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「安さ求めますよね」ガーナに行って反省した「エシカル消費」の現実


SDGsブームにともなって、「エシカル商品」が売られているのを目にすることが増えてきました。筆者は、ガーナの児童労働の現場となっているカカオ農園に行きエシカル商品を作ることの難しさを目の当たりにしました。帰国してから考えたのは、どのように〝本物〟の商品を選べばいいのか、ということ。長年、携わってきた専門家の言葉から、長続きできる「エシカル消費」について考えます。(笑下村塾・相川美菜子)



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親も悪気があってやっていない

潮崎真惟子さんは、フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局長として、フェアトレードの基準を満たす商品の認定や、フェアトレードの商品を広める活動を手がけてきました。現在は、SDGsにまつわるコンサルティングもしています。 潮崎さんによると、エシカル消費の文脈でしばしば語られる「フェアトレード」とは、〝公正・適正な価格で取引をすること〟を指します。 「フェアトレード」が叫ばれる背景には、問題となっているビジネスの存在があります。その多くは、食品の原材料を生産している途上国で起きています。特に深刻なのが児童労働です。10人に1人の割合で、世界の子どもたちが児童労働に従事しているそうです。 筆者が以前に訪ねたガーナにも、児童労働によって成り立っている貧しいカカオ農園がありました。そこでは、国内外のNPOなどが長い歳月をかけて状況の改善に努めていました。 実は、児童労働をさせている親は、必ずしも悪気があってやっているわけではありません。自分自身も同じように育ってきたため〝子どもが働くのは当たり前〟であり、〝学校に行く理由がわからない〟のです。さらに、十分な教育の機会がなかったこともあり〝持続可能性〟や〝生産性〟を考えた商売まで考える余裕がないという現実があります。 現地で交流したNPOの担当者の話を聞きながら、その国の価値観や文化の中で、生産プロセスを変えていくのは、とてつもなく難しそうだと感じました。 人件費を抑えるために人身売買まで横行しています。そんな深刻な状況は日本に住む私たちと無関係ではありません。 「会社は商品を少しでも安く仕入れようとします。輸入会社も、メーカーも、皆さんがいつも行かれる小売店も、安さを求めますよね」と潮崎さんは問いかけます。

過酷な労働環境に加担

日本はフェアトレードへの関心が先進国のなかでも低いと言われています。 オーストラリアのNGOである「Walk Free Foundation」によると、児童労働や現代奴隷が生産に携わった商品輸入額で、日本は世界ランキング2位。一方で、フェアトレード商品の一人当たり購入額は、スイスが1年間で9623円だったのに対して、日本は94円にとどまります。 潮崎さんは「私たちは知らず知らず、安い製品を買い求め、過酷な労働環境を強いる生産プロセスに加担しているというわけなんです」と警鐘を鳴らします。


とはいえ、日本におけるフェアトレードやエシカル消費の市場自体は成長を続けていて、2020年は前年比13%増の131億円となっています(フェアトレード・ラベル・ジャパン調べ)。 教科書や大学入試の問題にも「フェアトレード」という言葉が出るようになり、若い世代を中心に知名度が高まっています。 SDGsという言葉の普及とともに、潮崎さんへの問い合わせも増えており、たとえばイオンは、2030年までにプライベートブランドである「トップバリュ」のコーヒーや、チョコレートに使用するカカオをフェアトレードなものへと転換すると宣言しています。






そこに「マーク」はあるか

エシカルをうたった商品が増えてくると、気になるのが、本物との見分け方です。「SDGsウォッシュ(実態以上にSDGsに取り組んでいるように見せること)」のような商品に惑わされずないためには、どうすればいいのか。潮崎さんがおすすめするのが、フェアトレードであることを保証する認証ラベルです。 潮崎さんは「フェアトレードマークがついているものは信頼できる商品だと言えます。なぜなら、マークをつけるために、三つの厳しい基準を満たす必要があるからです」と説明します。

