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  • 執筆者の写真笑下村塾

水原一平容疑者が勤勉だったのは「ギャンブル依存症あるある」。当事者が語るその「本当の怖さ」

※講談社FRaUから転載(2024年5月24日配信)

大谷翔平選手の元通訳・水原一平容疑者の違法賭博問題で注目されている「ギャンブル依存症」。水原氏自身、「自分はギャンブル依存症」と告白していますが、なぜ抜け出すことができなかったのか。

かつて競艇やカジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫もギャンブル依存症という三代にわたって当事者家族という立場も経験している田中紀子さん。現在は病気についての啓発活動や当事者・家族への支援活動を行う田中さんに、依存症の実態と対策について、YouTubeたかまつななチャンネルで聞いた。(取材:たかまつなな/笑下村塾)


田中紀子さん 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表。講演やイベントを通じて依存症という病気についての啓発活動や予防教育、依存症当事者やその家族に対する支援活動を行っている。著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)


<動画はこちらから>





人口の1割以上がギャンブル依存症の問題に苦しんでいる

ーーそもそも、ギャンブル依存症は病気なんですか? 


田中:ギャンブルが最優先になって、それにのめり込んで自分ではコントロールできなくなってしまう精神疾患で、WHOでもアメリカの精神医学会でも病気だと認定されています。でも、自覚しにくい病気なんですよ。ギャンブルをやる人なら誰でもなる可能性があって、日本ではそのリスクが3%ぐらいというデータが出ています(※)。


※厚生労働省は2017年、20~74歳の約320万人(3.6%)が生涯でパチンコや競馬などのギャンブル依存症が疑われる状態になったことがあるとする調査結果を発表。


ーー3%って高いですよね。100人いたら3人なるということですか。


田中:成人のうち、320万人ぐらいが生涯のうちに罹患しているんじゃないかという推計も出ています。相当な数ですよね。それで巻き込まれる家族を含めると、1000万人を超えます。すると、人口の1割以上がこの問題で苦しんでいることになるんですよね。



四六時中やっていないと気が済まない


ーー田中さん自身も競艇などのギャンブル依存症だったんですね。


田中:そもそも父がギャンブル依存症で、会社のお金を横領したんです。それでクビになって、私が3歳か4歳のころに両親が離婚して。母が一人娘の私を連れて実家に戻ったんですけど、おじいちゃんもギャンブル依存症だったんです。99歳で亡くなる2週間前までパチンコをやっていたんですよ。


ーー田中さんは旦那さんとの出会いがきっかけで競艇にはまったそうですね。


田中:旦那と競艇に遊びに行くのがなんとも言えず刺激的で楽しかった。当時の生活は、昼間に仕事に行って夜もバイトをしてもお金が回らず、しっちゃかめっちゃかでした。それでいて土日は、「旅打ち」と称して、大きいレースをやっている地方へ新幹線に乗って行ったり。あとは仕事が終わった夜中の12時ごろ、仲間と集まって朝までポーカーをやってたりしていましたね。


ーーいろいろな種類のギャンブルをやっていたんですね。


田中:一瞬の間も空けず、ずっとギャンブルをやっていたいという感じになっちゃうんですよ。シラフになる時間が怖いし、ギャンブルがない時間は死ぬほど退屈に思うんですね。なので四六時中やっていないと気が済まない。


ーー冒頭でもおっしゃっていましたが、ギャンブル依存症になると自分でコントロールできないんですね。


田中:できないですね。私もギャンブル依存症の真っ最中のときは、子どもの幼稚園の月謝6000円を滞納しながら、ギャンブルに1日で200万とか賭けていたんですよ。頭がおかしくなっていたと思います。



ギャンブル依存症の人は実は真面目に仕事している


ーー違法賭博問題で世間を賑わせている水原一平氏は、通訳としての評価も高く、仕事で成功しているように見えますが、なぜギャンブル依存症に陥ったと思いますか?


田中:報道によると、ご家族もギャンブルをされるご家庭だったということで、小さいころからギャンブルに親しんでいたのかなと。私もそうだったんですけど、ギャンブルに元々興味があったり好きだったという環境的な要因があったのではないかと推測されますね。


ーー依存症に陥っていても、仕事は真面目にしていることもあるんですね。


田中:大きな誤解や偏見として、ギャンブル依存症になる人たちは仕事もせず全てを投げ売っている状況の人だと思われるんですが、仕事をしてお金を稼いでいなかったらギャンブルをやるお金がないじゃないですか。借金をどんどんして、その借金をグルグル回せるような状況にないと、ギャンブル依存は続けられないので。だからむしろがむしゃらに働いている場合が多いですね。私の場合もダブルワーク、時にトリプルワークで借金をなんとか回していた。借金が返せなくなるのが怖いんじゃなくて、借金ができなくなるのが怖いという状況で。借金は回せていれば自分の金も同じだ、ぐらいに思っちゃうんですよ。


ーー水原氏は違法賭博で借金を抱え、少なくとも約6億8000万円を大谷選手の口座からブックメーカー(賭け屋)に不正に送金したと報じられています。なぜそこまで借金が膨れ上がったと思いますか?


