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学校内民主主義を実践しよう 「こども基本法」施行、どうすべきか?

執筆者の写真: 笑下村塾笑下村塾

※共同通信配信の有料メディア向けコラムから転載(2023年4月3日配信)


 「こども基本法」が4月から施行された。子ども政策を決める上では、子どもの意見を聞くことが各自治体に義務づけられた。これは非常に大きなことであり「社会を変える」きっかけになる可能性がある。

 こども基本法施行を受け、私たちは一体どうするべきなのか。2回にわたって書いていきたい。


 「校則を変えようとしたんです。そしたら、校則改定をする際の規定がないのに、校長先生が突如条件を言ったんです。面倒だから、変えたくないのかなと思いました」「ブラック校則を変えようとしたら、内申点が下がるのではないかと不安で声をあげられません」「生徒会は、先生の意向をくみ取れる子がなっています」

 これは、高校生の子どもたちから実際に私が聞いた話だ。私は、社会にどう参画するか教える「主権者教育」を専門にしており、全国の学校に出張授業に行き、主権者教育、SDGs(国連の持続可能な開発目標)、平和学習などについて、お笑いを通して伝えている。今まで7万人以上の子どもたちに出張授業を行ってきた。その際、できる限り子どもたちの率直な声を聞くようにしている。


 「校則を変えられない」「社会を変えられない」という無力感を持つのは一部の子たちだけではない。日本の若者は、社会を変えられないと思っている。実際、日本財団が行った日本や米国など6カ国の「18歳意識調査」では、「自分の行動で、国や社会を変えられると思う」と答えた日本の17歳~19歳の割合は、わずか26・9%で、他国に比べてダントツで低い数字となっている。


校長と生徒代表が対等

 そんな中で、この4月にこども基本法が施行され、子ども政策を決める上では、子どもの意見を聞くことが各自治体に義務づけられた。子どもの意見を聞き、子どもの声を政治に反映することになったのだ。うまく進めれば、日本の子どもたちの無力感を払拭することにもつながるだろう。

 といっても、いきなり子どもたちが意見をするのは難しいし、大人もどうやって聞けばいいのか難しいだろう。

 海外では、学校の中で、それを練習していることが多い。「学校内民主主義」と呼ばれるもので、学校の中で子どもたちが話し合い、自分たちで意思決定をしていく。

 例えば、フランスでは「学校管理評議会」が設置されている。学校管理評議会は、生徒代表に加え、校長のほか、教職員、市町村の代表者、保護者代表者ら30人で構成され、学校の運営方針、校則の改廃、予算などの決定権がある。つまり、生徒の代表が校長と対等に議論し、そこで最終決定を下せる。「決定権」と「お金」が委ねられている。その上で、自分たちで決め、自分たちで変えていく。

 日本では、校長とPTAと生徒会で意思決定の序列をつけたら、生徒会を一番下に置く人が多いのではないか。フランスでは校長と生徒代表が対等な場で議論するのである。それでも「最初は形骸化し、浸透するのに20年かかったのではないか」と、フランスの若者の政治参加を専門にする武庫川女子大学の大津尚志准教授は指摘する。

 日本でも、学校の中で子どもの声を聞き、実際の運営に生かす仕組みづくりが必要だろう。他のヨーロッパの国でも、取材で話を聞くと、給食や制服、学校の教材、コロナの対応、トイレの使い方などさまざまなことを子どもたちが決めたり、学校側と交渉したりするなど、学校内民主主義が根付いていた。


 日本にも、地域住民や保護者が学校運営に参加できる「学校運営協議会(コミュニティ・スクール)」という仕組みがあり、公立学校の4割ほどが設置している。私が取材した岡山県の鴨方東小学校では、校長、保護者、地域代表、大学教授らが参加する学校運営協議会で、教員の働き方改革に向けた行事の見直しなどが話し合われていた。先進的な取り組みである。しかし、そこに子どもの姿はなかった。



「校長を辞めさせたい」

 一方で、早くから子ども政策に力を入れてきた兵庫県川西市の越田謙治郎市長と主権者教育について意見交換したところ、教育委員会では、学校運営協議会に生徒が参加するよう検討しているという。

 先日、ある高校に主権者教育の出張授業に行った際に、社会を変えたいことを子どもたちに聞く発表の中で、「校長先生を辞めさせたい」と言った子がいた。理由を聞くと、「修学旅行をコロナで中止したから」だと言う。

 修学旅行をどうするのか、このようなことも、生徒自身で決める、生徒と学校側で対話して決めることができれば、民主主義の実践になると思う。自分達で決めることをしないと、他責になってしまい、いつまでも、社会や誰かのせいにしてしまう。そうではなく、対話し、自分達で決め、責任感を持つことが大切だろう。

 「校則を変える」。そんな小さな成功体験でもいい。その体験が、社会を変えられるかもしれないという自信になり、一歩踏み出す行動にもつながる。それが社会を変えることになる。


 ☆たかまつなな 「笑下村塾」代表、時事YouTuber。1993年、神奈川県横浜市生まれ。大学時代に「お嬢様芸人」としてデビュー。2016年に若者と政治をつなげる会社「笑下村塾」を設立、出張授業「笑える!政治教育ショー」「笑って学ぶSDGs」を全国の学校や企業、自治体に届ける。著書に『政治の絵本』(弘文堂)『お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs』(くもん出版)がある。


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