フェアトレードマーク

一つ目が『環境を守って作る』という基準。フェアトレードというと取引価格のことだと思いがちですが、「大量の農薬を使わない」などの環境問題への配慮も求められます。 二つ目が「社会・人権に配慮して児童労働や差別等のない商品を作る」という基準。 三つ目が、「最低価格を保証し、さらに地域の発展のためのプレミアム(奨励金)を支払う」という基準です。万が一、市場価格が暴落した時も立場の弱い生産者にしわ寄せがいかないよう、最低限の価格を決めます。また、プレミアムの支払いにより、貧しい地域で学校を立てたり井戸を掘ったり、より品質のよい農作物をつくって将来の収入を向上させるための投資の資金を提供します。 この三つの基準を満たしている企業や生産者を認証していく仕組みがフェアトレードマークになります。 実際、フェアトレードマークは農家の貧困の改善に有効で、認証を得た農家の中には約5年間で所得が2倍近くになったという研究結果も出ているそうです。

期待に応えられない私たち

フェアトレードマークをつけた生産者は、その生産プロセスが審査されます。 独立した第三者機関が、生産から加工まで、サプライチェーン全体を通して監査します。審査基準を見直す場合は、途上国の生産者が入ります。運営への発言権を先進国側と途上国側が等分持つことで、不公平がなくなるようにしているそうです。 もちろん、フェアトレードマークにも課題はあります。 まだまだ認知度は低く、日本では「フェアトレード」という言葉の知名度も50%程度にとどまります。市場が拡大してきているとはいえ、どこのコンビニでもすぐに購入できるわけではありません。 そもそも、フェアトレードマークの商品も十分に流通していません。 ハードルには様々なものがあり、例えば企業の意識の低さやコストの問題、そして認証の難しさが挙げられます。 企業は数百ページにおよぶ資料を読み込む必要があり、申請のための初期費用も必要です。 潮崎さんは「基準を満たした生産をしても、企業がフェアトレード価格で買ってくれず、仕方なく安い価格で売っている農家も世界全体で4割くらいいます」と明かします。 また、販売の努力が追いつかず、売れ残りが発生したため認証をやめたという事業者もいるそうです。「特にコロナ禍で、アパレルやカフェが打撃を受けたので、厳しかったようです」と潮崎さん。 そこには、我々、消費者側が生産者の期待に応えられてない実態があります。安いものを買い求める消費者の存在が、企業への圧力となり、途上国の人たちの収入を低くさせている面があるのです。



カカオ農家の村


自分が楽しめるか?

まだまだ足りないエシカル消費。私たちにできることは何でしょうか? 大事なのは「自分が楽しめるかどうか」です。食べ物であれば味、モノであればデザインや機能性など、自分が本当に気に入ったものであれば、義務感もなく、継続して購入したくなります。 また、周りの人にプレゼントとして共有することで、エシカル消費の価値を伝えられます。 逆に〝意識高い系の押し付け〟になってしまうと長続きしませんし、他の人にシェアもしにくくなります。最悪の場合、ゴミになってしまうと本末転倒です。 たとえば、筆者は結婚式の引き出物をすべて認証つきの商品にして、その説明書も同封しました。 ・オーガニックコットンの靴下(Peepletree) ・せっけん(ドクターブロナー) ・チョコレート(カルディ) ・タオル(ホットマン)


挙式後、10人以上から使った感想や「リピートしたい」といううれしい報告が届きました。 「買い物は投票」です。一人ひとりが消費する商品の考え方や生産プロセスに意識的になり、フェアトレードな商品を自覚的に買うことで、企業および社会は動いていくはず。 まずはこのあと一息つくときのおやつやコーヒー選びから、世界をよくする方法を少しだけ考えてみませんか?

日本から持ってきたガーナチョコレートを手に持つガーナの子どもたち

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