田中:隣に大谷さんという大金持ちがいたことで金銭感覚が狂ってしまったというのもあるかもしれませんが、FBIの調査の対象になっていた違法ブックメーカーに誘われてはめられた部分もあるのではないかと。もちろん、これは憶測に過ぎませんが。。でも、借金が巨額になるのは特別なことではありません。「負け追い」って言うんですけど、負けたお金を取り戻そうとして、どんどん掛け金を上げて一発逆転を狙うのは、ギャンブラーの心理としてはあるあるで。普通のサラリーマンでも億単位の借金をするし、そういう相談は私たちのところにもよく来ます。本当に残酷な病気ですよ。


ネット時代の闇金が未成年を追い詰める


ーースポーツ賭博というのは、ほかのギャンブルと比べて何か特別な傾向はあるのでしょうか?


田中:若い人たちがはまりやすいギャンブルだと言えると思います。驚くことに高校生からも相談が来るんですよ。この間も、親御さんの預金通帳の500万が気づいたら空になっていたという相談があり、ご本人は学校でも流行っていますと言っていました。そもそも年齢関係なく違法ですし、未成年者はオンラインカジノ側でも登録や出金もできないことになっているのですが、悪い大人たちがいろいろなところで集客をして、自分たちのアカウントを若い子に売っているんですよ。それで高校生などがはまってしまっているんです。


ーー若年化するとどんなリスクがありますか?


田中:今のギャンブル依存症の問題って、私たちの時代と全く違うんですよ。例えば、闇金にお金を借りるというところまで追い詰められることはよくあるんですけど、昔は新宿とか神田とかの雑居ビルの中に闇金がワーって入っていて、上から下まで行って借りるみたいな状況でした。そうやってリアルに人を相手にしていたときは、警察や弁護士が間に入れば闇金のほうも引いてくれたんですよ。それまで十分儲けたということで。


でも今は、ネットだけで完結するので、相手の得体が知れないんですね。なので闇金の人たちも引かない。家族にすごくしつこく電話をかけるのはもちろんのこと、家族が勤めている会社、またその周辺の会社にも電話するんですよ。あとは隣近所とかね。そんなことが続いたら、お金を借りた若者は精神的に参ってしまう。連絡を絶ったりすると、本人の個人情報をネット上に晒すんですよ。こいつは寸借詐欺だとか、借りパクで逃げたやつだとかって。そうなるともうその若者は家を借りることも就職することも難しくなる。ネット上にデジタルタトゥーが残ってしまうので。


ーー社会生活を送ることが難しくなりますね。


田中:若いうちにギャンブル依存症で潰れてしまうと、学校を中退してしまったり、社会的な経験を何も積まないまま、社会的スキルがないまま、社会に放り出されてしまう。やっとの思いでギャンブル依存症から回復したとしても、就ける仕事が限られてしまうんです。また、年下の子たちが出世しているのに、自分は歳だけは食っているけど何もできないみたいな気持ちになる。スキルも実績もないから安月給になりがちで、もう嫌だと、またギャンブルに戻ってしまう。社会復帰が非常に難しいんです。


ギャンブル依存症から抜け出すには?防ぐには?


ーーギャンブル依存症から抜け出す方法はありますか?


田中:ギャンブル依存症にならないためには、ギャンブルをやらないことが第一。ほどほどに楽しもうと思っていても、いつの間にかそれができなくなっている場合があるんです。本人が気付いてやめるのはすごく難しいので、依存症の人からお金を無心されたときは、、周囲の人も絶対にお金を貸さないことが大事です。その上で、私たちみたいな団体や各地の精神保健福祉センターなどに相談に行くように伝えるのがいいと思います。それが早期発見、早期治療のコツだと思います。


ーーこういう人が依存症になりやすいという傾向はあるんですか?


田中:私は何千人も仲間を見てきましたけど、性格に共通点がないんです。本当にいろいろな人がいる。アメリカの精神医学会などは、一番多いのは遺伝だと言っていますね。私も父がギャンブル依存症ですし、母方のおじいちゃんがギャンブル依存症で、たぶん遺伝なんだろうと思います。あとは周りにギャンブルをやる人がたくさんいるのも、依存症になりやすい環境要因ですよね。

ーー田中さん自身はどうして回復できたんですか?


田中:私は夫と一緒に自助グループに繋がったんですね。医者に行ったんですけど、2人とも別に医者に来なくてもいいよ、と。その代わり自助グループに行けと言われたんです。自助グループの活動をしながら回復していくのがいいと勧められて。それで当事者と家族が行く自助グループに繋がって、そこからやめ続けることができたという感じです。


ーーギャンブル依存症に陥る人を減らすために、いま、社会として必要なことは何ですか?


田中:今一番足りていないのは、ギャンブルをやると、そのうち数%の人たちはギャンブル依存症という病気になるんだよという啓発です。もう少し啓発していかないとだめだなということと、あとは規制ですよね。違法な賭博が蔓延しているのに、対策が打たれていない。オンラインカジノをYouTuberやアフィリエイターが宣伝していたりするんです。この状況をきちんと取り締まることが大事だと思っています。


ーー最後に、ギャンブル依存症とは縁がないと感じている人たちにメッセージがあればお願いします。


田中:ギャンブル依存症というのは、はたから見るとなんでそんなにのめり込んだんだとか、なんでそんなことで台無しにしてしまうんだと不思議に思われるかもしれないですけど、本人はめちゃくちゃ苦しいんですね。本人もやめようと思っているし、本人も問題は分かっているけれど、病気だからなかなか抜け出すことができないんですね。ただ、周りの人たちがお金を貸すことをやめたり、こういう支援機関があるということを案内してくれれば、正しい治療のレールに乗って回復することができる病気でもあります。なので、責めたり説教したりということをやめて、回復のレールに乗せてあげてほしいなと思いますね。



「たかまつななチャンネルで動画が公開されています」







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