない。要因は複数考えられるが、何よりも生徒たちは「声をあげれば自分でも現状を打破できる。社会は自分の手で変えられる」という実感を得られていないのだろうと推測した。

そこで今度は、生徒たちの声を自治体のトップである山本知事に直接届けて、意見交換する場を設けたいと、2022年11月20日、「高校生による山本知事への提言会」を実施した。

県内の高校に募集をかけ、応募者約40名から選抜された6名が参加。県からは山本知事のほか、提言内容に関係する課の県庁職員も同席していただき、生徒たちの提言に対してご意見をいただいた。


生徒たちからは、生活している中で実際に感じている、リアルな地域課題があがった。その一例を紹介する。


太田高校2年の岩月太郎さんは、自身がサイクリストである経験から県内の車道に自転車事故の危険性があることを指摘した。実際に、中高生の自転車事故が日本一多いのは群馬県という。環境問題へのアプローチ、観光戦略にもつながる可能性を言及しながら、岩月さんは自転車専用道路の整備を提案。特に伊香保温泉はサイクリストにとって絶好の目的地だが、車道の狭さや自動車の交通量の多さがネックになっていることを例に挙げ、まずは渋川駅から伊香保温泉への経路で整備を進めてはどうかと提案した。

岩月さんの鋭い視点に、山本知事も「素晴らしい!」と感嘆の声をあげる。群馬県や渋川市での政策実現に向け、是非会議にも参加してほしいと岩月さんにその場でオファーした。また提言会のおわりには、岩月さんの提案を耳にした渋川市の高木市長から山本知事に電話が。口約束ではなく、その場で岩月さんの会議への参加が決まるという驚きの場面が見られた。


前橋女子高校2年の田口郁子さんは、県外の大学に進学したとしても、大学卒業後は県内企業に就職したいと考えている。しかし、高校生にはなかなか県内企業の情報や魅力が届かないことに課題を感じ、将来のUターンを促すためにも、県内で働く人々と気軽に交流できる仕組みをつくりたいと主張。具体的には、群馬県庁内にある官民共生型のコワーキングスペースを活用し、企業人と高校生が気軽に触れ合える場づくりを提案した。

大人たちが現在行なっている取り組みについて話すと、田口さんが高校生視点でその問題点を指摘する場面もあり、その視点に知事も「高校生の金銭事情や心理を踏まえて考えていきたい」と話した。


前橋東高校2年の石川歩乃圭さんは、認知症の曽祖母が一人暮らしをしている経験から、認知症の人やその家族が安心して暮らすためには、認知症のことを多くの地域住民が理解する必要があると考えた。しかし、若い世代にとっては特に、認知症のことはまだ他人事。そこで中高生が認知症について学ぶ場として中高生向けの「認知症サポーターキャラバン」を実施したり、普段から地域の高齢者と交流する場を設けたりすることを提案。高齢化が進む群馬県で、若い世代もこれからは身近に認知症患者がいる可能性が非常に高くなることを指摘して、子どもの頃から認知症を学び、サポートできるようになることで地域活性にもつながるのではと主張した。

山本知事は、石川さんの提案の具体性や、資料の完成度などを絶賛。「県としてもそのような事業を大々的に打ち出したいと考えていたので知恵を貸してほしい」と語った。


提言会だけで終わらず、その後の取り組みが始まっている。岩月さんは渋川市と群馬県の関係課との意見交換が実現し、「行政と一緒にやれるのがベストだが、すべてを一緒にできるというわけではない。今の自分にできることは何か」と考えるようになったという。そして、サイクルラックやディスペンサーを街に設置するため、資金集めとしての自主サイクルイベントを計画中だ。

若い世代に将来のUターンを促す仕組みを提案した田口さんは、提言会で課題に感じたことをふまえて、既に地域と学生とがつながっている無料塾の講師ボランティアを始めた。

中高生が認知症について学ぶ場について提案した石川さんは、家庭クラブ委員会で、地域に住んでいる認知症の方々に対する接し方について話し合い、何かできないか模索中だという。

直接、知事や県庁職員の方と意見交換した高校生たちは、プレゼンするだけに留めることなく実際の行動を起こし始めた。これも自分たちの声が行政に届き、行動を起こせば自分たちの手で地域を変えられる感覚を得られたからだと感じている。





若者が主役となり、自ら動き出す場をつくる


こうして行なってきた2022年度の活動を、本年度も引き続きブラッシュアップしている。4月6日には、先の「高校生による山本知事への提言会」のその後の進捗を知事・高校生・各関係課で共有し、さらなる意見交換をする場「知事と高校生の放課後トーク」を開催。高校生が行政に意見表明する際に、どうすれば進めやすいか、声をあげやすい仕組みについて双方の視点から意見を出し合った。

さらには生徒たちが学校生活で困っていることについて知事に伝え、話し合う場面も。「行政主催のイベントに文化系のものが少ない」「学校の自習室が早くしまるから、自習室の人件費をつけてほしい」「部活が忙しすぎてボランティアに参加できないから、平日ボランティア休暇がほしい」などの声があがった。高校生が日常的に困っていることが、少しでも政策に反映されたらと思う。

知事からは「笑下村塾が入ったからこそ、高校生の声を聞くことが可能になった。主権者教育のプログラムを行なったことで、投票率が大幅に上がり成果も出た。若者が政治に参加することは重要だから、これからも一緒にやっていきましょう」といったお言葉もいただいた。





一連の取り組みを通じて、高校生の「自分には社会を、地域を変える力がある」という意識を育成することで、生徒たち自ら動き出し、選挙での投票、意見表明などの行動につながっていく様子がありありと見られた。行政側がしっかりと高校生の声に耳を傾けて、実際に何かが変わるという体験が、自信を生み、社会参画する高校生が増える。その好サイクルは少子高齢化が進む日本で、確実に地域活性化にもつながっていく。

2023年度も群馬県とは「笑える!政治教育ショー」や提言会、若者たちが主役となり議論できる場をつくるなどの取り組みを行なっていく。そしてこの動きを全国に広げて、若者が主役となり自ら動き出すことができる機会をつくっていきたいと思う。


日本で唯一の主権者教育を行う民間団体として、行政とも連携しながら日本の主権者教育をアップデートしていきたい。


笑える政治教育ショーin群馬 プロジェクトページ



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