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  • 執筆者の写真笑下村塾

コロナで300万円以上の赤字!?それでもお笑いのためにチャレンジを続ける、K-PRO代表・児島気奈の想い



お笑いライブ・イベント制作会社K-PROの代表を務め、年間1000本近いお笑いライブを主宰している児島気奈さん。お笑いと真摯に向き合うその姿勢に、「賞レースに出たければ児島さんにお願いしよう」と言われるほど、多くの芸人から慕われています。そんな児島さんですが、新型コロナウィルスが感染拡大したことに伴い、主催するお笑いライブは軒並み中止となるなど深刻状況に。児島さんに新型コロナウィルスの影響や芸人さんからの救いの手、今後の対策などを笑下村塾のたかまつなながインタビューしました。



プロフィール 児島気奈 お笑いライブ・イベント制作K-PRO代表 高校時代から浅草を始め都内各所でお笑い舞台の下積みを経験し、 2004年にK-PROを旗上げ。現在では都内で活動する若手芸人ほぼ全てが出演するライブを月に40~50本開催、「THE MANZAI」「キングオブコント」などの決勝進出者のほとんどはK-PROライブ 出演経験ありということで業界内外から注目される。また自身もトークライブや養成所講師などを行い、テレビ・ラジオに出演したりと精力的に活動中。

ライブ中止に伴う被害額は3~400万円





ーー今、コロナウイルスの影響ですごく大変な状況ですよね。

児島:そうですね。予定していたライブがほとんど開催できず、いつ再開するかも分からない状況です。

ーー何本ぐらい中止になったんですか?

児島:今発表してるものと、制作を協力しているものなどを合わせると50本ぐらい中止になりました。春の時期は新生活のお客さんや春休みのお客さんが多いので、若手ライブに力を入れてチケットを販売していたので、これだけのライブが中止になったことは非常に大きいですね。

ーー被害額はどのぐらいですか?

児島:会場費や人件費などのマイナスに加えて、売上の見込みも合わせると恐らく3~400万円ぐらいです。

ーーK-PROの社員さんは何人くらいいるんですか?

児島:私を入れて4人で回してます。ちゃんと給料は払っていますけど、年度末をまたぐこのタイミングでこういうことになったから、「ちょっと3月末が怖いな」という気持ちがあります。

ーー芸人さんのギャラはお支払いしているのですか?

児島:事務所さんと「キャンセル料に関しては~」としっかり契約を結ぶライブではない場合、「特にキャンセル料はなくて大丈夫です」「お互い様なので」と言っていただりもしています。ただ、出演にかかった交通費や宿泊費など、どうしても戻らないものもあるので、そこはなんとかマイナスを工面する感じですね。

ーー大変ですね。ですが、ライブを決行しようと思えばできるわけじゃないですか。演出家の野田秀樹さんも「今やるべき」「演劇を潰してはならない」みたいなことをおっしゃっています。なぜ中止という判断をしたんですか?

児島:お笑いライブを開催するには、環境が整っていないので危険だと判断しました。換気ができて設備が良ければ大丈夫だと思いますが、やっぱりライブハウスって割と密閉した空間なんですよね。政府が出している「こういう場所は避けてください」っていうのに当てはまるので、「濃厚接触になるから止めたほうが安全かな」と。 あと中止にするならするではっきり言ったほうが、お客さんもふんぎりがつくじゃないですか。曖昧にしているとお客さんも「どうしようどうしよう」って混乱すると思ったので、「止めるなら止める」とはっきり言おうと思いました。

ーーライブが50本近く中止になりましたが、今はどんな生活を送っているんですか?

児島:仕事はしていて、今は4~6月のライブの打ち合わせをしている段階です。ただ、劇場さんとかとの打ち合わせが難しい状況なので、なんとか連絡して進めている感じです。

ーー休むことは考えていないんですか?

