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ネット殺害予告を受けた「はるかぜちゃん」が、100万円かけて訴訟した理由


前回の記事では、いじめ問題を発信する背景に「ファンが自殺配信をした」ことや、いじめを無くすために「単位制にする」「演劇を行う」「いじめ保険をつくる」などの具体的提案を語ってくれた「はるかぜちゃん」こと、春名風花さん。  今回は、学校などのリアルでのいじめ問題だけでなく、SNSを9歳で始めた彼女だからこそ語れる“SNSいじめ”についても話を伺いました。  ネット殺害予告を受けた彼女が、100万円というお金をわざわざかけて、訴訟を起こして闘った理由とは?



「もし自分の子がいじめ加害者だったら」の視点も


――いじめられた子の親としては何ができるかなぁ。 親はとにかく面倒くさい親になるしかないと思っています。「私は学校と戦います」みたいな気概を見せる。そうすると学校側も何かしらの対策はすると思いますし、子供にとっても、自分の親は「私の子は私が守る」って言ってくれる親なんだ、って思えるでしょう。

――確かに、先生に電話して、いじめている子と握手させられてもねぇ。

もちろん転校のほうがいいときもあると思うから、お金は貯めておいてほしいですね。 あと親って、「自分の子がいじめられたらどうしよう」って考えてると思うんですけど、「自分の子がいじめっ子だったら」と考えることも大事だと思っていてます。 この前、『許された子どもたち』っていう、いじめ加害者を追った映画を観てきたんですけど、本当に普通の家庭でもいじめっ子は生まれるから。そういったときに「あなたはしてないんでしょ?」って言っちゃうと、「してないよ」って答えちゃうと思うんです。悪いことをした自分は親に認めてもらえないんだって思うから。だから、自分の子が「悪いことをすれば、それを認めて、それでも愛し通す」という気持ちでいてほしいです。

――難しいね。自分の子どもがいじめっ子だったら。「いじめてなんかないよね? うんって言って。そんなの冤罪よ」って言って、先生にまた文句の電話したり。なんて言えばいいのかなぁ。

それは聞くしかないのかな。「いじめをしたの?」「してない」、「じゃあ、傷付けたかもしれないっていうことはあった?」みたいな、ちょっとレベルを下げて聞いてみる。「いじめられたと誤解されてしまうような出来事はあったんじゃない?」みたいなことから聞いてみるといいかもしれません。

――あ、それなら確かに話しやすい。同じことでもラベリングを変えていくってことだね。同じ行為でもだめだって決めつけるんじゃなくて。




“不登校でいい”――簡単には言い切れない




――少しいじめとは話がずれてしまうけれど、私が気になってたのが、「先生に従う同級生がロボットに見える」、「学校には行かなくていい」などと豪語する不登校YouTuberの小学生が注目されて、いちはやく茂木健一郎さんと対談していたりして、なんだか大人が使われてるという感じがしていて……。はるかぜちゃんもそれに対して意見してたのはどういう想いからだったのか知りたい(注釈)。

(編集部注:以下、twitter抜粋します) 学校に行かなくても、学ぶことは無限にできるし、不登校を選択しても良いけど、この態度を手放しで褒めるのは大人として良くないと思います。自分が不登校を選択したからと言って、他の子どもたちを「ロボットみたい」と一括りにしても良いのでしょうか。多様性とはそういうことじゃないはずです

僕が、やっぱり学校でしか学べなかったこともたくさんあるなって後悔している人間なんです。子役をしていて、学校の子たちの話してる話題についていけなかったから、その劣等感を隠すためには、「僕のほうが社会を知っているんだー」って思っていた。大人の世界はやっぱりすごすぎたし。

――あ、『しくじり先生』でいろいろ言ってたね。校長先生の話にどう思ってたんだっけ?

これ編集したら4秒だなって。

――(笑)、それから、この学校で一番稼いでるのは自分だって言ってたね。

まあ、そんなことないんですけどね。あれは、かなりバラエティ用です。でも、当時はそんなふうに思っていた方が楽だったから。学校での自分の立ち位置が分からなかったし、勉強はついていけなくなる一方。本当に後悔しました。 過去の自分に、“同年代の子たちが子どもっぽくみえてツマラナイと思っているかもしれないけれど、その子たちだって、将来すごい人になっているかもしれないよ”って言いたい。 もちろん、いじめしてくる人たちは、今のあなたにとって有害でしかないと思うから、「こいつら私の人生にいらないわ」って切り捨ててください。

――本当にそう思います。改めて、今、いじめられている子にメッセージをください。

本当に周りの人は優しい言葉をたくさんかけてくれると思うけれども、信用しすぎると、将来損することもいっぱいあります。だからあなたの人生は、めちゃくちゃ考えなきゃいけないけれども、でも、そんな思いをさせた周りの人間が悪いので、いじめてきた人たちのほうが悪いので、いじめられたあなたのほうが学校に通う権利があるので、自分に対する誇りみたいな、自尊心を絶対になくさないでほしいと思います。 朝起きて偉いとか、自分に言い続けてほしい。だって偉いもの。いじめられて生きていたくないっていう気持ちはすごく分かります。僕も殺害予告いっぱいされたから。でも、僕はあなたに生きていてほしいと思うし、あなたが悪いっていうことは絶対にないから、自信を持って生きていてほしいです。