児島:「お客さんの前に立ちたいし、早く前向きに進めるように何かしましょう」っていう声を芸人さんや事務所さんからいただいて、それで「自分だからこそできることをやっていかなきゃいけない」という気持ちなんですよね。


支援してくれる人に「皆さん、ありがとうございます」





ーー磁石の永沢さんが自身のnoteで、「K-PROさんが困ってます。寄付してください」と呼びかけをされていましたね。

児島:永沢さんは本当に早い時期に「K-PROの支援金を募る窓口を勝手にやっていいですか?」と連絡をくれました。それに「ぜひお言葉に甘えさせてもらいます」と返答し、現在、200万円ぐらい集まったようで、本当にありがたいです。 今回のことで、助けてほしい時は困っているアピールをするのではなく、「人の手を借りることも大事だな」ということの大切さを痛感しました。まだ誰から寄付されたのかはあんまり確認できていませんが、「皆さん、ありがとうございます」という気持ちでいっぱいです。このお金は、自分たちのためだけではなく、お笑い界が前向きになるために使いたいと思っています。

ーーほかにもいただいて嬉しかったメッセージはありますか?

児島:インスタントジョンソンのスギ。さんから、ほぼ初めて連絡が来ました。インスタントジョンソンさんはライブに出てもらってないのですが、「いつも事務所の若手芸人がK-PROライブで本当にお世話になっている」と感謝をしてくれていたみたいで、「何かお役に立てることがあれば」と声かけいただきました。他にも数え切れないぐらいの芸人さんやお笑いに関わる皆さんから応援してもらっているので、感謝しかありません。

ーーちなみに寄付金の使い道は考えているのですか?

児島:今回、“配信”という言葉が各業界で聞かれましたよね。以前までは「劇場の面白さを私たちは伝えなきゃいけない」「画面越しだとこの面白さは伝わらない」と意地になっていた部分がありましたが、ちょっと頭柔らかくして、「芸人さんが困らないように、こういう時はこうしよう」と緊急事態の備えを整えておくことに使いたいと思ってます。

ーー今回の事態にお客さんはどんな反応をしていましたか?

児島:Twitterとかで調べた時、「お笑いライブを早く観に行きたい」という声がすごく多かったのは嬉しかったです。ただ、「お笑いライブに行かなくても大したことなかったな」みたいな声も何件か見つけましたね。こういうタイミングでお客さんが離れていってしまうので、そういう人たちを少しでも減らせるように、「すぐに何かしらの手を打たなきゃダメだな」と思っています。



お客さんが足を運びたくなる魅力的なライブを





ーー児島さんはK-PROを旗揚げして16年経ちますけど、東日本大震災の時もライブがかなり中止になりましたよね。その時はどのように乗り越えたのですか?

児島:当時は原発や節電などの影響で、「どうしても開催を中止しなきゃいけない」という事態になって、今みたいに自粛という形ではなかったのですが、1~2週間ほどライブを中止しました。ただ、徐々に余震はあるけど東京の安全性が確保できるようになったんで、色々なチャリティライブを開催して、復活に至りました。

ーー現在出ている数百万円の赤字は、お笑いライブの利益で簡単に相殺できる金額ではないと思います。会場のキャパ数やチケット代を上げるなどの対策が必要になるかと思いますが、このピンチをどうやって乗り越えようとされていますか?

児島:お笑いライブって安さが売りなので、チケット代を高くするのは難しいです。「たくさん売って儲けをちょっとでも増やす」という運営をしていきたので、今後は大きい会場での公演を増やしていくなどとかで、赤字を取り戻していく予定です。

ーーライブで取り返すんですね。

児島:それしかやってきてないので。人を集めるのは大変ですので、「お客さんが足を運びたくなるぐらい魅力的なものを作らなきゃ」っていう自分自身の戦いになりますね。



最後に(編集後記)





 ご自身が大変な状況であるにもかかわらず、終始“芸人ファースト”を貫く児島さんの姿勢に感動しました。児島さんのような芸人のことを深く考えてくれる人と、お仕事ができることがどれほど幸せなことだったのかを、今回のインタビューを通して改めて気づくことができました。  お客さんが足を運びたくなるライブを作るために、裏方さんと芸人が一枚岩となって協力していきたいです。


後編へ続く

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