―――すごく素敵で力強いメッセージありがとう。


中傷twitter投稿者への訴訟は大変。それでもやった理由

――話は変わりますが、SNSの話もしたいです。まず、裁判の話(注釈)。大変でしょう。noteを見たけれど、嫌がらせ受けて、弁護士費用に100万ぐらいかかるんだね。誹謗中傷を書き込まれても、100万かかるんだったら普通、我慢しちゃうもんね。

そもそも被害を受けた側がお金を払わないと罪を認めさせることができないっていうのはどうなんだろうって思います。それに、侮辱罪や名誉棄損罪って時効がくるのがすごく早い。バレたら、相手は投稿消しちゃうし。ネットに詳しい弁護士さんも少ないし。インターネットの事件を事件化するのは難しいです。

注釈 ツイッターの注目度が高まるにつれ、誹謗中傷、嫌がらせ書き込む “アンチ”も増加。 2016年には出演する舞台への爆破予告が投稿され、劇場は厳重警備、入口での手荷物検査をせざるを得ない事態に。 さらに「彼女の両親自体が失敗作」などの身内や知人を侮辱する投稿が相次ぐようになり、 誹謗中傷犯を特定するために、プロバイダーに対し、住所や氏名を開示するよう依頼する「発信者情報開示請求訴訟」を起こす。 2019年に投稿者が特定。2020年春名さんの母親が民事訴訟を起こすと同時に、同時に神奈川県警に告訴状も提出。実は当初、神奈川県警が受理しなかった事態もニュースに。

――それなのに、なんでそこまでしてやろうと思ったの?

爆破予告は本当にいろんな人に迷惑をかけたので。それに、やっぱりこれは犯罪なんです。 ネットだとゲーム感覚で、相手の個人情報を突き止めたりするのが楽しくなっちゃうんだと思うんですけど、被害者がいるわけです。それに、書かれた側も、「こんなことネットなら当たり前だから」と思って飲み込んでしまうことも多い。 だけど僕みたいな立場の人が頑張ることによって、一般の方々も訴えやすくなるのかなぁって。悪いことされたら、相手に罪を償ってくださいっていうのは、当たり前のことだと思うんです。

――いじめもそうだけど、パワハラもセクハラも訴えたほうが「弁護士入れてそこまでやるの?」とバッシングされるのおかしいよね。 ただ、正直、twitterで発信するのを辞めようと思ったことはないの?

僕の意見が好きでファンでいてくださっている方もいるし、突然何も言わなくなったらおかしいし、そもそも嫌なことされて嫌だっていうことがイメージダウンすることだと思われていることがおかしいから。

――今、9歳に戻れたらtwitterやるの止めない?

微妙ですね。う~ん、小学生の頃に戻ったら、もうちょっとうまい言い方ができるかもって、自分に期待しちゃう。あのときはそれなりにキレてたので、喧嘩しないっていう手段があったかなと思うし。もうちょっとマイルドに運営していた気がしますね。

――いや、あの頃も、かなり大人だったと思うけど。結局、今の社会って「言わないほうが賢い」って文化がすごいあるでしょう。特に芸能人は。この「言わないほうが得」っていう社会を変えるために、どういうことが必要だと思う?

まず意見を言うことはすごく大切だし、意見を言わないと届かない、誰にも。だから、自分が生きやすい社会を作るために発言し続けることはすごく大切だと思います。 ただし、個人的な感情に任せて発言してしまうと、受け入れてもらないことが多いし、誰かを傷付ける発言はしないことは守っていきたいです。 普通、目の前の人に「あんたの考え間違ってんだよ」って言わないじゃないですか。ネット上でも生身の人間と生身の人間として向き合うっていう努力ですね。 それに、自分と違う考えの人って面白いじゃないですか。できることならちょっと理解したいなって気持ちもあることはあるんですよ。

――やっぱりはるかぜちゃん、すごいなぁ。

でも、twitterの文章だと、春名風花のイメージが独り歩きしてるとも思います。今、YouTubeもやってて「春キャベツ王国」ってチャンネル名なんですけど、ほんと、春名風花はへっぽこなんですよー。弟なんて、「姉氏は馬鹿なんです」みたいなイジリをするんです。

――前に会った時に、弟と和気あいあい、小競り合いとかしてるから。なんか安心した。

実は文字の限界を感じることも多くて、ニュアンスが伝わりにくいし、文字数の縛りもあるし。だから、twitterから、YouTubeに移行しようとして思っているんです。

――それもすごく楽しみ。はるかぜちゃんのYouTubeチャンネルもぜひご覧ください。今日は本当ありがとうございました。


編集後記

現在進行形である「訴訟」の話はなかなかのハードモード。それでも戦いを辞めず、発信を続ける彼女の源はなんだろう。売名行為なんてバッシングする人もいるけれど、いやいやそれじゃマイナスのほうが多すぎるよ、って思ってしまう。それは、“言葉を出せない人の代弁者になる”使命感かもしれないし、理不尽なことが通ってしまう社会への“怒り”かもしれない。twitterは拡散され、編集され、その過程で、本来の意味会いから離れていく。そんなことは百も承知で、考えて、考えて、言葉を尽くす、はるかぜちゃん。ほんと、スゴイです。彼女と友だちなのが嬉しいし、これからもずっと友だちでいたいと心から思います。


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